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インスタレーションみたいなコインランドリーを夢想する。

United Arrowsとか、SHIPSとか、BEAMSとかそういうセレクトショップの界隈。というか、界隈というか、なんかそういうアリーナというか、世界。そこの住人であるトミタという銀髪の男と、ハンチング帽をかぶった小柄な老人が、下町の角打ちで吞んでいる。

トミタの髪は白髪なのか、銀色に染めているのかはわからないが、真っ白で、しかし顔立ちは老人と呼ぶにはまだ若く、といって、何歳とは特定できない不思議な風貌の男だ。黒縁の眼鏡をかけている。いっしょにいる小柄な男は、老人といっていいはずだが、こなれたハンチング帽と、たっぷりしたひげのせいで、これもまた、年齢の不詳な雰囲気だ。

もちろん、都会にいるからというよりも、彼らの生息している業界が、アパレルだからなのか、ともかく、年若いころから何かを絶えず注入してきたおかげで、老けて見えることのない爺さんたち、という生き物に異化しているわけだ。

ともあれ、そういう映える男たちが立って吞んでいるだけで、酒屋のコンクリートの三和土たたきにビールケースとMDFを渡しただけのテーブルでも、しゃれた一画に見えてくる。

で、その二人の男たちは何の話をしているのだろう?
「俺、こんどコインランドリーのデザイン頼まれてさ」
「へえ? 今、銭湯とかもシャレてるもんね」
「そう。でも、コインランドリーのおしゃれ化って、もうちょっと遅いからさ、どうしようかと思って」
「カフェっぽく、つうか、何だっけ、ブルックリン風みたいなやつだよね?」
「先方が想定してるんはね。けどもう、そんなの山のようにある」
「まだ詳しくは決まってないの?」
「そう。だからなんかピリッとしたやつを混ぜたいんだけど」
「うーん、なんかね、やっぱりさ、街ってゴミゴミしてるじゃん、基本。だからね、それが出来たおかげで、まわりまで小ざっぱり見えるみたいなのがいいと思うんだよ」
ハンチング帽のおやじがちょっと帽子を直しながら言った。
「そもそも、ね」
「お前さ、工務店の人が現場でさ、夕方帰る前にきれーに地面をいてるの、見たことある? あれ、いいもんだよ。ほうきき目がつくくらいにきれーに掃いてあるの。翌日はまた朝から鉋屑かんなくずとか板切れとかで散らかるわけだけど」
「いったんは、きれいにして帰る」
「そう。だから、そういう感じのコインランドリーってどう?」
「む?」
「掃き目のあるコインランドリー」
「土間? 三和土たたき? 石庭? 和モダン?」
「あとは自分で考えな」


僕はコインランドリーがすきだ。三和土もすきだ。角打ちで呑んでるジジイたちもすきだ。

それで、いろいろき混ぜて書いてみた。10分間のフリー・ライティングの一環で。


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