世界はここにある⑪ 三佳篇㈣
ウォルフ・ヘンドリッヒに案内され、三佳とサツキはスランデント森林公園の中を歩いていた。ヨーロッパ・ブナとオークが原生のままに並ぶその光景を初めて見る三佳は、昨日まで未来の事ばかりを話題にしてきたシンポジウムでの期待も、樹々の静かで崇高にも感じるその存在の前には大した進歩ではないような気がしていた。それらの木は三佳とサツキが二人で腕を回しても手が届かないであろう太さと、20m以上はあろうかと思われるまっすぐ伸びる幹にはそれに沿った細めの枝が空を受ける網のように伸び、真新