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胃瘻の現実

特養で働く私から見た胃瘻の現実。

食事を摂れなくなった高齢者に胃瘻を作ることを勧めないでほしいと心から思う。

胃瘻で経管栄養が始まり、栄養状態が改善されれば、体の具合はある程度良くなりますが、それは食べる楽しみを奪われて何年も生きることにつながります。     
高齢者の胃瘻造設後の平均余命は3年。もちろん平均だからもっと長い方も。

栄養状態が良くなれば、また食べられるようになると望みをもつ方もいますが、私が特養で働いた6年間で、体の状態が良くなって使わなくて済むようになった人は居ません。

       経口摂取している方なら、体調が優れないときは飲食が進まないという不調のサインを介助者が見つけることができる。

しかし、 私が働く現場で胃瘻から栄養をしているほぼ全ての高齢者は、ご自身の意思を伝えることが困難なので、体調が悪くても栄養剤を流し込まれることになり、胃腸が受けつけず嘔吐して苦しい思いをして初めて介護者は具合が悪いことに気づくパターンがほとんど。

       胃瘻の人は、栄養剤を注入するためのお腹に固定した小さなチューブ(ペグ)を入れ替える処置が必要になります。        

  半年に1度、病院の内視鏡室で動かないように手足を押さえて、胃カメラ下での処置。             手足に内出血、涙を流して目を真っ赤にして病院から戻って来ます。

      胃瘻の人は、飲み込む力が弱く誤嚥性肺炎を何度か経験しているため、普段でも唾液や気道内分泌物が増えます。

なので窒息をしないよう痰吸引をしなければならない状態にある方が多い。       

胃瘻の人が5人いたら、痰吸引が必要な人は4人はいます。

     1日に何度も口や鼻の穴から喉の奥まで管を入れて痰吸引をします。  毎回の激痛。苦しそうな顔をして、涙を流されます。   

 「ごめんなさい、痛いですよね、辛いね。」

毎回謝りながらやっています。

生きるために必要な処置だから、止めることができません。

    介護士さんが丁寧に体位交換やオムツ交換をして褥瘡は予防できても、体の拘縮を止めることはできないから、全ての関節は固まり手足も曲がり胎児のような姿になります。カチカチに固まった体の関節が痛まないように、ケガをさせないように介護士さんは四苦八苦して体の保清や更衣をしています。


植物状態で苦しさや痛みに堪えるしかない生活を何年も過ごしている。

きっとなりたくてこうなった訳ではないんだろう。もしかしたら自分もこうなるのかも知れない。

   だから、私は自分が同じ状態になったらどうしてほしいか考えてケアをする。眼脂をとり、痰を取り、体を清潔に、痛くないように丁寧に。

どんなケアでも受け入れるしかないのなら、できるかぎりのことをしようと思う。

しかし、

      「お父さん、お母さんが生きていることが私の生きがい。」

という言葉には怒りを覚える。


じゃあ、そのお父さん、おかあさんの意思はどうなるの?

もしご両親が飲食できなくなり、胃瘻の増設をするか否か迷われている方がいたら、作ろうとしている医療従事者の説明を聞くだけでなく、その後に過ごす予定の介護現場の実際を見てほしいなと思います。

    

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