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【短編小説】Tokyo

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私と東京についての物語
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#思い出

事実は小説より、ドラマがある④【完】

事実は小説より、ドラマがある④【完】

異常な暑さが続く今年の夏。

土曜日の朝10時というのに、平日週5で使い慣れた渋谷の改札を通った。

(体力落ちたなぁ…)

ヨレヨレしながら、スマホ片手にお目当ての初めて訪れる美容室を目指す。

幼い頃、雑誌の切り抜きを美容師さんに見せて、同じ髪型にしてほしいとお願いしたことあったよなぁ。
今やインスタで検索すりゃ、膨大な髪型データとアーティストみたいな美容師さん達の動画が溢れ出てくる。
コンビ

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事実は小説より、ドラマがある③

事実は小説より、ドラマがある③

店内はお祭り騒ぎの様な賑やかさと慌ただしさに包まれていた。

そして、本企画に当選した自分を含める地味なOL風女子達は、ミルミルと満面の笑みに変わっていた。

『可愛い〜!!』

あちらこちらで、歓声が聞こえてくる。
そして、最後は撮影スペースでカメラマンによる撮影だ。

私もあれよあれよと、Tさんによるカットは完成された。
正直、大学生の私でさえも、地元でのカットとは格が違う事を感じた。  

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事実は小説より、ドラマがある②

事実は小説より、ドラマがある②

何かに突き動かされる様な感覚って、
最近ありますか。

私は10代20代前半までは、
何かに突き動かされる感覚=直感だけが生きていく道標だった。

リスクとか、結果とか、失う物とか、そんな小難しい事、わざわざ考えなかった。

ただ、会いたいから会う
ただ、行きたいから行く 
ただ、やりたいからやる
ただ、なんか楽しそう!それだけだった。

必要な持ち物は、未知への『勇気』だけだった。

表参道には

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事実は小説より、ドラマがある①

事実は小説より、ドラマがある①

『東京に行ってみたい』
黙ってNHKを観る父にそう話しかけた
『東京は住むところじゃない』
そんな事を言われ会話は終わった。

大学時代、遠く離れた東京に憧れていた。
東京には、
素敵なカフェや今をトキメクアーティスト達がいる。
間違えではないが、それが全てだと、当時の私は純粋に思っていた。

謎に心の中には熱い希望はあるものの、何のキッカケも掴めないまま、時は過ぎていた。

そんな大学生活も残す

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