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【マンガ業界Newsまとめ】ソニーがKADOKAWA買収協議へ、少年ジャンプ原稿料アップ、単行本表紙に協力費 など|11/24-177

マンガ業界ニュースの週1まとめです。
マンガ・アニメの業界カンファレンスIMARTを主催するMANGA総研代表の筆者が、マンガ・Webtoon関連のニュースを、ビジネス系を中心に、短時間でチェックしていただけるようにまとめています。

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ソニー、KADOKAWA買収へ協議=関係筋

11/19 はじまりは、例によってロイターの一報でした。

ソニーがKADOKAWA買収に向け協議開始。両社ともにコメントも無くこの時点では第一報らしいシンプルな内容です。

日経もちょっと情報を書き足して続き、2日後には株価高騰を受けてKADOKAWAからもIR発信で以下のリリースが出ています。

KADOKAWA IRリリース11/20より

「当社は、当社株式の取得に係る初期的意向表明を受領しておりますが、現時点で決定した事項はありません。」
とのことで、どこかから買収をもちかけられているのは事実のようです。

その後、さまざまな記事が出ました。その中でもソニーとKADOKAWAのことを良く知る数土直志さんの記事が、冷静で業界理解の強度が高い内容となっています。
数土さんは、まつもとあつしさんのYoutube配信で見解を述べられています。

私もおおむね同じというか、現時点で何かを言い切れるわけでもないので、そういうことだと思います。
少し、外部環境やこれまでの文脈から少し読み解いてみたいと思います。

先日、ブラックストーンがめちゃコミック運営企業の親会社インフォコムを買収した際に一般論として説明しましたが、今回もそれを試みます。

めちゃコミは、日本の大手5大電子コミックプラットフォームのうち、唯一の仕手筋が手を出せる立ち位置にある企業でした。

日本のマンガ出版社を見回した際、小集講角とある4社のうち、唯一上場しているのがKADOKAWAです。

そのKADOKAWAですが、中国Tencentからは出資を受け、韓国カカオからは5%の大量保有報告書提示を超え、10%強まで株式を持っていることが伝えられています。

Tencentは出資の受け入れですが、カカオの方は少しずつ買い増して、5%超えで普通に大量所有の報告をしたということでしょうね。

また、2023年3月期のKADOKAWA社有価証券報告書では、カカオ系のKSD-NHにより8.87%、翌年の今年2024年3月期決算の有価証券報告書では、KOREA SECURITY DEPOSIORYという韓国系企業が11.37%を持ち、前年のKSD分の株式を買い増した上で持ち換えているようです。これがカカオ系であるかは判然としませんが、住所が同じとの情報もありますし、持分の推移を見るとそういうことではないかなと推測されます。

そのカカオですが、今この瞬間にKADOKAWAを買収しようという強烈な意欲がありそうかというと、直近冷え込み気味のWebtoon市況を見ているとあまりそうは考えにくいです。特に、フランスに続きアジア各国からも撤退中のカカオは、大型買収はななかなか無さそうと見えます。

外国資本から強烈な敵対的買収をKADOKAWAが受けたというのなら、これはソニーによるホワイトナイト(敵対的買収に対する防御手段として、第3者企業が買収を拒む企業の株を引き受けること)とも言えましょうが、状況を鑑みるとそういう感じでも無さそうです。

一方で、ソニーとKADOKAWAの間には、すでに資本関係があります。ソニー傘下のアニプレックスの近年の好況を見ても、またグループ傘下とはいえ全てを独占的な動きと規定しない両社の関係性を見ても、ソニーとKADOKAWAとの相性は良さそうです。巨大プラットフォーム企業の傘下にIP創出企業が入ることによる事業領域の垂直統合にもなります。

というところで、日本エンタメ界の中で海外から買収されてしまう可能性のある大切なKADOKAWAを、周辺が静かなうちに好調なソニーが傘下とし、大きな時価総額を盾として大型外資による買収への防御力を上げておく。というような筋は考えられるかなーと思いました。

KADOKAWAだけに、ブルーナイトくらいな感じでしょうか。

さて、
KADOKAWAは、マンガ・ラノベの出版、アニメ、ゲーム、ニコ動、教育と、すでにコングロマリット化して完成している存在なうえ、その競争力を維持するためにも、恐らくソニー傘下に入ったとしても、そう強くは締め付けられないようにも思います。
アニプレックスがソニーに強烈にハンドルされているかというと、そうも見えず、かつ、それで上手くいってますしね。他の外資だと、そうもいかないだろうなとも予想できますね。

現時点では、こんな所かなと思いました。

多少はこれも影響あったかもですね。


ジャンプ編集部が『週刊少年ジャンプ』等の原稿料アップを発表 現役漫画家たちから「すげえ」と驚きの声

ジャンプの原稿料、モノクロ2万円台は、抜きんでましたねぇ。漫画家さん達にはMA騒ぎより大きなニュースになってました。ますます才能が集まることになるのか。


小学館、単行本の表紙などの作業に協力費

こちらも同じく漫画家さん達には大きな話ですね。これでもう、ほとんどの会社はこうなるのではないでしょうか。大童さんのムーブがクレバーで、お見事だなと思いました。個人的な考えは以下に。


国内News

DLSiteのジャンル別投票ということで、「全年齢向け」と、大人向けで「男性向け」「乙女向け・TL」「BL」という各部門が出ています。男性87%と圧倒的ですね。様々なフェティズムの定量化と、構文とも言えるファンのコメントが、えらいことになっていて面白いです。


毎度お馴染み、不破雷蔵さんのレポートです。今週は女性向けが主。
大手出版社の少女誌・女性誌は踏ん張りどころというか、新しい活路が求められる局面ですね。


ということで「ジャンプ+」に加え「りぼん」も「ジャンプPAINT」でスタートガイドを出すなど新しい取組です。昔で言うと、Gペンやトーンなど入れた漫画家セットみたいなものでしょうか。


Googleプレイの2024年間ベストアプリで「マンガワン」がベストアプリトップ、エンターテイメント部門は「ジャンプTOON」、タブレット部門で「CLIP STUDIO PAINT」がそれぞれ対象を受賞とのこと。


アニメ化とジャンプ+の初回無料施策の組み合わせの良さについてです。なるほど。


こちらはディズニーと講談社の連携ですね。ディズニーの独占配信はリーチが少々弱く、個人的に『七夕の国』実写版などの良作があまり日本で話題になってないことがきになるのですが、その打開としてというところでしょうか。


日本動画協会によるアニメ産業レポートの一部の情報が先出しですね。アニメは市場規模全体としても、海外売上としても大きく伸びているようです。


TV局制作のボイスドラマが、DLSiteで配信開始


東京コミコンは随分バラエティ豊かな出演です。


ゲキテイは良きです。冬コミ、個人で出ます。


IMART関連メディア露出

*: IMARTは筆者の主催する事業です。

国内最大手電子書籍取次のメディアドゥ社とMANGA総研のコラボで、マンガの国際商談会をやりましたという発表です。お世話になりました。MD副社長の苅田さんと、私のコメントが出ています。

どちらも電子コミック関連ですが、錚々たる電子コミックプラットフォームの皆さんが出てくださった回と、ぬこー様ちゃん、石橋さんと最前線最前列の2人が話してくれた回と、今回のIMARTの中でもど真ん中の2つのセッションです。良い記事だと思います。


もひとつ個人的に…

先日重版しました拙書、2刷が上がってきました。
ちょうど今、Kindle半額セール中であります。この機会に是非。


Webtoon・ショート動画関連

吉本興業、ドコモ、Mintoによるショートドラマ新PF開始です。座組が大きい。


サイコミからもショートドラマ


暇つぶしとは、そもそも無駄なものですw問題無いのでは?


新しいウェブトゥーンスタジオでしょうか。池袋、エンタメ企業増えてきましたですね。


No9も関わる漫画家シェアハウスPJの近況です。


海外News

日本以外のWebtoon周り、失速を伝えられる報が増えています。海賊版の影響も軽視できません。


タイトル訳:カスタマイズ型レコメンデーション導入 Naver Webtoon 利用者当たり決済額8.8%増加。似顔絵やウェブトゥーンキャラクターとのチャット 有料AIサービスも人気を集めている。

タイトル訳:WEBTOON Entertainment、ウェブコミック商品の新しいオンライン販売サイト「WEBTOON Shop」をオープン

タイトル訳:「ウェブトゥーン産業人材養成実績」韓国コンテンツ振興院、ウェブトゥーンエキスパートプログラム

こうした細かい施策の積み重ねを見ると、正念場で踏ん張っているところという様子も見えます。


タイトル:「コンテンツIPマーケット」ソウルで開幕 国内外90社参加

タイトル訳:ネイバーウェブトゥーンは創造の自由と責任あるウェブトゥーンプラットフォームを約束
「異世界のポンポンマン」、女性蔑視をめぐるネット論争で地元ウェブ漫画コンテストで優勝できず

コンテンツIPマーケットの開催の中で、作品作りは腰を据えて長い目で見る必要が訴えられています。この辺も、事業に沢山のプレイヤーが参加して、追い追い気づいていくところですからね。韓国Webtoonは、ここから「掘る期間」に入るのかなーと。


タイトル訳:私は漫画家になるという夢を追うために金融の仕事をやめました。プレゼン資料を使って、それが良いアイデアだと両親を説得しました。

アメリカにもこういう、報酬の高い仕事辞めてエンタメに行く人出て来てるんですね。


タイトル訳:DCが縦スクロールウェブトゥーンシリーズ「DC GO」を開始

アメコミのWebtoon連載始動は、だいぶ定着化しましたね。


海賊発祥地に近いからと言って、ダメなものはダメです。


珍しいブラジルの話題です。400億円市場とか。
中南米でも日系移民が多く、日本コンテンツが浸透していると聞きます。


libroさんの北米エンタメニュースまとめです。

タイトル訳:サウスカロライナ州の学区で『暗殺教室』の漫画が禁止される

タイトル訳:EveryLibraryは、米国の選挙結果が図書館にとってさらなる不確実性を意味すると警告している

焚書、ひたひた来ますね。こっち見て欲しくないですね。


AI・画像生成関連

内容そのものは、5月に発表されたものですが、これが権利者にとってどうなのか?という観点でまとまたものだそうです。

知財戦略本部: AI時代の知的財産権検討会 中間とりまとめの手引き(権利者向け)より

「学習しているデータの中に、絵そのものが保持されているわけではない」と明言がありますね。それはそうなんでしょうね。

その後のページで「この点、AIの学習段階に注目しますと、法律で許容される範囲内において、権利者の作品をAI学習用に利用されることは、利用者から許諾の求めが無い場合でも、原則として、権利の侵害には当たりません。」とも明言されています。
クリエイターのメンタルとの折り合いがー……ですね。


個人的には、ツールによって世の中が便利になると、人間はもっと忙しくなるの法則が、もうそろそろ見えて来るんじゃないかなと。ほんと、法と気持ちの折り合いがですね。


Loraの使用が推奨されていますね。大丈夫でしょうか。こうした取組の際は、現時点での問題点に対する説明は必須かなぁと。


今週のセール・キャンペーン・新人賞、取組等

リアル書店フェアです。

セール対象作を全部持ってましたw

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記事のみ紹介


告知関連

自分の個人会社(マスケット合同会社)でスポンサーさせていただきました。

筆者単著「漫画ビジネス」クロスメディアパブリッシングより発売中です!

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菊池健
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