モジュラー変換が一次分数変換を作るやつ

さらっと流されたけどどこにも載っていなかったので。導出は簡単だった。どこにも載っていない理由がわかったくらいには。普通にちゃんと手動かすだけ。


モジュラー変換

トーラスは以下の同一視

$$
  z\sim z+2\pi ,\quad z\sim z+2\pi \tau
$$

で作られる。変数$${\tau\in\mathbb{C}}$$によってトーラスは特徴付けられる。この変数はトーラスの潰れ具合を表す。このようにパラメタ付けられた共形的に同値でないトーラスの空間をモジュライ空間という。$${\tau}$$はTeichüllerパラメータまたはモジュライやその複数形であるモジュラスなどと呼ぶ。

さて、このうちで同じトーラスに対応する$${\tau}$$が存在する。このトーラスを変えない$${\tau}$$の変換を$${T,S}$$で表し、これをモジュラー変換という。

  • $${T:\tau\to \tau+1}$$ これは明らかに同じものを与える。

$$
z\sim z+2\pi ,\quad z\sim z+2\pi(\tau+1)= z+2\pi+2\pi\tau \sim z+2\pi\tau
$$

  • $${S:\tau\to -1/\tau}$$ 反転を与える。例えば純虚数$${\tau = ia}$$において変換は$${\tau\to i/a}$$なので、スケールで戻せる。

この$${T,S}$$を組み合わせることで次のような一次分数変換を作り出す

$$
  \tau \to \frac{a\tau+b}{c\tau+d},\quad \mathrm{with}\, ad-bc=1
$$

これはつまり$${SL(2,\mathbb{Z})}$$変換であり、トーラスはこのもとで不変である。本当は符号反転も同一なので$${PSL(2,\mathbb{Z})=SL(2,\mathbb{Z})/\mathbb{Z}_{2}}$$だけど。よってトーラスのモジュライ空間$${\mathcal{M}}$$は

$$
\mathcal{M}\cong \mathbb{C}/SL(2,\mathbb{Z})
$$

である(詳しくはPolchinski Vol.1やDavid TongのLecture notesなどを参照)。

証明(?)

$${T}$$を$${a}$$回行ったとする。回数なので$${a\in \mathbb{Z}}$$である。

$$
T^{a}:\tau\to \tau+a
$$

これに$${S}$$を作用させると

$$
S\circ T^{a}:\tau \to -\frac{1}{z+a}
$$

これについて同様に$${b,c\in\mathbb{Z}}$$を用いて変換をする。

$$
\begin{align*}
T^{b}\circ S\circ T^{a}:\tau &\to -\frac{1}{z+a}+b=\frac{bz+ab-1}{z+a}\\
S\circ T^{b}\circ S\circ T^{a}:\tau &\to -\frac{z+a}{bz+ab-1}\\
T^{c}\circ S\circ T^{b}\circ S\circ T^{a}:\tau &\to -\frac{z+a}{bz+ab-1}+c=\frac{(bc-1)z+abc-c-a}{bz+ab-1}
\end{align*}
$$

ここで一次分数変換の形に合うように

$$
\alpha=bc-1,\quad \beta=abc-c-a, \quad \gamma=b,\quad \delta=ab-1
$$

とおくと、一般の変換として

$$
\tau \to \frac{\alpha \tau +\beta}{\gamma \tau + \delta}
$$

を作り出すことがわかる。ここで$${a,b,c\in\mathbb{Z}}$$なので$${\alpha,\beta,\gamma,\delta\in\mathbb{Z}}$$である。さらに

$$
\begin{align*}
\alpha \delta-\beta\gamma&=(bc-1)(ab-1)-(abc-c-a)b\\
&=ab^{2}c-bc-ab+1-ab^{2}c+bc+ab\\
&=1
\end{align*}
$$

より$${\alpha \delta-\beta\gamma=1}$$となることも示される。したがってこれらの変換が$${SL(2,\mathbb{Z})}$$を生成することがわかる。

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