vol.3『人材育成と組織づくり』〜サッカー・フットサルづくりの教室2020〜
第3回となった今回は、 ノアフットサルステージの運営会社である 株式会社ブラーボデザインの藤村武さんをお招きして「人材育成・組織づくりから始める施設運営」というテーマでお話をしていただきました。藤村さんはこれまで20年近くフットサルコートの運営や経営に携わっておられ、今回のお話では組織運営だけでなく、経営の実態についてもお話をしていただきました。
(第1回、2回の様子はこちらから)
藤村さんは2014年のブラジルW杯の時に現地まで日本代表の応援に行かれたことがあります。その時に現地の方々と交流の一環としてフットサルをされたことがあったのですが、たまたま訪れた場所が何とlove.fútbolが手掛けたグラウンドだったということでした。
その後もスペインやポルトガルなどいろいろな地域を訪れ感じたことは、グラウンドに子どもから大人まで幅広い世代の方が集まり、そこに行くことが生活の一部となっているということでした。ただサッカーができるだけでなく、スタンドがあってコーヒーやビール片手に応援できたり、食事もできる居心地のいい空間が作られていました。
海外で見てきたこのような場を日本でも実現したいということが藤村さんの原動力となっているそうです。
藤村さんが現在勤務されている「ノアフットサルステージ」では、直営のフットサルコートを4面経営されているだけではなく、運営の業務委託やスタッフ研修、また、親会社がテニススクールを運営していることもありフットサルコートやテニスコート、野球場の施工事業もしています。
藤村さんはこれまで3つの会社でフットサルのコート運営をされてこられ、様々な運営課題に直面してきたと言います。
例えば、近隣住民との関係づくり。
新しいコートを建設するときはその近隣住民の方々への説明会をしたうえで理解を深める準備をし、実際にコートがオープンした後は住民の声に都度対応しながら、地域会合などに出席したりなど、地域からの意見を聞きながら運営を進められました(地域からの主な不安事項は、①音(話し声やホイッスルの音など)、②光(ナイター照明が住居や農作物に影響を与える)、③駐車場(路上駐車)マナーが挙がります)。
その他の課題例では、物件探し。
過去には、候補物件を見つけるまでおよそ10か月かかったそうです。物件を決めるためにはどこにグラウンドを作りたいかを決めるのはもちろんですが、同業他社の動向(同じ地域にグラウンドをつくろうとしていないかなど)に関する情報も仕入れる必要があります。実際、契約寸前まで進んでいた話が、同じエリアで同業他社が先にグラウンドづくりに着手したことで物件をあきらめたこともあったそうです。
藤村さんがそこまで物件選びにこだわったのは、過去に「グラウンドの利用者が思いきり楽しめない」ことを経験してきたからだそうです。例えば、グラウンドの近隣に迷惑をかけないように、営業時間が短くしたり、利用者に大きな声を出せないサイレントプレイや、ホイッスルの使用を禁止することを要請したりなど、結果的に思いきりフットサルを楽しんでもらえないことがありました。
そこで、誰にも迷惑をかけずにフットサルを楽しめる環境を提供したいという情熱・熱量をもって物件探しをされていたそうです。物件探しの際には、コンセプトに合致する物件の依頼書を作成し、大手から地元の不動産会社まで連絡を取り、実際に物件のある場所まで赴いて近隣住居の様子、アクセスの良さなど自分たちで現地調査を繰り返していたそうです。
教室では、実際に運営されていた時の売り上げや利用者の数値なども見せていただきました。
開業から2年は緩やかに成長し、その後、急に利用者が伸び始めた時期があります。何が変わったのか? その理由は、組織の在り方を変えたことが大きいと言います。
それまでは経営者が一手に責任を負って抱え込みすぎている状況で、マネージャーや現場のスタッフを信じられずに、スタッフが経営者のビジョンやコンセプトを理解できていないことが起きていました。
そこから藤村さんがコーチングに出会ったことがきっかけで、ビジョンやコンセプトをしっかり伝え、それが現場レベルまで落とし込めるようになることでよりコンセプトを実現しやすくなる状況が創り出されました。「信じて任せる」ことを実践することで、より生産性が上がることとなりました。
現在運営しているノアフットサルステージは兵庫、大阪にもグラウンドを構える会社で、地域特性が出やすいという事例を見せていただきました。
チーム利用が多い施設、バランスよくいろいろな形態で利用されている施設、個人での利用が半分以上の利用を占める施設など、地域、立地特性が大きく影響を受けるとのことです。
ノアフットサルステージではこれまでとまた違う問題に直面していました。
着任以前に離職するスタッフが多く出たり、今いるスタッフもこの先どうすればいいのか悩んでいたり、そしてなにより藤村さんが問題視したのは、サッカーやフットサルが好きでこの仕事を選んだはずの社員の方がコートに立つ姿が見られなかったということです。
事業的な問題、組織的な問題の両方を抱えていた当時、藤村さんはまずはこれまでの経験をもとに事業面の問題を解決しようとしました。しかし、当時事業を拡大しようとしていた中で早く事業を回そうというばかり考えていたこともありうまくいきませんでした。そしてその失敗を元にまずは組織作りの問題に着手しました。
組織作りの中で藤村さんが大切にしたのは、“人”です。
問題というのは人と人との関係性の間に起きるものであり、組織を構成する“人”による土台を作ることでより強固な組織を作ることができます。さらに藤村さんは最前線で働くスタッフがお店の顔であり、その役目はお客様の体験を後押しすることであり、スタッフがお客様に価値を提供する源泉だからと考えています。
そのために様々な組織作りのモデルを参考にしている中で大切にしているものの一つとして、”資質”があります。
ストレングスファインダーという「自らの強み(資質)を発見するための自己分析テスト」を用いて、34個の資質のうち自分の上位の強みを明らかにするテストがあります。
普段自分が当たり前思っていることが強み(資質)だったりするので、自分がその強み(資質)を一番気づいていない可能性があるため、このテストをやる意味があると藤村さんは説明します。
ただ、この資質はうまく使えば強みにもなり、誤用すれば弱みにもなりかねるものです。だからこそ組織を形成する人同士がお互いの資質をわかっていることで補完関係を作り、経営者の人はうまく組み合わせを作ることでその組織を最大化することができるのです。
ニワトリに飛べ!と言うような無理な命令をしないように、それぞれの特性や特徴を生かすことができる関係性を構築することが組織作りにおいては重要ではないでしょうか。
一通り藤村さんからのお話が終わった後の質疑応答では施設作りに関すること、運営に関すること、組織マネジメントに関することなど多岐にわたりました。これまで藤村さんが経験されてきたことを参考にして参加者の方々は自分たちが作り上げたいグラウンドに起こりうるリアルな問題を実感することができたのではないでしょうか。
次回は「廃校を活用したスポーツ施設づくりのリアル」というテーマで株式会社ローヴァーズ代表取締役の松川耕平さんをお招きし、千葉県木更津市で廃校になった中学校跡地を活用し、「人と地域をスポーツでつなぐ」をコンセプトにスポーツと地域経済の活性化を目的とする宿泊型総合スポーツ施設に取り組むローヴァーズの松川さんに、公募申請から施工・運営に至るまでのリアルを共有いただき、廃校活用のポイントを学びます。
<文:島ノ江耕平>
twitter: @koheishimanoe
Instagram: @koheishimanoe
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