【マンガ業界Newsまとめ】ジャンプ+読切英語配信は集英社の覇王色、各社決算 など|9/1-166
マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。
来週のNewsまとめは、都合により9/9朝に公開します。ご了承ください。
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マンガ業界初の試みを「MANGA Plus by SHUEISHA」にてスタート! 2024年9月1日以降に「少年ジャンプ+」で掲載する読切作品の英語版を全世界に向けて日本と同時配信!
「少年ジャンプ+」編集部は、2024年9月1日以降に「少年ジャンプ+」で公開される読切作品を、英語に翻訳し、「MANGA Plus by SHUEISHA」にて、全世界(日本・中国・韓国を除く)で同時公開していく試みをスタートします。同様の取組は史上初です。
この記事を見た時に、最初に感じたのは「覇王色の覇気」です。この取組、正にジャンプの覇道の一歩、それも覇王色完成まであとわずかと言う進捗を感じるためです。
個人的に、先月はブラジルから、今週はインドネシアの現地で「どうしたらジャンプの連載作家になれますか?」と質問されました。世界中のクリエイターが、ジャンプで漫画を描きたいと思っているようです。
もともとジャンプ+は「MANGA Plus creators by SHUEISHA」という取組で、世界中のクリエイターがジャンプに投稿できる仕組みを作りました。ここを新たに知り邁進する人もいますし、投稿しても全く反応が無くどうして良いか判らない人もいます。
しかし、ジャンプは既に、この海外投稿者から、国内デビューを実現しています。彼らにはこれを紹介します。
また、英語圏近隣に限りますが、元ジャンプ編集長で『バクマン』にも編集長役で出ていた佐々木尚氏が、米国の集英社系VizMediaによる「ONE-SHOT」という取組で、英語圏の漫画家志望者を鍛え上げ、ジャンプ同様のヒット作品を作るという夢を英語で語っています。(記事は英語です)
今回のジャンプ+の取組は、そうして集めた作品を、読切掲載時点で英訳して世界に届けるというものです。世界中のジャンプ投稿者が、自分と同じラインで戦っている新人の読切作品を、英語で読むことが出来てしまうというものです。彼らは滾るでしょう。
もともと読切作品とは、新人のトレーニングの場でしたが、SNS時代には『ルックバック』をはじめ、読切一本で下手な広告施策をはるかに超える大きなバズを生むようなことになり、その存在感が変わっていきました。
今度は、世界中の才能に、同じ外国人漫画家志望者でも、その作品をジャンプ+に載せ、それを瞬時に英語化して世界中に示せる取組をはじめました。
中南米の山奥か、中央アジアの砂漠地帯か、北欧の吹雪けぶる森林地帯からでも、漫画さえ描ければ日本のジャンプに投稿でき、それが翻訳掲載されて読めるようになる準備が完成しつつあります。
作品の投稿や、その読切掲載によるフィードバック等は、大ヒット作品の販売、世界的な映像化、後の巨大なIPビジネス化などに比べると地味な側面ですが、確実にそうした大きなビジネスにも地続きとなる源流です。
そして、短期的な収益化に耽溺せず、長期的にじっくりと新人作家を育み、後の大ヒット作品を産む覇道の第一歩です。(文脈的には「王道」かもですが、ジャンプなので覇道としました。全てをかっさらうという意味では覇道です。)
というわけで、これで海外の作家が投稿した時に自動翻訳がなされたり、その新人作家が育つための、各国語やローカライズに長じた編集組織などが出来れば、世界の漫画家の才能がみんなジャンプに集まる仕組みが完成しそうです。ここまで来るともうちょっとかなと思います。まさに覇王色を帯びてまいりました。
先日インドネシアの現地出版社から「大ヒット漫画のヒミツは編集者にあると思うんだけど、どうしたらインドネシアでジャンプみたいな編集者を育てられる?」と質問されました。良い質問です。
この編集者育成の動き、一時期中国でもありましたし、今ちょうど台湾でも具体的な動きがあるそうです。ジャンプ式は、しばらくこのまま世界に拡がっていきそうですね。
ただ一点、ジャンプの中の方々は、ルフィのように修行して艱難辛苦のうえにこうした取組をしているというより、むしろ「作家のためには当然では?」くらいのテンションでこうした取組をしていると思われます。そこがまた良いのですが。
各社決算
集英社
集英社は減収増益、特に純利益は約30%増となったようです。
目立って大きなヒットが無かったタイミングですが、内訳を見ると、デジタルと版権が好調で、この2つは粗利が取れやすいので、純利に影響を与えたというところでしょう。社としての人事は多くありますが、マンガ関係は何もない感じですね。
KADOKAWA
決算の下方修正の情報は先週から出てますが、今週も記事が出ています。
ニコニコの問合せ、特にサイバー攻撃が直撃したほうですから、大変なようですね。そして、ハッカーとの交渉ですが難航中のようです。
ぶんか社
官報で、最終損失1.25億円とのこと。
メディアドゥ
2023年2月期決算を減収減益で終えているメディアドゥですが、このタイミングで統合報告書が出ています。
メディアドゥにとって2023年は、創業以来の大人事で、代表取締役副社長 CFOに苅田明史氏を据えるなどしています。その苅田氏が、今期以降の見通しとして、黒字化への取組として、代表取締役に竹村響氏を迎えた日本文芸社への取組強化を行っていくとのこと。
光文社
直近年度でコミック事業に進出している同社ですが、BLコミックレーベルのヒットが出始めているようです。講談社から出向して光文社取締役となっていた吉村浩氏が常務取締役になった模様です。
国内News
毎度お馴染み不破雷蔵さんによる、四半期に1回の紙の漫画誌動向です。
週刊少年ジャンプはこの四半期で、113万部→109.3万部と微減。青年誌のヤングジャンプで25.8万部→24.8万部と、上がっている媒体が珍しい状況。そんな中で、コロコロ、Vジャンプなど、低年齢向け媒体が少しだけ伸ばしています。
女性誌も、りぼん、ちゃお、なかよしと、いずれも低迷しています。なかよしについては、以下のような記事も出ていて、紙雑誌の難しい事情を物語っています。
小説共有プラットフォームの「テラーノベル」がコミックレーベルを立ち上げるまでは良く聞くニュースなのですが、その提携相手として、トーハンの名前が挙がっています。
とのことで、紙コミックスの流通に何か重きを見た作戦となるのでしょうか。
渋ツタ初のサイン会は『神血の救世主』とのこと。
プロモーションやMDなどを行う「灯白社」が、1億円の資金調達とのこと。VCのほかに、けんすうさんや、中山淳雄さんなど個人投資家も入っているようです。この分野でこうした調達は珍しいですね。だいたいデッドですもんね。
漫画家協会による、漫画家相談窓口にArts and Lawが参画です。
Arts and Lawは、弁護士、会計士と言った士業で、エンタメ分野に強い方々の集まり、この分野では様々な実績があります。手堅いです。
京都のまんだらけは高島屋の中だそうです。はまったら面白いですね。
Webtoon関連
もともと連携をうたっていた3社により、新レーベル「Pikalo」が創刊、8/28より配信開始とのこと。大座組ですし、楽しみですね。
amazon告知:インディーズマンガおよびインディーズ Fliptoon への広告掲載に関するお知らせ
もともと、amazonによる分配金を原資としてクリエイターに還元される仕組みであった、amazonインディーズマンガおよびインディーズ Fliptoonですが、広告掲載を可能にし、それを原資に分配金を出せるようになるとのこと。なるほど。
3D素材プラットフォームACONは、企業顧客専用サービスを新たに開始とのこと。企業に向けて専任マネージャーがつくとのこと。
スピリッツ『重版出来!』の、韓国ローカライズドラマ、日本逆輸入ですね。これ楽しそうですよね。
こちら、韓国Webtoonの日本実写映画化。
海外News
*: 外国語のニュースも紹介します。自動翻訳などご利用ください。
韓国の高陽市は8月6日、東京都渋谷区のShibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)のスタジオ&スペース「404 Not Found」で、都市開発の一環としての高陽市グローバルIP(注)シティプロジェクトの取り組みおよび日韓IP製作委員会の設立を発表とのこと。
これは、何人か日本の関係者も呼ばれたと聞きました。
libroさんによる北米エンタメニュースまとめです。
最近、海外に関心のある業界の人たちで集まると、「ホラーは手堅い」とか「なんで海外であんなにうけるんだろ?」みたいな話を良くします。
個人的に、何を恐怖と感じるかは、お国柄とか宗教観とかがあると思ってまして、例えば私の場合「貞子」や「呪怨」はめちゃくちゃ怖いですけど、「クトゥルフ」はタコとかイカとかワカメと言った食材に見えてしまう所があり、コミカルに感じてしまうんですよね。どうなんでしょうねぇ。
タイトル訳:最大の違法ウェブトゥーン共有サイト「アギトゥーン」が政府の操作で閉鎖
韓国は、こうした海賊版サイトを潰すなどした時に「とったどー!」的な、勝ち名乗り的テイストの報告が良く出るような気がします。個人的にそういうところは好きです。
今から33年前、現在のサンディエゴコンベンションセンターで初めて開催されたコミコンの様子だとか。コミコン自体はサンディエゴ近隣で1970年に開始とのこと。 こう見ると、昔のコミケ感ありつつも、一本木蛮さんがいないなぁくらいですねw
ということで、インドネシアローカルの出版社と言いますか、向こうでは、マンガ、アニメ、ゲーム、日本で言うマーチャンダイジング(MD)のうち、どれかではなく、全部か複数やるみたいな会社が多く、そんな方々とにかく多岐に渡りいろんな話をしてきました。
彼らはしきりに「IP」という言うのですが、どうもこの同じ「IP」という言葉でも、どこか日本とちがったことを指している感覚がありました。とはいえ、どんな仕事の仕方をしていて、どんなことをやりたいのか、日本に何を期待しているか?など、沢山のことがわかりました。
インドネシアにも日本同様「私が作りたいから作る」という、日本のどこかにもいるような真正オタク経営者もいれば、ビジネスとして広い視野を持つ人たちもいました。
今年のIMARTの開催には、この辺りを反映して、国際商談会に繋げて行きたいと考えております。9月には、この辺り発表してまいります。得るものの多い出張でした。
AI・画像生成関連
これまた、だいぶ進化していますね。
AI制作ツールの一つの谷として「目線が合った漫画」を作れるかというのを考えてたんですけど、これは合ってきてますね。なるほど。
でも、ネームは作れないといけないんですね。というかネーム作ったらここまで作れるということですね。なるほどなぁ。
AIコンテンツ制作で資金調達。どういうモデルなんでしょうね。今のところ、収益化モデルがほとんど見えないですね。
今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等
紀伊國屋のCPです。
記事のみ紹介
告知関連
記事中の、集英社上空からの写真が、綺麗で、見てて楽しいです。
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