記事一覧
私小説【短編・男の出産】
私が変わるきっかけ、それはいつも男だった。男が私を生み育てた。そのことを私は目ざとく見つけては寄生するように帯同していった。もともとドーリスとしての才能は得て生まれてきた。その才能を生かすことは無意識にも備わっていた。最初に見たものを親と思うことと同じように、だれにも教えられずにこうして私は男に寄生しドーリスとして思うままにふるまい育てられることを喜びとしていった。
ドーリスを知っているだろうか
私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】交じり合えない原子の成れの果て
今日の主人公は陸です。私の最初から終わりまでを独占してしまうあの、最も危険な彼について最近起こったことを記録していきます。
陸の胸の中にはいつも弱さと強さが内在していて、その内在し交じり合う氷と炎がいつもいつも天高く柱のように上昇するように何かに怒りを感じています。その内情を見つめられているのはおそらく始まりから終わりまで私だけでしょう。それがまたある種の私のプライドとなり、私をこの世で力強く歩
私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】陸の暴走
永さんと付き合っていることは申しましたでしょうか?
もう昨日が明日のようであり、明日が今日のあり、時間感覚が混とんとしていますから同じことを繰り返していたとしたらどうかお許しください。
永さんと付き合うようになって、レイの束縛が激しくなりました。というよりも私が知らない部分で束縛をしているのです。知らない間に私のスマートフォンにはストーカーアプリが入れられていたり、ひとり部屋で閉じこもっていた
私小説【弟】弟の癇癪
みなとは時々癇癪を起します。どうにも自分の気持ちが言葉として伝えられないと、皿を割ったり、PCを投げつけたり、自室を崩壊寸前まで壊そうとします。大好きなミニカーも、大好きなゲーム機も何度買い替えたかわかりません。それでも、癇癪の最中でもあれは理性があるのか、壁に穴をあけるとかそういう家を壊すことはしません。
みなとの癇癪はたいてい嫉妬です。私の帰りが遅いとか、金曜日に一緒に眠ってやれないとか、男
私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】私を最も困難にする日
ご無沙汰しています。早いものですでに11月になってしまいました。私がオメガバースであると診断が下ってすでに10か月。とても困難の多い2020年となったわけですが、それよりも自分がどうしてこんなにも困難の多い人生であるか解明されたわけですから、私の中でくすぶっていた「何であるか」という不安は解消された記念すべき1年だったともいいかることができます。
さて、オメガバースの発情は月に4回新月、上弦の月
私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】同じDNA群のアルファたち
幾度かの発情を乗り越えて10月も終わろうとしています。いろいろなことがまだ落ち着くまでに時間がかかりそうだと昨日、主治医に相談しましたら、「まず誰があなたのまわりにいて、誰がどんなふうにあなたを困らせて、あなた自身が困っているのかを精査してみたらどうか。そうすることで自分の感情や発情のタイミングなんかもわかってくるだろうから」と助言いただきましたので、今日は同じDNA郡の3人について記しておこうと
もっとみる私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】10月10日の上弦の月
10月7日、ああ、あれから約一週間が過ぎたのですね。あの日はひどい一日でした。こんなところに自分を晒してしまったから罰があたったのではないかと思うほどに…。
「その症状」は6日の夜半からはじまり、私の子宮は伸縮を繰り返しあふれ出る何かに布団を汚してしまうほどで、誰かが見てやしないかと疑心暗鬼にも何度もカーテンから外を覗きました。もちろん、立てませんでしたから這いつくばって窓辺に行きました。カーテ
私小説【愛と恵みがいつまでもありますように】病としてのオメガバース
私はオメガバースです。
最初私も何かは全くわからず、インターネットで検索してみたものの「病理」として掲載されている記事がありませんでしたから大変困惑しました。
病理としてのオメガバースは主にアラブ諸国で欧米の研究者によって研究が重ねられ幾多の困難を経て科学的に根拠が示されたそうです。病名も「sex hormones peculiarity」と言い、まず日本人には珍しい病気なのだそうです。
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