見出し画像

卓越した演奏テクニックに世界が注目       イスラム信仰のガールズハードロックバンド『Voice of Baceprot』(バチェ・プロット)

マルシャ(Fidda Marsya Kurnia・ボーカル&ギター)
ウィディ(Widi Rahmawati・ベース)
シッティ(Euis Siti Aisyah・ドラム)の3名で2014年にインドネシアで結成されたガールズハードロックバンド。
多民族国家のインドネシアで彼女たちはスンダ民族に属するが、バンド名『Baceprot』とはスンダ語で『うるさい・騒々しい』の意味で彼女たちのパワフルな演奏になぞらえたもの。

卓越した演奏もさることながら、イスラム教徒の女性が着用するヒジャブを被った姿が示すように、彼女たちは敬虔なイスラム教徒である。イスラムの教えでは「女性が婚姻関係にない男性の凌辱から身を守るためにヒジャブが必要」とされてはいるものの、規制の度合いには地域差があり、インドネシアの法律では着用の義務はない。そのせいか特にジャカルタのような都会で暮らす若い女性はヒジャブ着用者が極端に少ない。一方、三名のメンバーは、西ジャワ州の州都バンドゥンから東へ約50キロのガルト市からさらに車で2時間ほどの山間部に入った小さなシンガラジャ村出身の幼なじみ。イスラム教徒が85%のインドネシアで、西ジャワ州は97%で特に保守的なエリアで、さらにバンドゥンを離れるほど信仰の敬虔度合は高まる。彼女たちのヒジャブ姿は、そんな環境と深く関係している。敬虔なムスリムの女性にとって外出時のヒジャブ着用は日常生活で欠かせない。アフガニスタンなどイスラム体制が強くなるとヒジャブ着用が常識で、それを性差別とする考え方もある。差別が、西洋的価値観によるものとする権力者側の意見はさておき、イスタム原理主義的になれば、エンタメの西洋音楽をタブー視する傾向が強くなる。かつて彼女たちもバンド活動を心良く思っていない人から多くの嫌がらせを受けことを告白している。

学校のPCで偶然見たSystem of a Downに影響を受けてバンドを結成。学校生活で溜まったストレス発散にハードロックにのめり込む一方で「悪魔の音楽をやめろ」と書かれた紙で包まれた石を投げらつけられたり、Marsyaの母親が営む店の窓が壊されたり、マネージャーにはバンド解散の圧力をかける脅迫電話もかかってきたそうだ。しかしMarsyaは「イスラム教は私たちに喜びと強さを与えてくれる。ヒジャブは選択の余地なく身につけるもので平和と美しさの象徴」と宗教に対する思いを伝えている。バンド結成は2014年。当時はMarsyaとSitiが14歳、Widiは15歳の時。主に世界的に人気のロックバンドをカバー。youtube動画にアップしたのをきっかけに一気に注目されるようになった。敬虔なイスラム教徒を意味するヒジャブ姿と卓越した演奏力が、世界中のロックファンを魅了する。
やがて、ニューヨークタイムズ、NPR、BBC、DW、ガーディアンなど、世界中の多くのメディアで話題となり、オンラインページで特集が組まれるまでになる。

●デビュー前の貴重な映像。Red Hot Chili Peppersのカバー曲
『By The Way 』

その後、満を持して2018年に『School Revolution』でデビュー。

2021年8月には世界中のハードロックファンに絶賛されたシングル『God, Allow Me (Please) To Play Music(Please)』をリリース。2021年の年末には、ヨーロッパ4カ国8都市を16日間網羅する『Fight Dream Believe European Tour 2021』を敢行、熱狂的な反響を呼んだ。

『God, Allow Me (Please) To Play Music(Please)』

●2021年12月4日
ヨーロッパツアー@フランス・レンヌ

2022年3月にニューシングル『(NOT) PUBLIC PROPERTY』を発表。この曲は、彼女たち自身が世界中で女性の権利が侵害されていることへの懸念がテーマになっている。また音楽の師であり、デビュー前から彼女たちを応援し陰で支え続けた元教師でマネージャーのAbah Erzaの助けを借りずに書いた最初の楽曲でもある。

●2022年3月にリリースのPV
『(NOT) PUBLIC PROPERTY』

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?