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vol.2『ロジスティックのすべて』〜サッカー・フットサルづくりの教室2020〜

第2回のテーマは、「土地種別の法律・資材選定・芝生施工などロジスティックのすべて」と題し、株式会社キチ&アソシエイツ代表の吉岡さんに『グラウンドづくりの実働と現場』についてお話しをいただきました。

(第1回の「コンセプトづくり」はこちら)


株式会社キチ&アソシエイツは、建築設計の施工を請け負うだけでなく、ジュニアサッカークラブの運営や人工芝販売の代理店を始め、グラウンド施設を事業としています。グラウンド施設事業では、関東、東海、関西で来年に向けて既にいくつかのサッカーグラウンド・フットサル場の案件が進んでいるそうです。

吉岡さんからは、グラウンドをつくる際の手順、土地、法律、資材選定、施工方法や契約のことなど、私たちが知りたくてもうまく情報に辿り着けないロジスティックのことを丁寧にお話いただきました。
ここでは、その中のいくつかをご紹介します。

1. グラウンド施設の運営用途と規模
ここでのグラウンドの定義は、小規模で施設運営可能な運動施設のことです。面積や土地の種類によって開発許可も必要になる場合もありますが、短期で比較的ローコストできるものを指しています。作ろうとしている理想のグラウンドを思い描き、コンセプトを策定し、どのくらいの規模で作るかを考えながら、必要な土地を割り出す作業から始めます。

2. グラウンドをつくる土地のこと
基本的にグラウンドを作ってはいけない土地はないとのこと(公共の土地は除く)。しかし、1haを超え、かつ区画形質を変更する場合には、開発許可が必要になります。また、候補地に農地が含まれる場合は、地域の農業委員会の承諾と農地転用の許可が必要です。

運営上必要な付帯設備(クラブハウスなど)に関しては、様々な法律(建築基準法、消防法、都市計画法)の制限がかかってきます。したがって、このような制限を回避するために建造物を仮設として申請し、毎年更新している事例もあります。

その他にも、土地には用途地域によって、【住居系・商業系・工業系】と種別が分かれており、それぞれに法律の制限があります。住居系地域については、法令上の制限そのものは厳しくありませんが、近隣住民への対策を考える必要が挙げられます。商業系、工業系地域に関しては、建築物の制限が少なく、近隣への配慮も少なくなるので、施設運営には比較的向いていると言えます。

3. グラウンドの付帯設備
グラウンドを利用する上で、競技面・運営面において必要な設備を設定します。
サッカーやフットサルを例に考えると、競技面では、側溝などの給排水設備、照明設備、防球ネット、屋根付きベンチ、ゴールなどの備品、人工芝など、いう感じで浮かんでくると思います。運営面では、トイレ、駐車場、クラブハウス、備品倉庫や観客席など様々なものが挙げられます。

4. グラウンド施設の施工
業者選定から始まり、見積り依頼の方法などポイントを6つに分けて、それぞれの注意点と合わせて話していただきました。
業者選定はおいては、主に3パターン【丸投げ型、分離発注型、セルフビルド型】から最適な選定を行います。工事種別によって使用する業者も変わりますので、細かな注意が必要となります。中でも、見積は各業者から材料や工法など新たな提案をもらえる場合もあるので、複数の業者への合見積が必須です。それ以外にも、支払い条件や工期など金額面以外にも検討すべきところがあります。
加えて、施工業者とは別に設計者やデザイナーに外注してコンセプトやイメージに合った材料をコーディネートしてもらうと、バリエーションが豊かになります。
グラウンドを作る上では、多くの工事業者が関わってくるので、自分たちで出来る作業とそうでない作業をコストと合わせて考える必要があります。

5. 苗場グリーンランドについて
苗場グリーンランドは、約10万平方メートルの国有林を借り受け、認可を受けて建設されました。
グラウンド設備はサッカーフルコート4面(うち2面は人口芝)で学校の合宿などで利用されています。運営は苗場高原観光事業共同組合が行っており、セルフビルド型を選択し、当初予算より安く建設されました。予算内で、トイレを新築したり、バーベキュー場を拡げたり、売店の内装を変えるなど様々なチームを誘致できるよう努力しています。

吉岡さんから、冒頭と最後に“思い描いた理想のグラウンドを作るために必要なこと”として、こう仰いました。


「関わる人の熱量がそのグラウンドの魅力となり、価値へとつながる。」


グラウンドを作った後に描く未来がある人と、場所だけあればいいという人とでは、グラウンド作りにかける想いが違ってきます。作りたいグラウンドの先に叶えたいビジョンがあれば、多くの人の想いを巻き込むことができます。熱量を高く取り組む必要があることをあらためて確認できました。

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次回は、「人材育成・組織づくりから始める施設運営」というテーマで、株式会社ブラーボデザイン 藤村武氏のお話を伺います。アルバイトを含めた従業員の強みを生かす人材育成と組織づくりについてその思想や具体的な手法を共有いただき、大切な要素を学びます。


<文:辻川佳輝>
twitter: @ajl23788
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