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ラウール at TGC 2024S/S そしてラウール不在の2024A/W


2024年9月7日  TGC2024 A/W


その日、さいたまスーパーアリーナには
たくさんのラウ担が集結していた。

そしてそれぞれが広い会場のあちこちで、
おそらく同じ思いを抱え、
ステージを見つめていた。


いつもなら1週間前には「ラウール出演決定!」のお知らせがあって
ビジュアルやティザー映像が公開されていたけれど

今回はなんのお知らせもなく
出るとも、出ないとも、なんの情報も得られないまま。


半年前に頑張って取ったチケット。
公式リセールの期間はとっくに終わっていて
どうすることもできない。


出ると言われてないけど、出ないとも言われてない。
今更だけどシークレット枠で出るのかも?

そのわずかな希望だけを胸にここまで来た。

「こんな思いをしてるのは自分だけじゃない。」

その気持ちだけで、私はその状況を飲み込んでいた。


目情


TGCが始まりしばらく経った頃。

その情報は、客席にいる私たちの間を
あっという間に駆け巡った。


ラウールは今、キャッチミーイフユーキャン
(岩本照くん主演のミュージカル)を観に行っている。


いつだったか、ラウールは言ってたよね。
「目撃情報って信じちゃダメですよ、
ああいうのはだいたい間違ってるから…」

ラウールが毛嫌いしていたその目情によって、
「ラウールは今日のTGCに出ない」
ということがほぼ確実になった。


ラウールが岩本くんの舞台を観に行けば、
Snow Manのファンに絶対に見つかる。
そしたら絶対に目情が上がる。

それがTGC当日なら、
ラウールがTGCに出ないことをラウ担に知らせることになる。

いつかはこういう時がくると思っていた。

そもそも毎年出る約束がされていたわけでもなかった。

それでも、主演映画のプロモでテレビ出演したときも、
それスノでも、
ラウールの代名詞のようにTGCのパフォーマンスが紹介されていて
TGC公式のアンケートにも、ラウールの出演を願う声がたくさん届けられていた。

ラウールを見るためにこんなにたくさんの人がチケットを取っている状況で、なんの説明もなくパタっと連続出演が途切れるなんて。

まさか今だなんて。


帰りたい…
でも帰れない…
22時出発の夜行バスを予約してしまったから…


ラウールはキャッチミーを見に行っている。
つまりラウールは今日、オフである。

他の仕事が入ってTGCに出られない
というわけじゃない。

 
今、彼はどんなことを考えているんだろう。

もうTGCは卒業したんだろうか。

出るつもりでいたのにオファーがなかったんだろうか。

たくさんのラウ担がさいたまに集まっていることを
どう思っているんだろう。


パリのモデル事務所と契約したから、国内のファッションショーに出られないのかな。

腰を痛めていたから練習できなかったのかな。
映画の撮影、プロモ、アルバムやツアーの準備その他諸々で忙しすぎたのかな。

出ないって、いつから決まっていたんだろう。

たくさんの想いが頭の中をぐるぐるぐるぐる回っていた。
いくら考えたって答えが出ることなどないのに。


その日の夜
岩本くんの楽屋の前で撮ったラウールと岩本くんのツーショット写真がアップされた。

ラウールのブログが更新されることはなく
誰も、一切TGCの話題に触れることなく
ラウ担の喪失感など気にしていないみたいに
いつもの日常が過ぎていった。


9月22日、PFWのキャスティングに来ているというラウールがパリからインスタライブをしてくれたときも、
TGCの話題は出なかった。

「もう話し忘れたことなかったかな」
と逡巡するラウールの脳裏に
「TGC」の3文字は
浮かんだのだろうか。


TGC  2024年S/S


今年、2024年3月2日
代々木第一体育館。

ラウール最後のTGCになったのかもしれない、
あのステージを現場で見られて本当によかった。

練りに、練られたパフォーマンスだったと思う。


2月12日、
ラウールは突然金髪姿でテレビに出演し、
私たちを驚かせた。

しかし、ラウールがTGCに出演することが知らされた2月24日。

さらに2月27日、
TGCの前日である3月1日の日付入りのプレートを持ったラウールの写真。


黒髪である。

2月の歌番組で金髪姿を披露してから
私たちはラウールの姿を見ていなかった。


主演映画の噂はあって、それが本当なら
役作りで金髪にしたとわかるけれど
まだ正式には発表されていなかった。


3月のTGC、もしかしたら黒髪に染め直した姿で出るんだろうか?

そして、この日付は何を意味するんだろう?

ラウールから供給されるものすべてが
私たちの思考を刺激する。


彼のうまいところだ。

本番のパフォーマンスは5分程度。
けれど、そこに辿り着くまでに様々な仕掛けが用意されていた。

彼の発するもののひとつひとつに
毎回ちゃんと意味があることを、ファンは知ってる。

金髪にしたことも、3月1日の日付も、ちゃんと狙いがある。

ラウールの思考をトレースしようと必死になる。

それぞれの頭の中で、細かなヒントのピースをなんとか繋ぎ合わせて形にしようとする。

その形が正しかったのか、全くの見当違いだったのか
ステージを見るまでわからない。


いや、違うな。
正解など誰にも導き出せない。


どれだけ考察していても、
毎回私たちの予想を遥かに超えるものが目の前で繰り広げられて
思考は停止し
息をするのも忘れる。

暴力的ともいえる迫力で
目も耳も心も支配されたあと
私たちは脱力し、
椅子に倒れ込み
言葉を失うのだ。
痺れた頭で呆然と。

当日、オープニング映像で
これでもかというくらい美しい黒髪のラウールが
架空の国の民を魅了する。
老若男女、みんながラウールの虜になる。

その結果、嫉妬した女王に投獄されてしまうのが
TGC前日の3月1日だった。

焦ったラウールはPCで
自分の身代わりになるAIを搭載したラウールを生成しようとする。
髪型も衣装もステージの背景も自由自在に生成できる。
そうして作られ代々木第一体育館に転送されてきたのは
無機質な金髪とツヤのある肌をしたラウールだった。

主演映画の撮影のために、TGC当日は金髪になっていることを見据えて構想を練ったとしか思えない。



振り返れば、オープニング映像にラウール以外の人物が登場したのを私は初めて見た。

女王、大臣、少女たち、
ラウールが好きすぎて倒れてしまうお姉さん、
カメラマンのおじさん。

ラウールがAIを駆使して「ピュアなラウール」
を生成するシーンはアニメーションで、
絵のタッチも色合いも全く違う様々なラウールが、
ほんの数秒で何人も入れ替わる。
この短い映像に、いったいどれだけの手間と費用がかかったのだろう。


熱量


代々木第一体育館に転送され
緑のレーザー光線で作られた牢屋を出てきたラウールに、
ランウェイを逆走してくる様々な言葉がインプットされる。

音楽も
バックグラウンドで絶えず呟かれ続けている英語の言葉も
このために作られ録音されたものなのだろう。

濃く、濃く、焚かれたスモークも

すべてがこの5分間のパフォーマンスのために用意されている。

ラウールと
ラウールを見に来る観客のために。
配信で見ている世界中の人のために。

前回は会場全部が宇宙空間になった。
今回は母親の胎内のような
迸る血液のような背景に
機械がきしむような激しいビート音が響く。

職人たちが熱量を持って集まり
それぞれが質の高い仕事をするからこそ出来上がる空間。
その中心にいるのは間違いなくラウールで

彼のやりたいこと
表現したいことを実現させるために
たくさんの人の力が結集する。

作り手だけではない。

見る側の私たちも、そこにかける熱量ではおそらく負けていない。

TGCの1週間前が近づくとみんなソワソワし始める。
ラウールが出演するという知らせを密かに期待する。

見る側にとってのTGCはもっと前から始まると言っていい。
半年前にチケットをとるところから、
なんなら少しでも良い席を取るためにプレミアム会員になるところから始まっている。

辛いことがあったとしても
テレビでラウールの姿があまり見られなくても
「TGCに行けばラウに会える」
と思えば頑張れた。

半年間、それを支えに生きていけた。

本番当日が近づくと体調管理し、前日は水分摂取量に気をつけて、当日は極力席から離れない。

ざっくりしすぎてなんのヒントにもならなさそうなタイムテーブルを見て
どこでラウールが登場するのか予想する。

会場の雰囲気が明らかに変わり、
スモークが焚かれ始め、
ピリリと緊張感が走り
それはいつも唐突に始まった。

心の準備ができていない、
席につけていない観客の混乱

今日このひとときのためにすべてを調整して待っていた私たちの前に
圧倒的な存在感を放つあの人が登場する。

一瞬で、
ほんとうに一瞬で、
そこはラウールが支配する世界に変わる。
皆が総立ちになり
悲鳴のような歓声
熱狂の渦が巻き起こる。

何もかもひっくるめて

最高にエキサイティングな体験だった。



ブログ


翌、3月3日。

ラウールのブログが更新されて

珍しく、本人が全部解説してくれた。

私は自分なりに考察を重ねていたから
それは思いがけないタイミングでの答え合わせで、
「それぞれの感性を広げてほしい」と言われて
純粋に嬉しかった。

図書館に行き、
参考になる本も読み、
私なりの感性で感想をまとめ、
読んでもらえるかわからないけれど手紙を出した。

そのときは当然、次もあると思っていた。


今、改めてそのときのブログを読み返してみた。

今回はこれまで培った全てを惜しみなく出したつもりだよ^ ^

と、ラウールは書いていた。


心がズシンとした。

あれはまさに、これまでの集大成といっていいステージだった。

できること全部やり切ったといっていいと思った。


もしもラウールが
「これが最後」
と思って全力を注いだのだとしたら
なるほどそうか
と、今なら思えると思った。

TGC翌日の答え合わせにも納得できる気がした。

だとしたら
ラウールのTGCは
私たちが知らなかっただけで
半年前に完結していたのだ。
そして彼はその出来に満足している。

全てを惜しみなく出し尽くし
こういう意味だよと珍しく説明し
あとはみんなで感性を広げてねと促し

もう、彼がその先の舞台に向けて出発していたとすれば

9月のTGCに言及しないのは当然といえば当然のことなのだ。


あの日ステージ上のラウールは
私たち観客の声を直接耳にして
会場の熱気を感じ
パフォーマンスする側と観る側の
「心と心が手を繋いでいる」ことを感じた。

感じてくれていたのだ。

私はその場にいて
声を届けられて、
心で手を繋げた。

そう思うと涙が出た。

ありがとうラウール。
何度もあんなに最高の景色を見せてくれて。
ありがとう。

私も前を向かなきゃいけない。

喪失感でぽっかりと胸に空いた穴が塞がる気配はないけれど、
私はそうやって自分を納得させることにした。



9月7日、TGCの最後のアーティストステージは
爆音の音割れに耐えられず
最後まで観ることなく会場をあとにした。

夜行バスの集合場所まで歩いて5分。
近い。
集合時間まではまだ1時間以上ある。

駅の反対側にある商業施設で何か食べようかと思ったけれど
閉店まであと少しだったし
なんといっても全く食欲がない。
ちゃんとしたものを食べるのは諦めて
スーパーに入った。

口の中をパチパチさせたかったから
炭酸水と、

何もお腹に入れないのも後々辛くなりそうだったから
パンを一個だけ買って

イートインスペースでお腹に流し込む。

閉店の音楽に急かされるように外に出る。
9月に入ったというのに
うんざりするような暑さで

することもないので
若い子の真似をしてそのへんの階段に座り込む。


おわったんだなぁ…

と思った。


TGC、終わっちゃった。


楽しみにしてたなぁ。

今日、ここにくることを、ほんとに楽しみにしてた。

ラウールに会えると思ってた。

またあのパフォーマンスを見れると信じてた。


出なかったな。

出ないのに、おわったんだな。

夢ならいいのに。

寝て起きたら、全部夢だったらいいのに。


私と同じバスを待って
その辺に座ってる人たちの姿をぼんやり眺めながら、
暑さでベトベトになりながら、
ただ脱力して大きな荷物を抱き抱えていた。


翌朝家に着き
シャワーを浴びて

10時。

私はもう一度だけ、一枚だけ、
次のTGCのチケットを取った。

次も彼はきっと出ない。

でも取らずにいられなかった。

ほんのわずかな希望。

それから、
こうなったらとことん自分を痛めつけたい、
とどめをさしたい気持ちもあった。

ラウールのファンをやってたらこんなことがあった
って
歴史の1ページに
また新たなエピソードが加わってしまった。

どうせならそのエピソードを完結させたかった。


最後に


ラウールは9月にパリから2回、インスタライブをしてくれた。

1回目はおそらくランウェイが決定したあとで
2回目はランウェイを歩いたあとで

どちらも上機嫌だった。

10月に入って
新しいアルバムのユニット曲が情報解禁されて

ラウールは岩本くんとのユニット

ばちばちにかっこいいパフォーマンスを少しだけど見せてくれて

もう、先に行ってるよ

て言われてるみたいに感じた。

モデルの仕事も
Snow Manのラウールとしての仕事も
もちろん好きだ。
生き生きしているラウールの姿を見るのは
この上ない幸せだ。

でも、純度100%、ラウールが作り上げた
あの自己表現の場が失われたのかもしれないと思ったら
私は多分この先何を見せられても
心の端っこが少しギュッとなると思う。

やっぱり、
彼だけのステージが
別の形でもいいからどこかで見たい。

勝手な願いだし
叶うことはないかもしれないし
願うこと自体間違っているのかもしれないから

誰かに直接要望したり
声を大にして言うことはないけれど


これは私の気持ち。
だから私が大事に抱えて
これからも生きていこうと思う。

おわり

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