相手を追い詰める愛 ①不安型アタッチメント
数年前の事。
遊び仲間と仕事帰りに、飲みに行った。
その中のA君という友達が、「最近ストーカー被害にあっている。」
と言って、「家に帰るのが怖いから、もうちょっと飲んでいかない?」と私と友人達を引き留めた。
ある女性に、付け回されているという。よくよく聞いてみると、全くの他人ではなく、A君はその女性と一瞬付き合いかけたらしい。
写真みせて、というとA君が飲み会で撮った時の写真を見せてくれた。A君よりかなり年下で、結構かわいい子だ。清楚な感じで男性受けしそうなタイプだった。
「付き合ってあげたらいいじゃん~。」
私たちが知っている限り、A君は3年以上は彼女がいないし、ついこの前、本人自身も片思い後に大失恋して、気を落としていた事もある。
最初は彼もお付き合いの可能性に、期待を膨らませたらしい。合コンで知り合った時も、少し控えめな彼女に惹かれ、すぐに連絡先を交換した。
そして翌日。「おはよう」、「今何しているの?」、「ごはん食べた?」、などのあいさつじみたことから、独り言?と思うような、返していいのか悪いのかもわからないようなメッセージが、頻繁に届くようになる。
最初は「マメなのかな?」と思っていた。
特に週末に会うだけの付き合いで、性関係は持たなかったという。
「というか、やる気がでなかった。」
真剣な表情でA君が語る。
彼女と会っている時は、それなりに楽しい時間は過ごせるのだが、徐々に違和感を覚え始めた、のだそう。
A君が自分が好きな女優の事を話し始めた時、「知ってる、インスタでフォローしているよね?」
仕事の話をしたとき、「職場って女の人が多いの?」
時間をチェックしようとして携帯を開いたとき、のぞき込んでパスワードを見ようとした事も数回あった。
数週間後。会った後に前回とは異なり、別れ際に次の約束をしなかった。ちょっとこの子と会うのは控えようかな、と帰りがけの電車に乗りながら考えていた。
帰宅すると、
「来週も会える?」
という彼女からのメッセージ。
お腹のあたりにずっしり不快感がおしよせたA君は、勢いで相手をブロックして、就寝。
翌日は何事もなく過ごしたが、さらに翌日、彼女が朝、彼の会社の前で待ち伏せしていた(!)
会社名とか詳しく話したわけではなかったが、合コンの時に名刺を交換していた事を思い出した。まさか職場に来る?
「今は話せないから、じゃあ仕事終わりにどこそこで待ち合わせしよう。」
と相手を説得して、なんとかお引き取りいただいた。
「それでその子と会ったの?」
「いいや、もうそんなの怖くていけないじゃん。」
「だって翌日も会社来たでしょう?」
図星だったという。毎日ではないのだが、日によって朝待ち伏せされたり、帰宅時に待ち伏せされたのだという。
気のいい女性の先輩が事情を聞いて、彼女と話をしてくれて、会社訪問攻撃は一旦収まった。
だけどこれがトラウマになってしまったらしく、いま出先から自宅に帰るのも怖い、それがその時の話だった。
最近ネットフリックスで見た「私のトナカイちゃん (Baby Reindeer)」のような話だ。
https://www.chorioka.com/entry/2024/05/09/123547
このように相手を追い詰めてしまうのは、女性に限った話ではない。男性ももちろんこういう人はいて、自分自身も過去に付き合っていた彼が極度に嫉妬深かったり、ストーカー化したことがあり、一回は警察沙汰になったこともあったので、追い掛けられる側の恐怖は良くわかる。男性の場合だとそれが暴力という形なることもあり、(もちろん女性だってそうだが)注意が必要だ。
しかしこれが「不安型」という「愛着セオリー」でいわれるスタイルだと知ってから、一見幼稚にみえるこの人達の不安感について少し理解できるようになった。
いまメンタルヘルスでよく使われる「スペクトラム」(傾向というような意味)という言葉があるが、「不安型」スペクトラムだったら、ある程度の社会性は残したまま、相手といる時に不安がでるという可能性もある。ただ強弱レベルで一番最高に達しているケースの人は、コントロールが効かない不安と焦燥感で、極端な行動にでてしまうのだろう。
また、ここでは一人一人の人にある「不安型」スペクトラムについても考えていきたいと思う。
●よく見られる行動パターン
1. 自己肯定感の欠如:何度もメールを送る、電話をかけまくるなどの行動にみられる。相手の反応があって初めて自分の存在意義を見出せる。
2. 信頼感の欠如:浮気している、もしくはされると思い込む。
3. 物質的な距離感や時間が開くことへの不安:時間が開いているだけで、連絡が頻繁ではないだけで、「嫌われた」と思い込む。
4. 優柔不断
5. セルフ・アバンダメント(self-abandonment ):自己犠牲、とでもいうのだろうか。行きたい所、やりたい事があるのに、相手から否定されることが怖くて、提案ができない。自分の意見を出せない。すべて相手に合わせる。
6. すべては自分のせいだと思う:相手が元気がない、機嫌が悪いのは自分のせいだと思い込む。
あなたが相手のことが思いすぎる一心で、こんな行動をとってしまったことはなかっただろうか。
例に挙げた友人の話は、「付き合ってもいない間柄」だったのだが、夫婦、恋人同士からスタートし、相手の「不安型」行動がひどすぎて、結果別れた、という人もいると思う。
もしくはこれを読んでいる人の中で「頭ではわかっているけど、どうしても不安が打ち消せず、こういう行動をとってしまう、という人もいると思う。
今日はここまで、来週また少しずつ、不安型の人がどうやって自分と向き合っていくか、恋愛パートナーがこういう人だったら、どうしたらいいか、について書いていこうと思います。