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走れ!走れ!オレたち➈
天上界完結編
天界の入り口より駆けてきた白銀の猫は、「にゃっ」とお釈迦様の前で宙に舞い三回転した後に着地、頭を深く垂れたあとすぐに方位盤に飛び込んだ。
「お釈迦様!猫は、猫はいけません!お釈迦様の薬を鼠が運ぶ際に邪魔をし、結果、お釈迦様は地上界でのお命を奪われました。しかもあやつは十二支選抜試験に訪れず落ちたはず!なにゆえ今頃、スーパー何とか?などと!」
大年神は憤懣やるかたないと、お釈迦様へ直訴する。
「控えよ!大年神!!」
お釈迦様の例のパワハラ口調が出かかった。そのドスのきいた声に、大年神や他の神々、武官、従者らは思わず後ずさりする。少しお漏らししたかもしれない。
「神ともあろうものが何を古い因習にいつまでもこだわっておるのだ!私はそんなことは覚えてもおらぬ!そりゃ、あの時お腹が痛くて下痢してて薬は欲しかったさ!鼠が薬を早く持ってきてくれてたら、もう少し地上界で長生きできて、あんなことやこんなこともできたのに…と」
大年神は忘れてないじゃん…根にもってるじゃん…と思いながらも諌言するのは怖くてできなかった。
「しかし、猫が鼠に悪さをしたのは、そもそも鼠が選抜試験の日程をいじわるして嘘を教えたから猫は試験に間に合わなかった。それゆえ猫は鼠を追い回す。因果応報。私に返ってきたその因果は私が断ち切らねばならぬ!
鼠は猫を許し、猫は鼠を許し、私も猫を許し、彼にその力を分け与えた」
大年神は地上界ではまだ猫が鼠を追い回してるし…と思ったがやはり言えなかった。
「正式なメンバーではないが、地上の泰国(タイ)越国(ベトナム)では兎の代わりに猫を遣わしている。ゆえのスーパーサブ!よいですか大年神よ
彼の力を信じなさい。もうすぐ方位盤は回ります!」
大年神らはお釈迦様のパワハラ口調が穏やかになり、ほっとしたが、そうだ!肝心の方位盤の行方は!と一斉に走る彼らを見た。
その時家政婦は…いや、皆は見た。盤上を走る十二支+猫が一筋の光の環になっていく光景を。
光の環は徐々に巨大になり上方へ円錐形に変化していく。そして今度は手のようなもの、頭のようなもの、胴、足と変化し、ついには人型となる。
おおっ!一同はその光輝く人型に目を奪われ思わず歓声を上げた。
そして人型は真のジャイアントランニングをはじめた。
♬はしれー!はしれー!!オレーたーちー!!一同が叫びシャウトする。
お釈迦様もヘッドバンギングしている。ハードロックが意外に好きなのかもしれなかった。
ごおおおーと地響きが起こり、目の前の方位盤が少しづつ動き始めた。
「動く!動くぞー!!」
一同は回り始めた方位盤を見て叫ぶ。
守衛館の無限発条時計の針が一周、二週と回り始めた。
「親方様、時計が、時計が動いています!!」衛兵が武官に向かって叫んだ。
「動いた!時計が動きましたぞ、お釈迦様!!」
にっこりとほほ笑むお釈迦様。その神々しい表情に皆は三度、歓喜の声をあげ涙する。
光り輝く人型はさらにお釈迦様と瓜二つの姿にかわり、華麗に方位盤上を駆けていた。
ジャイアントランニングは奇跡を起こした。奇跡を起こしたのだった。
無限発条時計が年越しの時を刻んだ。ゆっくりと回転していた方位盤は徐々に定位置に戻り、動きを止めた。
お釈迦様に変化していた光の人型は光の輪にもどり、やがて十二支+猫の姿に戻った。
英雄の十三支たちを、大年神をはじめとする神々と武官、従者、傷つきながらもその力を振り絞った動物たちは勝鬨をあげ迎えたのだった。
エンディングテーマ【Runner (平成30年Ver.)】
サンプラザ中野くん 公式MV
走れ!走れ!オレたち①
走れ!走れ!オレたち②
走れ!走れ!オレたち③
走れ!走れ!オレたち④
走れ!走れ!オレたち⑤
走れ!走れ!オレたち⑥
走れ!走れ!オレたち⑦加筆修正版
走れ!走れ!オレたち⑧