親切な暗殺② 毎週ショートショートnote
俺の腕ならば絶対に外さない。そもそも俺はプロだ。失敗は即、俺の人生が変わる。築き守ってきたものが消えていく。
「距離は」
「1100というところね」
俺の問いにジェニファーは答えた。
「次の動きはじめを捉える」
「あなたなら大丈夫よ」
右の指を添え直す。力むことなどはあろう筈も無い。呼吸を整え静かに標的を凝視する。1100の距離は相手にもこちらを索敵される距離だ。慎重にその時を待つ。
一撃で仕留める。それは俺の相手へのリスペクトでもある。あたりを必要以上に汚さず死を迎えさせる。それは親切な心だとジェニファーは言った。
敵が動いた。障害物の影からその姿の全貌を捉える。
俺は一気に指へその司令を伝えた。
シャシュ!聞きなれない音がした。相手はその気配に驚き隠れた。俺の負けだ。
「殺虫剤、カラなのに気付かなかったの?貴方もヤキが回ったものね」
ゴキの姿は消えた。
「今夜は貴方とは寝ない」
報酬はなしか……
ステップ踏むゴキが見えた様な気がした。
完410
Live And Let Die (2018 Remaster)
Paul McCartney & Wings
たらはかにさんの毎週ショートショートの企画、今週のお題2本目です。
来週から通常営業に戻る予定です。また皆さんのところへ行きます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?