JT重力をやってみよう-古典解2(ディラトンの解3,真空)

前回求めた共形ゲージの表示を解いていきます。行間を埋める議論に慶應のM君から大きな助けをいただきました。

$$
\begin{align*}
  -e^{2\omega}\partial_{u}(e^{-2\omega}\partial_{u}\Phi)&=8\pi G_{N}T_{uu}& (1)\\
  -e^{2\omega}\partial_{v}(e^{-2\omega}\partial_{v}\Phi)&=8\pi G_{N}T_{vv}& (2)\\
  2\partial_{u}\partial_{v}\Phi+e^{2\omega}\Phi&=16\pi G_{N}T_{uv}& (3)
\end{align*}
$$

まず添字をすべて$${U,V}$$と置き換えて考えます。このとき

$$
e^{2\omega}=\frac{4}{(U-V)^{2}}
$$

です。そのまま解くよりも$${\Phi(U,V)}$$を次のように置き換えてやると便利です。

$$
\Phi = \frac{\hat{\Phi}(U,V)}{U-V}
$$

これらをすべて代入して整理すると

$$
\begin{align*}
  -\frac{1}{U-V}\partial_{U}^{2}\hat{\Phi}&=8\pi G_{N}T_{UU}& (1)\\
-\frac{1}{U-V}\partial_{V}^{2}\hat{\Phi}&=8\pi G_{N}T_{VV}& (2)\\
  2\partial_{u}\partial_{v}\left(\frac{\hat{\Phi}(U,V)}{U-V}\right)+\frac{4\hat{\Phi}(U,V)}{(U-V)^3}&=16\pi G_{N}T_{UV}& (3)
\end{align*}
$$

となります。まず真空における解を求めます。すなわち、$${T_{UU}=T_{VV}=T_{UV}=0}$$です。こうすると(1),(2)は

$$
\partial_{U}^{2}\hat{\Phi}=0\\
\partial_{V}^{2}\hat{\Phi}=0
$$

となって、簡単に解くことができます。この解は定数$${a,b,\mu}$$

$$
\hat{\Phi}(U,V)=a+b(U+V)-\mu UV
$$

と書けます。後の便利のために$${\mu}$$の符号を決めました。これは(3)も満たしています。

したがって真空における一般解として

$$
\Phi(U,V)=\frac{a+b(U+V)-\mu UV}{U-V}
$$

を得られました。

この解はホログラフィック境界$${U=V}$$において発散していることに注意してください(このあたりは後に述べますがカットオフなどを入れて"広がり具合"というふうに取り扱います)。

次元を解析すると、$${a}$$は長さ、$${\mu}$$は質量(エネルギー)の次元を持つことがわかります。$${\mu}$$は後にブラックホールの質量とみなされます。一方で$${b}$$は物理的な意味を持たないようです。なので、以後は$${PSL(2,\mathbb{R})}$$を用いて$${b=0}$$と置くことにします。


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