【マンガ業界Newsまとめ】TSUTAYA等書店主導出版流通改革に向け合弁会社、エンタメ企業向け出資つづく など|6/25-107
マンガ業界ニュースの週1まとめです。動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、業界の方が短時間で情報を得られることを目指しています。
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紀伊國屋書店・CCC・日販 合弁会社設立の協議開始 書店主導の出版流通改革目指す
CCC、紀伊國屋書店、日販は6月23日、書店主導の出版流通改革に向け、合弁会社設立を協議開始とのこと。
出て来ている会社名が馴染みのあるものではあるのですが、説明に使用されている図を見ると、大きな動きと思われます。
例外はのぞき、一般的な書籍の取引は、取次会社である日販が商流の中心となり、
出版社→日販→書店(CCC,紀伊国屋など)
というビジネスが長年続いてきました。
しかし、上図によると日販の役割は<物流>と書かれており、記事やプレスリリースでも、書店と出版社が直取引を進めるとあります。これは<商流>が出版社主導のこの合弁会社の手のものとなるということを示しているのではないでしょうか。
CCC=TSUTAYAは近年、再販委託制度に乗らない仕入れリスクを背負った出版社直取引を、実験的に実施していきました。これは一定の成果を得、粗利率向上にも寄与したと聞こえてきます。
また、もともとTSUTAYAのPOSによる流通データは、日本最大の書籍販売データとして存在しており、出版社、取次などの流通企業もこれを見て書籍の販売状況をチェックすることはなされてきました。
これに対し、AI発注システムによる需要予測を行うとありますが、そもそもTSUTAYAが持つ書籍の販売データはもともと日本最大であり、この合弁会社スキームはそのデータが起点になっていきそうなところが非常に重要に感じます。
また「粗利率30%以上の取引を増やす」と説明もありますが、取次を通しての取引の場合、この粗利30%というのは書店側から見た場合の最大の利幅であるケースが多く、これ以上の粗利を取るというの場合、これはもう書店が今まで以上の料率を、出版社に直接求めていくものと読み取ることもできます。
再販委託制度を前提とした、流通全般を取次企業が行う形のビジネスモデルのうちいくつかが、今回の合弁会社で定義してる「協議事項」を読む限り、解体される雰囲気を感じます。現時点では必ずしもそうとは限らない情報までしかでていないわけですが、1953年の戦後すぐより続く出版流通の形が、70年を経た2023年に大きく動く前触れを感じるニュースでした。
根底にあるのは、DXとそれに伴うビジネスや社会の変化というところでしょうか。
関連して、CCC系のニュースが何本か出ていました。赤字は特損の影響が強く、投資期という雰囲気ですね。
マンガ関連エンタメ企業への出資相次ぐ
フーモア 6.3億円
Abuque 6.1億円
Webtoon制作で好調を伝え聞くフーモア社が、KADOKAWA、MAPPA、ほかから6.3億円出資受け。「日本のマンガ/アニメ/ゲームIPに関連したグッズ販売/オンライン展覧会/NFT等を提供」というAnique社は、6.1億円を調達。
とのことです。
近々だと、SORJIMA社の10億円調達、筆者も所属するコミチ社も、小学館、秋田書店から資金調達というあたりが記憶に新しいですが、昨年くらいまで投資市況は冷え気味と伝えられていたところに、最近の株高や、エンタメ産業に対する期待含みで、資金が集まってきているという所でしょうか。
出資元の傾向として、通常の投資ファンドなども見えますが、両者ともにエンタメ企業からの出資があり、各社大手エンタメ企業との事業投資関係が構築されていますね。
いずれにせよ、力のある企業に資金が集まり、これがクリエイターにしっかり還元されれば、エンタメ産業も好循環になりますし、せっかくの好機を活かしていきたいところです。
実際に調達を行った張本人たちは、そこ至るまで非常に大変でしたでしょうし、これから先も期待を受けて力を尽くすわけですが。
国内News
ユーザー参加型の投票で順位の決まるKADOKWA/ダヴィンチ主催の漫画賞「次にくるマンガ大賞2023」のノミネート作が決まりました。
年々力の入り具合や規模感が大きくなっているように感じる同賞ですが、やはり電子コミックがSNSなどを通じてデジタルな場で多く販売されていることを考えると、電子コミックのインパクトを年を追うごとに大きくなる昨今、影響力の強い漫画賞となっていくということなのでしょう。
ブックリスタ社の創作支援サービス「YOMcoma」の新機能ですが、なかなかユニークです。
プリントオンデマンドでクリエイターの作品を1冊から印刷して販売できるというもので、その売り上げの26~42%がクリエイターに還元されるとのこと。読者は複数のクリエイターの作品をまとめて自分だけのコミックを作ることができるようです。
amazonKDPでも、電子書籍のプリントオンデマンド機能はありますが、複数作家の作品がひとつの冊子にまとめられるというのはユニークですね。
かねて、Webtoonにも参入すると宣言していたドリコム社ですが、5作品のコミカライズを始めるこのタイミングで、Webサイトをオープンしたようです。『ゴブリンスレイヤー』原作者の蝸牛くもさん原作の『ブレイド&バスタード』など、力の入った連載がラインナップされてますね。
先日ローンチされた講談社の北米向けサービス K MANGAですが、記念パーティーを作家さん稼働で行ったようです。動画視聴数を見ると1万を超えていまして、滑り出しとしては強力ですね。長い動画を見てもらうのは、今はなかなか大変ですからね。
7月上旬のAnimeExpo@ロサンゼルスに、とらのあなFantiaが出店するとのこと。Fantiaはネット上のクリエイター支援サービスですが、なぜリアルイベントへ?と思われる方も多いと思うのです。例えば北米の日本産アダルトコミックサイトとして支持をうけているFAKKU社なども、こうしたリアルイベントに頻繁に出店し、ファンづくりを行っています。本格的な海外進出ということなのかなと。
学校図書館でのマンガ普及についての記事です。日本財団の「これも学習マンガだ!」プロジェクトも追い風になっているとのこと。
今週話題になったのが、シャープ公式のシャープさんによるこの発言です。
ここから、様々な方の豪華なリアクションがありました。
色々と勉強になるのですが、個人的には講談社鈴木さんの「モジりは返って揉める」という知見が、大変興味深かったです。
また、だいぶ話が違うのですが個人的に今週すごいなと感心したのがこちら。桂あいりさんの『カラミざかり』というヒット作品が、同キャラでBLになったというニュースなのですが、この作品の変遷がユニークです。
もともと、FANZAなどにて「アダルト同人作品」としてスタートして大ヒットした本作なのですが、その後講談社ヤンマガにて、非アダルトの青年誌作品として連載されました。ここまではまぁわかるというところですが、この後、画像を見ればわかるのですが、男性側の主要キャラ2名をそのままBLに移行するという、最早誰が対象なのか全くわからない展開です。
これイケる?キャラ同じままでイケるのですか??すごいです。
性癖的にはともかく、ビジネスとしては素晴らしいなと思いました。真剣に、この作品の展開からの成果が気になります。ちなみに、記事を書いている際の時点では、お気に入りが445人でした。実売どうなるんやろうほんと。
今週のWebtoon新規参入・新たな動き
かねてよりWebtoon参入を宣言していたアニメ制作会社WIT STUDIOの1作目が見えてきました。
オリジナルアニメなどを制作するクリエイター集団・FUZI氏を原作にすえ、WITのアニメ現場で活躍するプロデューサーやクリエイターを投入とのこと。なんと申しますか、せっかく作るんだから、最初は派手に行こうぜ!的な気合を感じます。どんな感じになるんでしょうね。楽しみです。
そのWITとも関係するHykeComicですが、ちょうど1周年でアプリも100万ダウンロードだそうです。メモリアルです。
3年好調に連載していたピッコマのSMATOON『盗掘王』ですが、完結とのこと。この完結に当たりピッコマがイベントを告知しています。
・課金時30%オフ
・フォロー&RTで、オリジナルグッズ抽選プレゼント
・無料閲覧話増
このあたり内容としては一般的なものではありますが、人気作の完結にあたり、手堅くこうした仕掛けを行うのは基本中の基本ですし、力のあるピッコマが打つ手ですし、やはりしっかり成果の出るものと見込まれているのだと思います。基本大事ですし、Webtoonの施策として参考になると思います。
ウェブトゥーン制作の最前線 - 飯田一史 Mixer 北室美由紀さん
所属するコミチ社の連載記事「Webtoon制作の最前線」ですが、今回は『サレタガワのブルー』や、comicoで数多のヒット作品に関わった北室美由紀さんです。
めちゃくちゃちゃんとした良いことを書いておりますので、Webtoon関係各位は是非おさえてくださいませ。全中後編3本が全て公開済みです。ヒットWebtoon制作の秘訣や、実は初期comico作家さんが現在先行者利益を得ている件など、見どころが沢山あります。ちょっと長くなるのでツイートで見どころまとめました。
海外News
ここから英語など外国語記事をご紹介します。自動翻訳をご利用ください。
来月7月は、7月上旬がAnimeExpo@USロス、中旬がJAPANEXPO@フランスパリ、下旬がコミコン@USサンディエゴとなっておりまして、コンベンション系の話題が出始めています。
一先ず、コミコンサンディエゴのさわりのご案内ですね。米国ですし、当然マーベルやDCが出ていますということで、その辺りに触れています。
NAVER WEBTOONですが、上から順に、AnimeExpo、JAPANEXPO、コミコンでのそれぞれのホール出展、およびプレゼンテーションを準備してるようです。パッと見て、
・WEBTOON で DC ユニバースを構築します
・女性漫画の黄金時代
・ギリシャ神話がいかにして世界最大のコミックになったか
・水平から垂直へ: 画面からページへのウェブトゥーン ストーリーテリング ・出版ラウンドテーブル
・このウェブトゥーンは絶対読まなきゃ!
・世界のエンターテインメント業界におけるウェブトゥーンの進化する位置
などなど、色んなプレゼンをするようですね。私もこうした業界イベントの主催者側なので思うのですが、これはやはり本気だなぁと思います。こうした内容が記事に残ると、後で効くんですよねぇ。
こちらはAnimeExpoでの話題なのですが、端的に説明すると、
NAVER WEBTOONは北米で7周年を迎え、7月のAnimeExpo内で、昔ながらのマクドナルト誕生会を開催中の4日間やり続ける。
とのことなんですが、なんとまぁ楽しそうですね。子供の頃憧れたなぁ、やったことも参加したこともないんですよ、マックの誕生パーティ。
NAVERは沢山セッションを予定しているようですが、マーベルや、場合によってはDCもコミコンでセッションをしないかもしれないのだそうです。色々ありますねぇ。この記事、トップの動画がミッションインポッシブルのトム・クルーズなんですけど、華やかですねぇ。
色々ある中でちょっと気になった記事なのですが、韓国のWebtoonでゾンビもの。釜山が舞台だそうです。こういうものも英語化展開されて出ていくのですねぇ。
こちら中国語なのですが、台湾でLINE WEBTOONアンバサダーと言うものがあるようで、学生がLINE WEBTOONの伝道師的なことがで、奨学金なども得られた李、就活にもなるみたいです。面白い取組ですねぇ。
こちらは、アングレームのネタと言うことで、ノルウェーの記事なのですが、ノルウェーでもWebtoon話題になってるようですね。映画祭など絡めていくようです。
こちらはインドネシアのWebtoon記事で、インドネシアで6作品のWebtoon原作映画が出来るということなのですが、この原作者もインドネシア作家が多いようです。浸透してますね。
AI・画像生成関連
マンガエージェンシーのNo9が、ChatoGPTを活用したWEBTOON開発についてプレスリリースしています。リスクも捉え、ナンバーナインでは、「漫画家のためのAI活用」のポテンシャルとリスクを複眼的にとらえて慎重に取り組んでいきたいと考えているとのこと。
内容的には、これから使いますという感じで、具体的なことはこれからのようでした。
そうすると、その日のうち、No9の親会社、INCLUSIVE社の株価に影響が出たようです。すごいですね。このスピード感。
文化庁が「AIと著作権」という講演を動画で公開、これを捉えて解説してくださっている記事です。勉強になります。
コンソーシアムも立ち上がり、「学習データの透明化」「収益分配」「安心・安全な活用」など、さまざまに議論されているようです。
これは便利そうです。
ちょっと楽しそうです。アイディア出しの応用ですね。
こういうのも楽しそうですね。若い人にはどんどんツールとして使いこなして欲しいです。
このデザイン、ちょっと凄いなと思いました。
記事のみ紹介
告知関連
[開催概要]
第9回つーほんウェビナー「バンド・デシネと世界のマンガを知る」
■登壇者:原 正人さん(フランス語翻訳家)
フレデリック・トゥルモンドさん(合同会社ユーロマンガ代表)
■日時:2023年7月1日(土)14:00~16:00
■形式 :Zoomウェビナーによるオンライン配信(アーカイブ配信あり)
■参加費:2,000円(税込)
■参加申込方法:Peatixのイベントページ(https://tsuhon09.peatix.com)にてチケットを購入
■申込締切:2023年7月1日(土)10:00
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ラーメン発見伝シリーズ第3弾『らーめん再遊記』ですが、ラーメンハゲこと芹沢(私も麺好きハゲですのでお許しを)の漫遊記的内容で筆休めになるかと思いきや、めちゃくちゃ脂がのって大変な面白さになっております。ラーメンだけに。
とにかく誰かと語り合いたいのです。ゆくゆくお会いする方々などで本作お好きな方いらしたら、ぜひ語りましょう。枯れたオヤジのさばけたラーメン感について語りたいのです。ほんとに。
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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンかTwitterのフォロー、よろしくお願いします!
現在私は、マンガ編集部やWebtoonスタジオが自社で作品の販売をできるWeb雑誌の仕組み、「コミチ+」の営業をしています。
コミチ+は、来年に向けて大手出版社やWebtoonSTUDIOなどの大型受注を複数控えておりまして、絶賛エンジニア、Webディレクター(運用担当・データアナリスト等)などを募集中です。サービスがどんどん大きく広がっていく、これから滅茶苦茶楽しくなっていくタイミングです。一緒にやりませんか!私も力を出し切るつもりですし、一緒に働く方には私の持ってる知識や人とのつながりを最大限提供したいと考えています。詳細は以下より。
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