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【短編小説】Tokyo

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私と東京についての物語
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#オリジナル短編小説

黒歴史の始まり⑨

黒歴史の始まり⑨

人目も憚らず、泣きながら歩いた。
家で布団にくるまり、思う存分泣きじゃくりたい。
けれど、今は電車に乗れる状態じゃないほど涙がとめどなく溢れてくる。
私は、歩き続けるしかなかった。
人生初めて就職した職場の最終日を、いまだにふとした瞬間思い出す。

私は数週間であっけなくクビになった。

出社初日「ヤバそうな職場だなぁ、、、」
なんて思ったが、突然訪れた最終日はそれを上回る結末が用意されていた。

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社会人生活1日目⑧

社会人生活1日目⑧

不安と疑いにまみれたブラック出版社の仕事は始まった。

大柄で温厚そうなスーツ姿の男性が10時ちょうどに出社してきた。
40代くらいだろうか。
見るからに営業の仕事をしている事は、社会経験がない私にも察する事ができる。
ここ、若者向けストリートスナップ雑誌の出版社では、彼の風貌は明らかに浮いているように見えた。
私は、まだスーツ姿の男性を目の前にする事に慣れていない。失礼のないように、そして、なる

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