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毎日書く #02 THROUGH THE SENSES

Now Write!: Fiction Writing Exercises from Today's Best Writers and Teachers という創作術本があるんですよ。ここに紹介してあるエクササイズにのっとって、(できれば)毎日ひとつ、書く練習をしたいと思います。

今日のエクササイズは、Robert Olen Butler の THROUGH THE SENSES です。感覚を通して書く、という練習ですね。

あるキャラクターの一人称視点で、以下の状況について書いていきます。

起きた時に自分の家ではあるものの、ベッドではないところで目を覚ます。物事は変わったところはないように見えるが、さっきまで見ていた夢の不穏さが投影されているのか、何か不穏に感じられる。・・・で、何かしらのオブジェクトがそのキャラ人物の注意を引く・・・。というところから始まります。


フェイ・フューは目を覚まして、ベッドにいないことに気づく。部屋には何も変わったところはない。さっきまで見ていた夢が彼を不安にさせているが、思い出せない。部屋の中は彼女じしんの不安に覆われて、どことなく変形しているかのようだ。

・・・・・・わたしは目を覚ました。ベッドではない。床の上に寝ている。キッチンだ。油でねとねとしている。

手をついて起き上がるときに、手の平に油膜がつく。ほこりも一緒につく。怖気おぞけが走る。汚れは固形物も混じっているのだ。虫だとか。そういうでこぼこを手の平が感じる。

わたしは洗面所へ行き、手を洗う。蛇口をひねる。油がつく。蛇口はひやりと冷たい。
水で手を濡らす。石鹸をつける。泡で出てくる石鹸をつける。両手をこする。泡が両手を隔てる。ぬるぬるする。

蛇口から出てくる冷たい井戸水で手をゆすぐ。手が冷たくなってくる。

部屋へ戻る。空気が悪い。よどんでいる。それもまた油っぽく感じられる。窓を開ける。熱い、もわっとした空気が流れ込む。質量を感じる。熱。風。顔にあたる。

部屋の時計を手に取る。小ぶりなプラスティックの時計の軽さ。マニキュアで描かれた模様の凸凹。それもちょっと油っぽく、ぷにゅっとしている。文字盤は軽々しい。

ぺらっとしている。時計の針もぺらっと、虫の手足のように細く、っている。日に晒されて、ほうっておかれて。
脆そうな針をわたしはつまみたくなる。

秒針は今のところ音を立てて動いている。それは真似のできない確かさ。信頼。針は反ってチープ。

色あせていてもなお、建っているビル。見まわしてみると。
日と雨に晒されて、とことんなめされていてもなお、機能は保っている。

乾いたページ。とことん顧みられずに放っておかれ、ページが変色し、反ってしまった漫画のページ。

乾いて丸まってしまった花びら、植物。何にせよ。昆虫。標本。元の機能を漂白されてしまった、干からびた残骸。

それをわたしは指でつまみあげる。力を入れるとそれはほろほろと崩れる。崩してしまう。たやすく粉になってしまう。指をこすり合わせて、粉をさらに細かくする。ざらざら。さらさら。わたしは指をこすり続ける。

満足のいくまで細かくする。

時計はもろく、ひびが入っている。そこへ両手で力を入れて、わたしは時計を割る。かぽり。簡単。

水気を含んだ田んぼの土。やや鮮やかな断面。二つに割れた時計。
酸性雨がしゅうしゅうと降る。
白い蒸気をわたしは吸い込む。
土のにおいを吸い込む。

本の中では、ステップ1からステップ7までを経由することで、一番表層の単純な感覚から初めて、だんだんと深層のイメージへ潜っていくように誘導されていきます。

わたしが書いたものも、注意が向けられるものが転々とします。そうするうちに、"desiring" とか "deeper yearning" というものが次第に露わになる仕掛けです。その際、自分では一切の分析や一般化や抽象化をしない。つまりこういうこと・・・とまとめない。ただただ、瞬間瞬間に立ち現れる感覚にのみ集中してすくっていく。

やってみて、たやすく解釈へ流れていきそうになるのに気づきました。べたべたするとか、割れるとかいうのが何を意味するのか・・・とか考えたくなりますよね。

まだまだ感覚へ切り込む深さが甘いんだと思うのですが、やってみて、すごく新鮮な後味でした。

書いた断片それ自体には、まぁ、あんまり意味はなくって、何かの役に立つかもしれないし、これっきりかもしれません。

また明日は新しいエクササイズをやってみますね!

なお、冒頭の写真は文章とは関係なくて、Unsplash で偶然目についた、それこそ、ここから何か始まると設定して、書けそうな写真です。

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