【マンガ業界Newsまとめ】小学館、vivionのEC進出に見る版元とPFの新たな関係性・ 小学館漫画賞に「葬送のフリーレン」など|1/21-137
マンガ業界ニュースの週1まとめです。マンガ・アニメ業界向けイベントIMART(https://imart.tokyo/) を運営する筆者が、動きの早いマンガ業界・Webtoon界隈のニュースを出来る限り一か所に集め、マンガ業界の方が短時間で1週間分の情報をチェックできることを目指しています。
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小学館、自社ECサイトを刷新--出版社ならではのコンテンツ発信を追求
小学館は「LIFETUNES MALL」というEC(通販)サイトで、ライフスタイル誌や人気コミック作品のキャラクター商品などを扱っています。
単純に商品を販売をするだけではなく、顧客ロイヤリティーの向上につなげる「ファンマーケティング」、魅力的なコンテンツを発信する「メディアコマース」、会員データを基に複数の顧客接点で最適な購買体験を提供する「オムニチャネル」など、さまざまな機能を用意しているとのこと。
人気漫画やアニメの2次元コンテンツとコラボした限定商品などを取り扱う総合バラエティーストア『viviON BLUE』本日正式オープン!
DLSite、comipoなどを運営するvivionは『viviON BLUE』というECサイトを、2次元コンテンツのコラボグッズ、独自のオリジナルグッズや自社IPのグッズを取り扱う総合バラエティーストアと説明しています。
近年、出版社の売上は書籍、コミックなどの、いわゆる出版物の売上のほかに、従来からのアニメ化などのライセンスフィーなど、これまで他社に任せてきたグッズなどを自社で販売することにより、売上を向上し、収益構造を変化させてきています。
vivion社は、もともとプラットフォームとして長年ビジネスをしてきましたが、最近はオリジナル作品いわゆる自社IPも持ち始めており、これを直接ECで販売できる体制を整えています。
構図としては、両者が相まみえていることが見えてきます。
もとも作品作りに注力していた版元が、自社アプリやWebなどを運営する経験を通じて、グッズを自社リスクで作りECサイトで直販する体制を作り、出版物に限らずファン向けの施策やデータ獲得、ファンマーケティングに進出している形です。
一方、プラットフォーマーは作品を預かり販売してきた経緯から、ユーザーデータを用いてマーケティングして各社熾烈な囲い込みを行ってきました。そのプラットフォーマーが自社IPを作り、同じくグッズを直販する体制を整えつつあるのは、これまで住み分けて来た版元とプラットフォーマーが、同じ土俵に乗りつつある、相互に領域を侵食しあう構図です。
いわゆるIP展開の激化と、ユニクロのSPAや小売業のプライベートブランドのような、製造から流通まで一貫し、ユーザーに直接届けている体制が、各社整えていきつつあり、このあたりがマンガ業界周辺では次の最前線のひとつとなることが予想されます。
第69回小学館漫画賞に「葬送のフリーレン」「逃げ上手の若君」など4作品 部門は廃止
第69回の小学館漫画賞が発表されました。
小学館からは『葬送のフリーレン』『数字であそぼ。』『トリリオンゲーム』集英社からは『逃げ上手の若君』という四選です。
フリーレンは、小学館にとって待望の大ヒット作品であった、とても大きい作品だったというのが、界隈でも素直な感想かなと思います。
また、大手出版社の中で唯一、大型漫画賞「小学館 新人コミック大賞」で、児童向けから団塊世代も包摂する青年誌までと、対象範囲が広い新人賞を行い続けて来た小学館ですが、ここに来て小学館漫画賞で部門を廃したというところが印象的でした。
特に児童向けについては、学年誌などの運営を整理し続けて来た経緯があり、今後この広い守備範囲をどうしていくのか、注目したいところです。
国内News
掲載作品すべて第1話という、週刊ヤングジャンプの増刊・ヤングジャンプ ダイイチワのvol.2が、本日1月18日に発売とのこと。vol.1で1話を掲載した作品の連載が決定したり、『キングダム』のプロトタイプ読切が掲載されるなど、面白い内容になっています。グッズについても、負担金ありの応募者全員サービスなど、面白い取組がなされています。
インプレス社のネットメディア「GAME Watch」が、漫画専門の「MANGA Watch」を近日創刊とのこと。もともと、GAME Watchの中でマンガのニュースを良く扱っていましたが、それを加速化するということなのでしょう。
かつては、多くの日本人にトラウマを残した北米(ハリウッド)の日本漫画実写化ですが、ここのところすっかり見直されています。
記事ではその要素が3つあるとのこと。
なるほど。根っこの部分で面白いかどうかは、最後が重要そうです。日本でアニメ作っている環境と変わらない気もしますね。逆にいうと、作品に思い入れの無い2次展開は、大事故の素ということを、海外企業のプロデューサー(NetFlixについては、これも日本人な気もしますが)も学んだということなんでしょう。
まぁ、そうですよね。そりゃ。
90年代からアニメライターという渡辺由美子さんの安定感ある記事です。
ひとつ前の、既存作実写化にも通じますが、現代の作品としてしっかり作りなおすと、名作は旧来のファンから未見の新たなファンまで掴むんでしょうね。リョーチンをあんな風に見せるとは。。。確かに桜木をラストシーンまでずっとモブにしとかなきゃ、こんなにヒットしなかったような気がしますよね。的確な現代語訳、、時代ですね。
この2つの記事は、コミックの制作・販売、わけてもここ10年サブカル系の作品に携わった方には、痛い程通じるんじゃないでしょうか。近年大型ショッピングモールにどんどんヴィレヴァンが進出していった歴史の振り返りですね。いや、ホントですよね、ポイズン!(新店名はライトじゃなくポイズンが良いと思います。)
巨匠と言われる作家たちが、毎年鬼籍に入る中、原画の保管や、相続の問題は喫緊の課題です。そんな中で、漫画家協会会長でもあるちばてつや先生が、ご自身の状況を調査対象として研究するという、なかなか出来ないですよね。さすがです。
個人的に今週面白かったTV番組です。テレ東Bizで配信を見れます。
アマゾンジャパン代表のジャスパー・チャンさんですが、もう20年以上日本の代表をされてるんですね。
最早現在のアマゾンにおいて、本や電子書籍の話題は、こうした特集時に話題にすらならないという点でも、ひとつ勉強になりましたが、生鮮での取り組みや物流課題など、今のアマゾンが何を考えているのか、興味深い内容でした。東京のガラス窓の枚数なんか、考えたこともないですねー。
東北ずん子は、開始当初「東北にゆかりのある、東北で開催する同人誌即売会や物販など」に限定し、とらのあなの店舗などでライセンスシールを購入して貼り付けることにより、そのシール代をもって正規ライセンス許諾をするという、斬新なビジネスモデルを整備したご当地キャラでした。
ルールとして規定されいてる、度を越えた使用をしなければ監修無しで2次創作ではなく、正規ライセンス展開が出来るというもので、初音ミクよりはもうちょっとアナログな感じで展開するユニークなものです。
今回はその、ライセンスシールの代わりに、BOOTH上で販売することにより、ライセンス料が自動的に払われる仕組みが開始です。このモデルは、長く考えてこられながら、同人と商業の境目で実現できてこなかったことですね。面白い先行事例になっていると思います。
今週のWebtoon新規参入・新たな動き
冒頭のニュースでEC開始を宣言しているcomipoのオリジナルIP施策のひとつ、オリジナルWebtoonの配信開始です。音声コンテンツに強いvivon社らしく、連載開始と同時にボイスコミックが始まるなど、強かな滑り出しが垣間見えます。
DLEの新作Webtoonも好調とのこと。
「アジア最大規模の「漫画・WEBTOON素材プラットフォームACON」、日本進出発表」という記事なのです。これを見ると単純にセルシス社のClip Studioの素材と競合するかと思いきや、そもそもこの会社はクリスタ素材を韓国でも販売するために作られた会社で、それが韓国で運用したものなんですね。韓国で運営するうちに、Webtoon用のカラー素材が充実し、それを日本に逆輸入(?)する形みたいですね。もともとのクリスタ素材も売るんですかね。
日本国内でも、俺レベの記事にバラエティが出てきました。ぱっと見、これはやっぱりセールス施策に気合が入ってるなぁということと、いわゆる日本のアニメを売り込むときのスタイルというよりは、Webtoonを販売してきたスタイルの販促だなぁという感じはします。
ちなみに、海外ニュースでも英語他様々な言語で俺レベの記事が出ていましたが、今週は同じようなものが多かったので割愛しています。
海外News
作品人気が上がった結果、バンドデシネに近い高付加価値な売り方になったというところでしょうか。前年比割れは、昨年フランスで提供された18歳の若者の文化芸術活動を資金的にサポートする「文化パス」の影響でしょうか。
*: 外国語の記事が混ざり始めます。自動翻訳などご利用ください。
タイトル訳:ウェブトゥーン業界、2022 年に 5 年連続の成長を記録
タイトル訳:Kウェブトゥーンの年間売上は増加するも、クリエイターの収入は減少
だいたい同じことを言っている記事なのですが、タイトルの切り口がみんな違うというものです。
2022年の韓国Webtoon業界は16.8%の増。、1兆8,300億ウォンということで、およそ2,000億円弱くらいですね。一方で、競争激化でクリエイター個人個人の収入面が下がっているということもあるようです。
一つ上の記事群が、2022年通期の数字を述べているのに対して、この数値は2023年上半期の数値です。
2022年の前年比で16.8%の伸びだったものに対して、2023年上半期の前年比は71.3%伸びていると言っていますね。一応、同じ韓国コンテンツ振興院(と、そこを管轄する文化体育観光部)の発表なので同じ数値だと思うのですが、事実であれば、急成長が開始するタイミングが2023年上半期からだったという歴史的マイルストンになりそうな指標でした。
タイトル訳:Ellipseアニメーションがウェブトゥーン制作に拡大
60年以上続いた老舗アニメ制作スタジオが、Webtoonスタジオになったというニュースです。フランスの企業らしく、アフリカのクリエイターもWebtoon制作に参加しているという話題もあります。ちなみに、韓国側の提携先がKenaz提携先がのようです。2Top大手じゃないんですな。
タイトル訳:Webtoon と Aethon Books が協力して 14 の Web 小説を Web コミックに改作
今週、このニュースで沢山の関連記事が出ていたのですが、北米WEBTOON(NAVER)は、米国のSFファンタジー出版社から14作品の小説原作を調達してWebtoon化するとのこと。こうなっていきますよねー。
1976年の、アメリカ・サンディエゴのコミコンの様子だそうで、何か強い、俺たち臭を感じますね。昔のコミケ動画と雰囲気が似てるようなですね。
AI・画像生成関連
WebtoonとAIの相性は良さそうですが、強力な工程を作り上げつつあるクリエイターも出始めているような。
これはなんともですね。
日本政府によるAI関連のパブコメですね。
「AIと著作権に関する考え方について」ついて、思う所を国に意見出来るというものです。SNSにテキストを投下するよりは、実益のある意見の出し先かなと思います。
これは、ほんとにありそうな道行きですね。井上さんの続きのツイートに「AI絵師はそもそも絵が好きじゃないから、絵の生成にも飽きる」というのもあり、さもありなんです。
と、いうことなんですが、中身を見るといわゆる創作やマンガで言うクリエイティブ面に使っているのは主流ではなく、経営とかマーケなんかに使っているようです。それは確かに役に立ちそう。
こういうのも出てきますね。上海交通大学の研究の応用とか。
今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等
タイトル訳:DCコミックス、2024年の無料コミックブックデーの内容を発表
記事のみ紹介
告知関連
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主に週末に週1更新ペースで書いています。たまに別途特集を書きます。マガジンかTwitterのフォロー、よろしくお願いします!
今年2023年11月24日~26日に、第4回IMARTというマンガ・アニメの国際カンファレンスを開催しました。
基調講演に鳥嶋和彦さんを迎え、マンガ・アニメの現場から22のセッションやピッチが行われました。
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インプレス社『電子書籍ビジネス調査報告書2023』のWebtoonパートの執筆を担当させていただきました。
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