アナログ巌流島
「あれが巌流島ですか」
助手の佐々木は関門海峡の穏やかな波と潮風を受けながら灌漑深げに島をじっと眺める宝田教授に聞いた。
「そうだ。君の祖先、巌流小次郎と宮本武蔵が決戦の場としたところだよ」
「え、教授。今、何と言いました?」
「君の祖先の……」
「僕の祖先が小次郎なんですか?」
「え、違うの?」
「なんでそんな話になるんです」
「いや、だって山口のシンポジウムの帰りに巌流島見たいってあんなに言う佐々木君だからてっきり……」
「ウチは爺ちゃんが養子で佐々木姓名乗ってるんで元々は佐々木じゃないですよ」
「なんだ、いや、マジかよ」
「マジって……」
「つまらん。これで今夜の余興は台無しだ」
「なんですか? 余興って」
「小次郎の燕返しの軌道と武蔵の小次郎に対しての一撃を3Dシミュレーションして歴史的戦いの勝敗の分岐を解説しようと…… 佐々木君!言うのが遅いぞ!」
「それ武蔵の方です」
「履歴書に家系図ついてりゃ」
「佐々木だけで類推するかな……」
完410
※類推(アナロジー)アナログの英語源をあてはめました。
1987年10月4日に巌流島で行われたアントニオ猪木とマサ斎藤の一戦は2時間を超える激闘の末アントニオ猪木が勝利しました。TVでは確か最後まで放送できなかった一戦だったと思いますが、モハメド・アリ戦と同じく興奮して観たのを思い出します。
アントニオ猪木 入場テーマ曲 炎のファイター
今でも仕事に行くのがしんどい時は、この曲を通勤途中でたまに聞くことがあります。頑張ろうと思う昭和世代の男子です。
お休みしていた期間に出されていた、たらはかにさんの毎週ショートショートnoteの企画お題「アナログ巌流島」をお借りしました。