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ゲルハルト・リヒター展
7月6日水曜日に国立近代美術館にて開催しているリヒター展に行ってきました。
ゲルハルト・リヒターはドイツ現代美術の巨匠です。著名人が高額で彼のアートを取引しているような方なのですが、この国立近代美術館の展覧会には高齢でありながら自ら構成を考えることをされたそうです。
今回展覧会で見させてもらった作品はどれも刺激的だったのですが
特に下記の2点が気になりました。
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グレイの縞模様
1968 油彩、キャンパス
フォトペインティングとして名前をはせていた彼が新しい試みとしてグレイの模様にぼかしたように筆を走らせた作品です。遠景と近景にてまったく見方が変わります。それは筆が幾何学模様をあえて「ボケ」さすことによる揺らぎが、視覚対象として「どこを」フォーカスするかどうかによる印象変化をもたらすからです。
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ストリップ 2013~2016 デジタルプリント、アルディボンド、アクリル
解説にもありますが抽象画としての特徴は鑑賞者に思考させることを促す「装置」であります。ですから、それぞれ鑑賞者自身の経験や感性、思考の癖などにより、見方がまったく異なってくることが面白いのです。この大きなスクリーンも単純な幾何学的な要素が強い作品でありますがこのパターンを近くで見ると強調される部分が目線の位置のカラーに限定するのでまったく異なるものに見えてきます
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このシリーズは彼が80歳前後にて試み始めた作品群だそうです。葛飾北斎もそうでしたが90歳にしてようやく画家になれたと北斎は言いました。つねに画布に向かい、絵と対話をしていることをリヒターにも感じました。リヒターも高齢でも新しい試みを試し、自分への挑戦を行っている姿があるからです。片岡珠子も100歳を過ぎても絵に向かって筆を走らせています。画家の情熱とタフさを思いました。