見出し画像

モラハラで悩んでいる人へ~自己愛性パーソナリティ障害~

今は昔、私がまだ二十代の営業マンだった時の事。ある日、自分の先輩から「昨日奥さんから朝の四時まで正座させられてから、眠くて」と笑顔で言われたことがあり、「え?」と絶句したことがあった。
たしか、その時先輩も20代後半ぐらいだったはずだ。意外に若くして結婚していらっしゃるんだな~と思っていた。面倒見がよく、辛抱強い人で、派遣会社の営業だったのだが、派遣社員さんたちや、クライアント企業からも慕われていた。
「だ、大丈夫ですか?」
「うん…。たぶんまだ子供も小さいからさ、奥さんもストレスが溜まるんだと思うんだ~。」
と言った彼の横顔は、笑顔とは裏腹に悲しげだった。

その他にも先輩の話の中には、「レッドフラッグ」(危険信号)を匂わせる事実が多々あった。その一つは毎月の小遣いがものすごく限られている、という事実だ。たしか三十万ぐらいの給料なのに1万円とか5千円とか、ありえない額だった。(今となっては多少うろ覚えだが)
そんな先輩が、私が誕生日だとわかった瞬間に、お昼に回転ずしに連れて行ってくれた。今でも思い出すと胸が痛くなる。
「いいですよ!だって先輩小遣い●●円じゃないですか!」(っていう私も私だが)と遠慮する私に、いいよ、いいよと気前よくおごってくれた。本当に優しい人だった。
今だからわかるが、そういう優しい人は特に「自己愛性パーソナリティ障害」を病むパートナーの犠牲になりやすい。
 
恋愛、結婚という関係は、時には周囲から孤立し、閉ざされた世界であることが多い。
モラハラ、DVという言葉は昨今、大分浸透してきたが、自分がいざ、そんな恋愛や結婚の渦中にいても気づかないことが多い。それはなぜなのか。
 
さきほどの先輩の話ではないが、こんな事に思い当たる節はないだろうか。

・経済的に孤立させられている。「小遣いが異常に少ない」「仕事をさせてもらえない」「逆に仕事をするように強要させられ、給与を相手に全額渡すように言われる」
・自由な社交生活がない。「家族や友達と自由に会うことを制限される」「元カレ、元カノの写真を削除するように強要される」「メールや、メッセージを全部チェックされる」

・自由に外出できない。厳しい門限、行動範囲の規制を強いられる。

・自分の意見を言えない環境にいる。自分がやりたいこと、趣味や興味を継続することができない。

・このタイプはどのような場合でも批判を受け入れないので、建設的な批判もできない。例えば浪費、ギャンブル、浮気など、相手がしている事に対して、「やめてほしい」と言う自由は与えられない。

・「お前は価値がない人間だ」「馬鹿だ」などと、過小評価してくる。

・自分の性的欲求に応じるよう、強要される。(逆にセックスレスを強要することも。)

 
また、上の私の先輩の発言にも十分注意してほしい。
「うん…。たぶんまだ子供も小さいからさ、奥さんもストレスが溜まるんだと思うんだ~。」
これは相手を思いやる言葉だ。
自己愛性パーソナリティ障害のパートナーは、相手に「自分は悪くない」と思わせることができる。
今の自分なら先輩に、
「先輩。奥さんが、子供が小さいから、ストレスが溜まるのは事実だと思います。だけど、先輩を四時まで正座をさせる言い訳にしてはいけないです。」
と言えたかもしれない。(難しいけど)
自己愛性パーソナリティ障害は英語ではNarcissistic Personality Disorderといわれるが、日本語のナルシストとは意味が若干異なり、自己中心的な己だけを愛する、そのために”他人の気持ちや価値観を無視する人格障害”とされている。
「自分は悪くない。」「こうなるのはお前のせいだ。」「社会のせいだ。」と自分以外の何かに責任転嫁する。そしてそれをパートナーに信じ込ませる。
 
また、この人達は、社会的に高い地位にいる人である場合もある。会社の経営者、芸能人やアーティスト、政治家、医者、弁護士、大学教授などであるかもしれない。
自己の過大評価(ただ自信がある、というのとは違うが)は目標を達成することに有利に働くことがあるからだ。
上記の「自分は悪くない」の理由付けは、こういう「社会で認められている」という隠れミノがあると、ますます強い説得力を持つ。「これだけ外部の人から認められているんだから、間違っているはずはない。」と言われたら、もともと素直な心優しいパートナーはなすすべがなくなる。「こんなひどい事を言われたり、自由を奪われたりするなんておかしい」と当初感じた、健全な自分の判断を見誤ってしまうかもしれない。

一度こんな相手の罠にはまり、結婚や子供ができてしまった後、そこから抜け出す事は非常に難しい。また、万が一相手が別の浮気相手をみつけて(もしくは見方によっては新たなる被害者)去っていけば、ある意味ラッキーと思いたくなるが、こんな時自己愛性パーソナリティ障害夫や妻は、相手がもっともダメージを受ける形で去っていく事が多いので、最後まで気はぬけない。
実は自己愛性パーソナリティ障害について書いている時、日本語の文献ではメンタルヘルス観点の記事より、弁護士事務所からの記事が多くあったのも空恐ろしい事実だった。本当に自分被害者だと感じたら、できるだけ周りの多くの人に相談し、そして法律の専門家にも意見を聞いてみてほしい。
なにせ彼らは自分に問題があると思っていないので、精神科医から本人達が直で診断されたり、治療を受ける事はほぼ皆無だからだ。まずは今日のこの記事が多くの悩める人に届けばいいなと思っています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?