TAMTAM~21st Century (DUB) Band
自分が好きなバンドの一つであるTAMTAMを紹介してみます。最近では、Fuji Rock Festival '19への出演を果たしており(2度目のフジロック出演)、ディスコグラフィーの充実やライヴ出演の回数を見ても、ますます名実共に確立されてきているように思います。一方、これまでのバンドの作品や体制、バンド単位でなくメンバー個々の別ミュージシャンや別バンドとの活動などを見ていくと、そちらでも積極的な共同制作やライヴ活動が多いこともあり、一見、その魅力は明快なひとつの実像として捉えにくい部分もあるバンドだと思います。それらは別々の方向へと拡散して揺らめいてるから、バンドにも還元されている魅力として直感的には分かりづらい...。けれど、そのようなちょっと複雑な背景も含めてとてもユニークで面白いバンド、TAMTAM。彼らについて、そのあたりの色々も感じられればという思いも込めた、一ファンからの投稿です。
(結成初期のインタビュー記事。この時点ではギターパートはYuthkeではなくRyo Kasama。)
(メジャーデビューしたての頃のインタビュー記事。バンド結成時からの軌跡を辿れる内容となっています。)
「Surround me music, Feel Good」~ルーツDUB・レゲエ
TAMTAM(旧:Tam Tam)のバンドとしてのキャリアは、2008年に早稲田大学のサークル「中南米音楽研究会」にて始まっています。当時は、先輩・後輩で一緒になってコピーバンドを組み、サークル内で活動をしていたようです。DUB・レゲエのジャンルに興味・関心・リスペクトのある人々との交流の中でバンドが結成されており、必ずしもメジャーシーンの傾向や流行の影響下にない、個性を備えて出発していると言えます。
※ちなみに地方出身(社会人になるまでずっと福岡と佐賀でした)の筆者としては、大学サークルに「中南米音楽研究会」という、一見、イメージしづらい音楽ジャンルを扱う会が存在する多様性や、大学サークル出自のバンドながら、一般のお客さんに聞いて貰えるライヴ活動ができていた点など、都会的(東京的)な物語でバンドが誕生しているなという印象です。
当初はKuro(Vo/Tp)、Junet(Ba)、Affee(Dr)、Tomomi(Key)、Ryo Kasama(Gt)というメンバーでバンドが結成され、バンド初期の時期にギターパートが脱退、後の「meteorite」でYuthkeをゲストとして迎えて以降、バンドメンバーが固定化されていったようです。
(中南米音楽研究会時代にコピーしていたというMax Romeo『Chase The Devil』とHorce Andy『Ain't No Sunshine』。)
(「Come Down Basie」(2011)収録曲『Riddim』のMVと『Puppet』のライヴ動画。そしてKuroがヴォーカルを担うきっかけとなったDry & Heavy『New Creation』。)
ところで、このバンドが扱うDUB/レゲエというジャンルは、率直に言えば現在の日本の音楽シーンで流行っているとは言い難いジャンルで、日本における代表的なミュージシャンは先に紹介したDry & Heavyや、フィッシュマンズ等が挙げられます。一時期ジャンル的に注目されていたのは1985年~2000年頃と言えるかと思いますが、テレビのような大衆的な媒体による出演などは多くないジャンルであったと言えます。
このような一風変わった個性を持ったバンドは、maoレーベルの社長でもある石本聡の目に留まったこともあり、ライヴダブPAとして石本聡が参加しつつ、活動を進めていくことになります。
(maoは、2002年に個人のインディーレーベルとして出発しており、当初はインスト音楽をメイン、途中から「DUB」もキーワードに加えつつ、【あらかじめ決められた恋人たちへ】の音源リリースといった実績をあげつつ、現在ではmao musicという合同会社へ至っている。)
結果論ではありますが、若手のミュージシャンでDUB/レゲエバンドという珍しさが、早い段階でそのジャンルで活躍しているミュージシャンなどに認知されたことも、彼らの活躍を後押しするきっかけやエネルギーとなったのではないでしょうか。
(石本聡がライヴダブPAを務める【あらかじめ決められた恋人たちへ】と【world's end girlfriend】。)
(石本聡への2016年のインタビュー。TAMTAMに関する話題はないものの、レーベルの社長でありながらダブPAもこなす一人のアーティストが関わっていたと言える。)
「and have a happy dream」~DUB/レゲエジャンルの新星として
2枚目のレコーディング作品の制作にあたっては、【フィッシュマンズ】や【LITTLE TEMPO】でのキャリアを持つHAKASE-SUNをプロデューサーに迎えて、より完成度の高い作品を目指しています。このアルバム「meteorite」(2012)は、全国流通作品としてリリースされました。
(フィッシュマンズの『むらさきの空』とLITTLE TEMPOの『Over The Rainbow』。)
「meteorite」では、『Akkeshi Dub』のような日本の町の名前や、伝統的なフレーズを象徴的に取り入れたトラックが収録されているなど、南米由来のルーツDUB/レゲエからより拡張された音楽へと歩みを進めています。また、収録曲の中でもとりわけ『Stop The Alarm』は、ピアノ伴奏と歌が印象的な作品であり、メロディーの美しさや落ち着き、高級感がありながらDUB/レゲエ的な語法も組み合わさったハイブリッドな感性が楽曲に表れています。後の作品にも繋がっていく感性の一端が特に表れている楽曲です。
(『Akkeshi Dub』のライヴ演奏。)
(Tomomi(Key)が作曲した『Stop The Alarm』。アダルト/リッチな印象ながら、ポピュラリティもあり、この時期だけでなく、これから先のバンドの音楽性をも端的に象徴していたような一曲。)
『Stop The Alarm』を作曲したTomomi(Key)は、バンド形式でライヴハウス拠点のライヴ活動をするようなミュージシャンの音楽ではなく、クラシック音楽や民謡由来のポピュラー音楽、サルサやカリプソといったジャンルからも影響を受けています。高級感がありつつ、ポピュラーソングとしての親しみやすさも両立するその作曲・演奏には、TAMTAMの音楽としてアウトプットされているものからは、一見、直接的に連想しにくいバックグラウンドにある音楽が由来しているのかもしれません。
(Mighty Spparowは、「カリプソの王様」と言われている。「カリプソ」は「レゲエ」のルーツの一つともなったと言われているジャンル。)
(エディット・ピアフはフランスのシャンソン歌手。『愛の賛歌』はマルグリッド・モノー作曲でシャンソンの代表曲。)
(『Seasons of Love』はミュージカルの有名曲。ロックミュージカル「Rent」の舞台において第2幕の幕開け、映画版ではオープニングに歌われる。)
(年末にはオーケストラによる演奏が生放送で中継される「ジルベスタコンサート」を鑑賞している。2017年末はムソルグスキー作曲・M.ラヴェル編曲の組曲「展覧会の絵」から『バーバヤガーの小屋』『キエフの大門』。)
(【シルク・ドゥ・ソレイユ】はカナダ発祥のエンターテイメント集団として大道芸・サーカス・オペラ・ロックの表現を組み合わせ、大掛かりな舞台装置で公演を行う。)
TAMTAMのメンバーはそれぞれが個性的な音楽への志向/嗜好を持っており、それらが化合(化学変化)する上で、DUB/レゲエというジャンル/フォーマットが相性の良い媒介となったバンドとも言えます。その時々のインタビュー記事やそれぞれの活動や発信を追っていくと、驚くほど多様な窓(レファレンス)をのぞき見ることになります。
(「meteorite」リリース後のインタビュー記事。アルバムタイトルがKuroとJunetのSF好きから由来したことなどが語られている。そして『Akkeshi Dub』のベースラインモチーフとなった『厚岸音頭』、Junetが影響を受けた【Audio Active】。)
(「meteorite」リリース後の作品レビュー。)
(「meteorite」は、ダブPA石本さんによって全曲DUBアレンジが施されたアレンジバージョンも存在している。)
さらに、アルバムリリース後には、フジロックフェスティバル2013のROOKIE A GO GOに出演し、観客投票により1位を獲得します。まさに国内のDUB/レゲエジャンルにおける新星として、注目を集めていったと言えるでしょう。
「ALL I NEED IS HIGH」~発見されたポピュラリティ
全国流通のアルバムのリリースと日本の主要な音楽フェスであるフジロックへの出演を果たすという成果を遂げたバンドは、ミニアルバム「Polarize」(2013)をリリースします。それに伴い、タイトルナンバーである『Polarize』のMVが解禁されると、さらに話題になりました。色彩の少ない世界観で、映写機によってうつされた影絵(メンバーのシルエットなど)が回転することでパラパラ漫画のようにアクションを起こします。スタイリッシュでありながら、古風な演出は奇妙でもあり、印象的な作品です。
(『Polarize』のMV。)
筆者がTAMTAMを聴くようになったのはこの時からでした。SNS(Twitter)でBase Ball Bearの小出祐介さんが「今、日本で一番かっこいいバンドだと思う。」という旨のツイートと『Polarize』のMV動画を参照されていたのをきっかけに、DUB/レゲエミュージックというジャンルも含めて注目していくことになりました。(また、この時期のBase Ball Bearのライヴでは開園前SEの一つとして「Polarize」収録の『Quiet Town』を選ばれていました。)
(TAMTAMにコメントを寄せている小出祐介さんが率いるBase Ball Bearは、DUB/レゲエ要素の入った作品もいくつか発表している。『Beautiful Wall(Dub)』『LOVE SICK』『スローモーションをもう一度』など。)
また、ライヴでは『Hero』でベースのJunetがベース演奏と同時に「Hothand」というガジェットを使ってエフェクトをかけるなど、ライヴ時ならではの視覚的アクションを伴う出音を出していたり、『Hippopotamus』では、ダブエフェクトによる反復と増幅など、専属ダブPAがいる長所もより活かしたフィジカルでアクチュアルなライヴ演出を行うバンドへと、表現手法も変化させていっていた時期のように思います。
(Junet(Ba)が、「Hothand」でかけるエフェクトのレコーディング風景。)
「ドレスコードのスカートはスーサイダル」~メジャーデビューと小林樹音の脱退というジレンマ
(シングル『CLIMAX』リリース発表とそれに伴い行われた先行カセットテープ配布のキャンペーンに関する記事。)
(『CLIMAX』リリース/メジャーデビューに伴う記事。)
「Polarize」以降、それ以前に増してポピュラリティを獲得したTAMTAMは、メジャーレーベルであるSPEEDSTAR RECORDSへと移籍します。メジャー最初のシングルとして『CLIMAX』を発表する一方、カセットテープの無料配布といった一見、時代と逆行するような企画も行っていました。
また、コンピレーション・アルバムである「KAIKOO PLANETⅢ」に『ベビー・マーマレード』を楽曲提供するなど、大々的にプロモーションされていない部分でも楽曲リリースを行っており、バンドの創作意欲や嗜好性がより明らかになっていった時期でもあったように思います。
(先に参照したmeteoriteリリース時期のインタビュー「ダブって知ってる?」では、かつてJunetは、KAIKOOを聴いて改めて音楽の道を進みたいのだと自覚したことを語っていた。)
(メジャーデビューアルバム「For Bored Dancers」(2014)リリース当時、アーティストからTAMTAMへ寄せられたコメント。そしてSOIL&PIMP SESSIONのタブゾンビさん、【クラムボン】のミトさんとの対談記事。)
(クラムボンの『サラウンド』。「テノリオン」を用いたライヴアレンジ。そしてミトさんが参照する【Mark Stewart & Maffia】がON-Uからリリースした音源の一つ『Liberty City』。)
「For Bored Dancers」では、前半の『CLIMAX』『デイドリーアンドマリー』『シューゲイズ』のアンサンブルにDUB/レゲエ的なリズムのモチーフが明快に示されているものの、後半の『フリー』以降では、ロック、エレクトロニカ、テクノといった多彩な語彙が用いられた「Polarize」以上にオルタナティブな仕上りとなっています。最後に収録された『トゥナイト』は、深いDUBエフェクトや混沌としたエンディングの物語ながら、そのヴォーカルと歌詞には、一貫して歌ものとしての美しさが発揮されており、『Stop The Alarm』や『ベビーマーマレード』に続いて、後の『ファンファーレ』『星雲ヒッチハイク』『カナダ』『夏のしらべ』といった歌もの/ポピュラーミュージックとして大衆にも共感をおぼえさせる作品です。
(Kuroのヴォーカルの存在感に対する各メンバーのアプローチや、歌詞のモチーフとなったSFコンテンツについて語られている。)
(『シューゲイズ』は、音楽ジャンルとしての「シューゲイズ」にあたらないものの、モチーフとしてタイトル及び歌詞にその固有名詞が登場するユニークな作品。)
(「For Bored Dancers」発売後~「Strange Tomorrow」発売前の期間に行われたインタビュー。)
メジャーデビューにあたって顕著になったのは、インタビュー等でも語られているフィジカル(肉体的)な側面です。この頃は日本のメジャーシーンで主流であった、いわゆる「4つ打ち」のギターロック的な内容に大きく傾倒していたように思います。特に、Yuthkeのギタープレイは、ギターソロ等のフレージングも含めて、上物としてのギターロック的な語法を積極的に前面化させているように感じます。(後述の「NEW POESY」以降では、このようなプレイスタイルからは離れていると言えます。)
また、Tomomi(Key)は、『東京カウンターポイント』の作曲を行っており、かつての『Stop The Alarm』で発揮した都会的な洒落たイメージとポップスとして親しみやすさとを両立させた鍵盤の音色・旋律を随所に散りばめています。
(ギターのYuthkeは、Radioheadのジョニー・グリーンウッドのようなアンサンブル内で機能美を発揮するタイプだけでなく、ジェフ・ベックのようなギターヒーロータイプのギタリストからも影響を受けており、懐の深いプレイスタイル。)
このようなメジャーデビュー後の活動の中で、6人の映像ディレクターと共演した「TAMTAM with 6Visualists」では、音楽WEB動画チャンネル「JAMBORiii STATION」を媒体として、東京都内のライヴハウスからライヴ配信を行いました。その映像には、配信毎に異なるヴィジュアルエフェクトを伴うという前衛的/アーティスティックな演出にもチャレンジしています。
また、アルバム収録としては後の「NEW POESY」にあたるものの、この時期から頻繁にライヴ演奏されていた『星雲ヒッチハイク』は、この配信時のみの約20分にわたるライヴアレンジバージョンを披露するなど、野心的なパフォーマンスも試みていました。
(メジャーデビュー後のフルアルバム「Strange Tomorrow」(2014)のリリースを控えた時のインタビュー出演と『エンターキー』のMV。この時点では「最新型ダブロックバンド」と紹介されており、Kuroからは「ダブとロック」「オルタナティブ」「エレクトロニカ」というワードが発言される。)
インタビューでの言葉には、「空間」という表現が出てきますが、筆者が彼らの(特にライヴ)演奏に魅力を感じている理由の一つは、空間(音響やアンサンブルの立体感)を操ることに長けている点です。
音数の多い/少ない、アンサンブルとしてここでは全員で弾く/ここではあるパートは弾かない、音量として大きくする/小さくする、ダブエフェクトで増幅する/フェードアウトするといった、電気を使い、アンプやエフェクターを使い、さらにはPAさんのような舞台上には見えていない人にもサポートを受けながら、その時々のお客さんの雰囲気やライヴ会場のポテンシャルに合わせた、生きた音楽を奏でているバンドだと思います。
特に「Strange Tomorrow」は、それまでに培われたルーツDUB/レゲエ出自ながらその時々のアクチュアルな姿勢を示してきたバンドのスタイルと、メジャーシーンへ乗り出したことで必然的に求められるバンドイメージに対してその形成をうまく実現させた作品であったと思います。この時期の彼らには「21世紀型DUB BAND」というコピーもあてられていました。
(「Strange Tomorrow」リリース後、KuroがDry & Heavyと『In Time』、Hakase-Sunと『Stop The Alarm』を共演している。DUB/レゲエジャンルのバンド/ミュージシャンという側面も継続的にアピールされた。)
……しかし、このようにして、いわゆる「スターダムを駆け上がる」かのように見えたTAMTAMは、Junetの脱退という事態に陥り、その推進力が一時的に失われることとなります。
(JunetはTAMTAM脱退後に【THE DHOLE】の結成や、【おやすみホログラム】への楽曲提供・ベースとしてバンドに参加、ソロとしては【Jittery Juckal】名義でDJとしても活動している。)
「ファンファーレが呼んでいる」~メジャーシーンからの離脱と再起動
結成からメジャーデビューまでを共に活動した主要なメンバーの脱退という問題に直面するものの、TAMTAMは活動休止など長い空白期間に陥ることはありませんでした。
ベース不在の体制を埋めるべく、スガイスウ、溝渕匠良といったサポートベースを迎えつつ、他ジャンルのアーティストたちとのコラボレーションを行い、Junet脱退後の体制の立て直しと新たな取り組みを模索する時期に入っていきました。また、メジャーデビューの時期から、荒井和弘(Tb)を度々迎えてライヴ演奏を行っており、サポートミュージシャンやゲストミュージシャンを迎えることで、目指す音楽を実現していくような体制/傾向がより強まっていくようになります。
(荒井和弘は、【箱庭の室内楽】【ゆるめるも!】の音源やライヴで活動している。)
(サポートベースとしてTAMTAMへライヴやレコーディングで参加したスガイスウが所属している【RADIACTIVE】、同じくサポートメンバーである溝渕匠良が所属している【TOURS】【THE RATEL】。)
YOSHIKAZU YOKOYAMA がWEBサイト運営を行い、脚本や作画をアーティストが担当する「Greed City」とのコラボレーションでは、漫画内にTAMTAMメンバーが登場します。また、「七つの題材」のタイトルのもと企画ライヴも行われ、TAMTAMも含めた7組のミュージシャンと出演をしており、WEB上のバーチャル空間と現実との両方に、それぞれが影響し合うようなモダンな企画でした。このようなコラボレーションを経た後に、漫画内のヒロインをモチーフにした『greed city-the theme of lisa-』を制作、「NEW POESY」に収録するに至ります。
(Greed City「七つの題材」という企画によって、TAMTAMのKuro、Affee、Tomomi、Yuthkeが漫画内のキャラクターとして登場している。)
TAMTAMのオリジナルメンバーそれぞれにもプレイヤーとしての違いが表れはじめ、Kuro(Vo,Tp)は、メジャー脱退後あたりからシンセを使用しはじめたり、Yuthke(Gt)とTomomi(Key)はギターが比較的多く前面に出ていた「Strange Tomorrow」時のスタイルから、むしろ存在感としては一歩引いて、コード感を増したり、裏メロもTomomi(キーボード2台に)やKuro(Vo,Tp,Syn)とのバランスを考え、上物として目立つものというより、内声としてより上質なものや、アンサンブルの中でのそれぞれの役割や関わりを重視した各パートのプレイへと変わっていったように思います。
リズムパートでは、Affeeはドラムの電子パッド等も含めたセッティングを工夫したり、DUBアレンジやテンポ感の早い/遅いのニュアンスを決めていくアンサンブル指揮者のようなポジションをより強めていった印象です。サポートメンバーでは、スガイスウがアンサンブル全体を俯瞰しながら、低音で全体のピースをより有機的に繋ぐようなリズムパート/裏方として質の高い演奏をする一方、溝渕匠良は音の輪郭が明瞭で縦のグルーヴ感がダイレクトに伝わりやすく、ボトム/リズム隊であること以上に、存在感のあるベースラインで立体感とグルーヴを築いていました。
このように、JUNET脱退から再起動していくTAMTAMは、メジャー活動の1年間に見られた国内音楽シーンの潮流にある程度乗っていくかのように見えた制作・ライヴ活動のパフォーマンスからは、逆に離脱していったようにも見えます。
荒井和弘、スガイスウ、溝渕匠良といったサポートメンバーを起用しての活動を続ける一方で、バンドメンバーそれぞれも他のバンドへのサポート、あるいは加入をして、むしろTAMTAM外へと活動の範囲を拡大していきました。
Kuroはコーラスや一部メインヴォーカルも担当するメンバーとして【吉田ヨウヘイグループ】への参加、Affeeは新たに結成された【Healthy Dinamite Club】のメンバーとして加わります。特にKuroは、後にリリースするアルバム「MODERN LUV」でゲストヴォーカルとして迎えることとなる入江陽のライヴにコーラスとして参加するなど、よりそれぞれの持ち味やフィールドを開拓するような活動を見せていきます。
このような再起動の最中で、TAMTAMはSPEEDSTAR RECORDSとの契約を約1年で終了し、ライヴPAとして石本聡を迎えた体制も解消するして変化していきました。メンバーそれぞれが他のバンドへ積極的に参加しながら、新たなモチベーションへと舵を切っていき、新しいアイデンティティーを獲得する一方で、対外的には、不安定な体制で活動継続をしてるバンドとして見える部分もあったように思います。
(Kuroが参加した【吉田ヨウヘイグループ】の『U.F.O』。後に正式メンバーとして加入している。※現在の【吉田ヨウヘイグループ】はまた別のメンバーで編成されている。)
(Affeeが参加している【Healthy Dinamite Club】の『ブギーナイツ』。後にサポートメンバーとして参加する機会の増えるYuta Fukai(Gt)もメンバーの一人。)
「溢れ出すMUSICは覚めないさ」~21st Century (DUB) Band
(「NEW POESY」リリース時期のKuro(Vo,Tp,Syn)とAffee(Dr)へのインタビュー記事と、インタビュー動画。改めてこの二人はプレイヤーでありつつ、重度のリスナーであることがよくわかる内容になっている。)
ジレンマを抱えた時期を乗り越えて「NEW POESY」(2016)を新たにP-VINEからリリースすることになります。本人たちがインタビューで語っているとおり、意識的に「Strange Tomorrow」と比べて静的な要素やリラックスした要素が感じられる内容の作品となりました。
特にKuroのヴォーカルはハイキーを中心としたパワフルなものでなく、低い音域も含めて声の出し方、聴かせ方に幅があり、コーラスのトラックもふんだんに重ねられており、手法として一般的によく聴かれる機能的なヴォーカルトラックというより、感覚的に気持ちよいもの採用している印象を受けます。
(「NEW POESY」制作時にリソースとなった音楽として、JAZZジャンルへの造詣が深いAffeeが好んでいるという【BADBADNOTGOOD】のライヴ動画。他に、【The Internet】【Hiatus Kaiyote】【A$AP Rocky】といったミュージシャンが挙がっている。)
また、アルバムのジャケットワークやグッズのデザイナーとしてYOSHITAKA KAWAIDAが、レコーディングエンジニアとして中村公輔が同じくこの作品以降、現在最新作の「MODERN LUV」に至るまで、タッグを組んでいます。YOSHITAKA KAWAIDAのデザインは音源のジャケットだけでなく、MVやグッズのデザインとしても取り入れられ、アーティストの象徴性を一部担っているように思います。中村公輔は、後にサポートやゲストとしてTAMTAMとも共演する入江陽や【ルルルルズ】(後に石垣陽奈(Ba)がTAMTAMのサポートとなる)のレコーディングも行っており、レコーディングエンジニアとしてだけでなく、音源発表、作曲・編曲、ライターとしての経歴や、大学/専門学校などでの講師として後続の指導も行っています。
このように、直接的にはTAMTAMメンバーとして音楽そのものを作らないものの、イメージに携わっている、あるいは音源の仕上がり部分にのみ関わっている、といった多様な形でアーティストたちがクレジットされており、TAMTAMが改めて特徴的なキャリアのアーティストたちと共同制作をはじめた時期でもあると言えます。
(YOSHITAKA KAWAIDAの2016年までのポートフォリオを閲覧することができる。「箱庭の室内楽」のアルバムジャケットのアートワークや、ライヴイベントのヴィジュアル、店舗や商品のプロモーションイラストといった作品も見られる。TAMTAMグッズでもそのデザインは定番となっている。)
(中村公輔がミックスを担当した小谷元彦のショートフィルム『Rompers』(ヴェネツィア・ビエンナーレ2003年への出展作品)と、サウンドエンジニア・サウンドプロデューサーを務めた『初音ミクと振り返るプロジェクションマッピングショー』(「東京150年祭」のプログラム)。)
ここで、この当時のMVを見ていくと『sweetcigarettes』+『自転車ジェット』のそれは、KuroとAffeeがディレクターを務めており、最初期の中南米音楽研究会時代のDIY感を思わせるアマチュア的な内容であえて映像制作されています。改めて興味・関心のあるものや、自然に求めている嗜好を制作へと反映させるようなスタンスへと、一旦回帰したともとれると思います。また、SoundCloudを用いての音源配信のような、無料コンテンツとしての発信を試みたりもしていました。
(『アンブレラ』では、ジャケットのアートワークを担当したデザイナーKAWAIDAによる文字・模様・色彩が交錯するユニークなリリックMV。『sweetcigarettes/自転車ジェット』のMVではディレクターとしてバンドメンバーのKuroとAffeeが制作を行っており、「Come Down Basie」の頃のMVのような自主製作の手触りには、原点回帰的な精神性も感じられる。)
(Soundcloudにてフリーで公開されている『星雲ヒッチハイク』。歌詞は藤子・F・不二雄の『老年期の終り』にインスピレーションされている。)
Kuroは作曲家/演奏家として明快な変化を遂げています。作曲者として自分の声を素材として扱い、リードだけでなく、様々なキャラクターのコーラスパートを作って多重録音のアンサンブルを築きつつ、トランペットやシンセでは、声ではできない質感/ニュアンスのメロディーを奏で、バンドの色彩/躍動感によりアプローチするようになっていきます。ライヴにおいても自然体でありつつ、メジャー期以上にフロントマンとしての積極性をも表現するようになりました。
(TAMTAMのKuro、【ZA FEEDO】の沖メイ、【ものんくる】の3名に対して行われたインタビュー。この後、対バンなどでより直接的に共演するようになっていく。)
『星雲ヒッチハイク』は、アルバムリリース以前から長く演奏されてきた曲でしたが、アルバム収録ではアレンジを変え、ストリングスや宮坂遼太郎を迎えたパーカッションのアレンジが添えられた、音源ならではの静謐な世界観です。SoundCloud上で無料公開されている-1016 GWmix-とも異なっており、MVではAyao Tazakiによる手描きアニメーションで制作されています。
(『星雲ヒッチハイク』のMV。Ayao Tazakiは後に『Deadisland feat. 塩谷唯摩』のMV、Kuroのソロプロジェクトによる『Portland』のMVも制作することになる。また、Teppei Kakudaの『Bite Me ft. Kuro』のイメージなども手掛けている。※Teppei Kakudaは入江陽の『おひっこし』『メイクラヴ』のトラックメイカーであり、TAMTAMの『コーヒーピープル』をリミックスしている。)
このように、「New Poesy」は、音楽以外のジャンルも含めたアーティストとのコラボレーションなど、TAMTAMやメンバーそれぞれの作家性・多面性が溢れ出す契機となった作品であるとも言えます。
(『CANADA』は発表以来長くライヴ演奏されており、TAMTAMの代表曲/ライヴの定番ラストソングとなっている。ぜひライヴで聴いてみてほしい神曲。)
「消えるから探さないで」~深化するオリジナリティとポピュラリティ
アルバム「EASYTRAVELERS mixtape」(2017)では、従来のCDという媒体ではなく、あえてカセットテープ(と配信)でのリリースを実現しました。メジャーデビュー時に行ったカセットテープの無料配布の頃からの一貫性が感じられと共に、ここであらためて彼らの作家性/スタンスが可視化された試みであったとも言えます。
また、このアルバムでは収録曲のうち、『SOUTH』『parallel penthouse』『夏のしらべ』の3曲を除いて、ヴォーカルトラックは入っているものの、ほとんどの楽曲がインストで構成された作品と言えます。もちろん、コンセプチュアルな音楽作品として、しっかり聴いて楽しむこともできる一方、BGMとしてドライヴや料理、日陰での休憩など、夏のひと時に彩りや香りを添えるような、聴かれるシーンを限定し過ぎていない許容範囲の広さを感じさせる作品です。
(カセットテープを媒体とした音源のリリースは、海外も含めたアーティストやコアな音楽ファンの間では、十分に可能性のある選択肢の一つ。ビョークのようなビッグアーティストでさえ、2019年に過去作のカセットテープ化を発表している。)
(『SOUTH』のMV。YOSHITAKA KAWAIDAのデザインを背景にしたシンプルな作品。再生環境にもよるが、動画などの画面比率と、カセットテープのプロポーションに基づくイメージの比率がマッチしている。)
この頃からAffee(Dr)は、ドラムス(ミュージシャン)としての活動以外に、柳楽光隆が編集するジャズ雑誌「JAZZ THE NEW CHAPTER」での鼎談への参加や、テキストによる記事の寄稿も行っており、重度のリスナーというだけでなく、あらゆる音楽への見識を活かしたライター的な一面も見受けられるようになります。また、TwitterではYouTube動画の引用と共に、注目しているミュージシャンを洋邦問わず取り上げ、楽曲の解説などを行い、音楽シーンをアクチュアルに観測し続けていて、TAMTAMの音楽からはにわかに連想できないようなミュージシャンやジャンルにまでアンテナを広げています。
(高橋アフィとして鼎談に参加した『Jazz The New Chapter 4』そしてYouTube動画を引用し、Twitterを使って紹介している音楽コンテンツ。ここで引用しているのは、2019年7月30日の発信。)
さらにAffeeはDJとしても活動を行うようになり、TAMTAM自主企画ライヴでは、オープニングでDJとして出演しています。(この時、エンディングのDJを務めたchiyoriとは、後に紹介する【CHIYORI with LOSTRAINS】で同じバンドメンバーである。)
(自主企画ライヴ「Fineview」の告知。TAMTAMが共演者含めてキュレーションしており、京都から参加した中村佳穂は、後にフジロックなど同じイベントで名前が並ぶことも多い。)
「それはオアシスのように」~"常に現在形"というアイデンティティー
「MODERN LUV」(2018)は、TAMTAMのこれまでの制作・ライヴ活動・他ミュージシャンとの関わりが総括的に示された内容として仕上がった作品であると言えます。
(「MODERN LUV」リリース時、KuroとAffeeへのインタビュー。Real Soundでは、【キリンジ】と共に紹介されている。)
まず、単純にゲストミュージシャンが多く、入江陽、Yuta Fukai、塩谷唯摩が参加していることで、アルバム収録曲に多様性が産み出されています。これらのゲスト達はアルバム発売以前に何かしらの機会でTAMTAMと関わりのあったミュージシャンであり、音源での参加以後も、ライヴなどで度々共演することとなります。また、GOODMOODGOKUは、『Esp』の制作にあたってTAMTAM側から参加を要望したミュージシャンであり、音源で初めて共同作業を行った後に、ライヴゲストとしても出演しています。
アルバムリリース時には「ラグジュアリー」「R&B」「JAZZ」「ヒップホップ」「ソウル」「アーバン」「サイケ」「ラウンジ」「アンビエント」といった多数のワードが寄せられており、かつてのように「TAMTAMはDUB/レゲエのジャンルだよ!」といった既存のフレームでは包括しきれない音楽性に至りました。初期の「Come Down Basie」の頃を振り返れば、かなり違うバンドに変わっていると言えます。
(GOODMOODGOKUの「色」リリース時のライヴ動画。)
(「MODERN LUV」収録曲のうち、ゲストミュージシャンを迎えた『ESP』(feat. GOODMOODGOKU)のライヴ動画と『Dead Island』(feat. 塩谷唯摩)のMV。)
以前から交流のあった入江陽らの音源参加に加えて、ライヴでもermhoiのようなソロミュージシャンとして活躍しているゲストを加えてパフォーマンスする機会を増やしています。2019年からは、長くサポートベースを担当した溝渕匠良と交代するような形で、【ルルルルズ】の石垣陽奈が参加するようになり、ライヴではさらにアンサンブルが違うものへと変化していきます。
(MODERN LUV収録曲の『Sorry Lonely Wednesday』に参加している入江陽の『わがまま』、Ermhoiは、レコーディングでは参加していないが、ライヴにゲストヴォーカルとしてコーラスで度々参加している。)
(サポートベースの石垣陽奈が所属している【ルルルルズ】の『誰もしらない』MV。)
「I do not mind the last bus time」~21世紀を奏でるバンドへ
ここまでで、最新音源までを辿ってきましたが、バンドだけでなくメンバーそれぞれの活動もさらに広がっており、現時点での直近の経歴と告知がなされた予定を見るだけでもかなり多様となっています。
まず、Kuro(Vo,Tp,Syn)は、入江陽が主催するレーベルからリリースされた【ODOLA】のデビューシングル『Metamorphse』にヴォーカルとして参加している他、【ものんくる】のサポートとして9/15(土):「あいちトリエンナーレ」のプログラムである『円頓寺デイリーライヴ』、10/4(金):岐阜柳ヶ瀬ANTS「THE GIFT」等いくつかの公演へ出演予定です。(ギターはかつて共演していた西田修大が参加の公演も。)
(Kuroは、入江陽が主宰するレーベルからリリースされた【ODOLA】の1stシングル『Metamorphose』に参加している。【ものんくる】とは音源での共同制作は行っていないものの、ゲストとして公演が決まっており、当日のパフォーマンスや今後の関わりも期待される。)
さらに、Kuroとしてソロ名義でのアルバムリリースやライヴも決定しており、Shin Sakiura、君島大空との共同制作・ライヴ共演も控えており、ソロミュージシャンとしての注目も高まっています。
(Kuroのソロプロジェクト始動決定時の記事。音源およびライヴで共演するShin Sakiura『Slide feat. maco marets 』、君島大空『散瞳』。ソロプロジェクトのアルバム収録曲のうち、先行リリースされた『Portland』は、『星雲ヒッチハイク』『Dead Island feat.塩谷唯摩』でも映像をてがけたAyao のループアニメーション。)
Yuthke(Gt)は、【UKO】や【Emerald】のライヴへゲストギターとして参加し、セットリスト全曲を演奏していたり、アートギャラリーでのサイレントディスコでDJとして出演するなど、違うスタイルのバンドや演奏形式でもコミュニケーション・融合をしています。
(UKOの『Magic』のMV。音源では別ギタリストであるものの、ライヴの際にYuthkeがバンドメンバーとして参加したようだ。)
(TAMTAMと対バンの機会が多い【Emerald】には、ギターのYuthkeが度々参加している。【Emerald】は過去に「Polarize」収録曲『Quiet Town』のカヴァーを行うなど、直接的な交流や音楽的にシンクロする部分が垣間見られる。このライヴでもYuthkeと(動画にそのシーンはないがコメント欄の詳細から確認する限り)Kuroが『触れたい光』『Quiet Town』で参加していたようだ。)
(YuthkeがSNSで告知したサイレントディスコ。ある人たちは会話を楽しみ、ある人たちはヘッドホンを装着し、音楽を鑑賞するという、近年の音楽鑑賞/音楽を絡めたイベントの多様性を物語っている。)
Affee(Dr)は、ライターとしての側面では、2018年からウェブメディアFNMNL(フェノメナル)での音楽レビュアーとして毎月5曲をセレクトしており、リスナー・レビュアーとして音楽シーンを観測し、音楽ファンへの発信をプレイヤー以外の視点・手法でも行っています。バンドでは、【CHIYORI with LOSTRAINS】のメンバーとして音源の発表を控え、さらに【レッツゴーハワイ】では主にライヴ活動を行っており、【Healty Dinamite Club】でもメンバーだったラヴアンリミテッドしまだん(Gt)、Yuta Fukai(Gt)、や「NEW POESY」収録の『星雲ヒッチハイク』でパーカッショントラックを担当した宮坂遼太郎(Per)、Kuroのソロプロジェクトにも参加している京太郎(Tp)とバンド組んで活動しています。
(高橋アフィがレビューを寄稿しているFNMNLの記事。【CHIYORI with LOSTRAINS】はライヴ中心の活動を行ってきたようだが、アルバムリリースを控えている。【レッツゴーハワイ】は現状、音源などはリリースされていないものの、東京都内のライヴ活動は行われており、引用した『Dub Passengers Psychedelic Reggae Jam July 12th 2019】には、Yuta Fukai(Gt)と堀京太郎(Tp)が【レッツゴーハワイ】からのメンバーとしてクレジットされている。)
(宮坂遼太郎は【蓮沼執太フィル】や、折坂悠太の楽曲に参加している。堀京太郎は、Kuroのソロプロジェクト曲『Portland』にも参加。)
バンドとしては、2019年5月15日~20日にかけてNext Music From Tokyo vol.14に参加し(カナダ遠征メンバーとしては、Kuro、Affee、Tomomi、石垣陽奈、Fukaiの5名)、モントリオール、トロント、バンクーバーの3都市で4公演を行っています。メンバーの一部は公演後もカナダやアメリカに滞在して、海外のミュージックシーンから多くの収穫を得てきたようです。
(カナダでのTAMTAMのライヴパフォーマンスの様子。)
カナダからの帰国後では、2019年7月26日から3日間に渡って苗場で行われたFUJI ROCK FESTIBAL '19への出演を果たしています。かつては、注目の新人としてROOKIE A GO GOのステージでしたが、2度目は、より大きな会場であるGYPSY AVALONでの出演。サポートベースは石垣陽奈、サポートギターにYuta Fukai、ゲストヴォーカル(コーラス)として塩谷唯摩とermhoiも加えての出演となりました。
この演奏は筆者も聴きにいきましたが、屋外においても、その空間的なバンドアンサンブルを活かしたパフォーマンスを発揮していて、フェスにおける純粋な楽しさに溢れつつ、海外ミュージシャンにも劣っていない上質なパフォーマンスだったと思います。『コーヒーピープル』が新曲のような語法で仕上げなおされていたり、ライヴならではのアレンジやダイナミズムがよりパワフルに伝わる『SOUTH』『Morse』、苗場の夏夜に野外で聴く『夏のしらべ』のムードや、カナダ帰国後でもあるこのタイミングでの『カナダ』の祝祭感など、彼ららしい、とても気持ちの良い演奏でした。
以上、TAMTAMについて、これまでの活動を辿りながら、その音楽性を紹介してみました。現在形の音源やライヴ活動はもちろん、DUB・レゲエミュージックに出自を持ち、メンバーの入れ替わりや、メンバーそれぞれが他のアーティストとの交流を持っていること等も含めて、興味を持つきっかけになればと思います。フィールドの広いその音楽性ゆえに、一筋縄では理解できにくい、流動的でハイブリッドな部分も持ち合わせていますが、絶妙なバランスでポピュラリティを獲得しており、まさに21世紀の音楽(「MODERN LUV」)を奏でるユニークで面白いバンドだと思います。