見出し画像

かんかん橋をわたってを読んだ

画像1

えー皆さん、この作品に見覚えはありますでしょうか?
結構広告とかで見た人いると思います。
「嫁姑戦争系」の漫画ですね。そういうジャンルがあるのかは知らんけど今適当に名付けました。

これ系の漫画って、「不幸百連発!」「制裁でスカッと!」的な見出しでコンビニの漫画コーナーによく陳列されているイメージがある。で、そういう漫画って読んだ後に気分沈みそうだからあんま食指が動かない。つまり「かんかん橋を渡って」を読もうと思ったのは、「嫁姑戦争系」に抱いている暗いイメージを、上回るような好奇心を持ってしまったからなんです。

いわく、「嫁姑戦争系」の皮を被ったバトル漫画だとか、ネウロ並みに強烈な豹変をかます人物がいるだとか、主人公とその姑の関係は師弟関係へと変化していくとか。ネットサーフィンで得た真偽不明の情報だが、その真相を探るべく、この漫画の購入を決めた。10巻ぐらいでちょうど良かったしな。

先に断っておくが、変わった漫画ではあるけど「嫁姑戦争系」おなじみの陰鬱さはしっかりあるし、人によっては読むのを中断したくなるような描写もあった。読むの検討する人はそこんとこよろしく。

早速軽いあるすじ紹介をしたい。しかしその前に物語の舞台から知ってほしい。一応日本ではあるが架空の地方を舞台としており、「場所」が物語において割と重要な意味を持っている。
まず「桃坂町」というのが登場人物たちの住む町の名前。そして、町は川によって3つの地区に分けられている。穏やかで気品のある「川東(かわっと)」、明るく素直な「川南(かーなみ)」、頑固で根性のある「山背(やませ)」。「かんかん橋」は川東と川南を繋ぐ唯一の橋である。

主人公は川南生まれの女性・渋沢萌。彼女は川東生まれの男性・渋沢早菜男に嫁ぎ、今は渋沢家の嫁として暮らしている。いつも元気で明るい萌だが、一つ悩みを抱えていた。彼女がお米を炊くといつもパサパサになってしまうのだ。そのことに毎朝文句を口にする義父と義姉。そんなときはいつも義母が場を収めてくれる。萌は知的で奥ゆかしい義母のことを尊敬していた。

あーこのタイミングで下書き消失しましたクソ。

そんなある日、萌は近所のおばさんに姑に意地悪されていないか聞かれる。なんでも、姑は「川東一番のおこんじょう」という名で有名なのだそうだ。「おこんじょう」とは古い言葉で意地悪という意味で、萌はとてもじゃないがそんな話信じられなかった。しかしその夜、彼女は見てしまう。姑・渋沢不二子がタオルを水の貯まった炊飯器に浸しているのを。不二子は何の迷いもなく濡れたタオルを台所で絞り、寝床へと戻っていく。萌がいくらお米を炊いてもパサパサになってしまうのは、姑が原因だったのだ。

これが第一話の要約ですね。広告でよく見るシーンもここです。
それでまぁ、不二子のおこんじょうが萌を苦しめる描写がしばらく続くんですが、突然ある女が「あなた今4位よ」と萌に言い放つとこから、話の毛色が変わる。何の順位かというと「嫁姑番付」の順位のことで、この番付は川東で姑に虐められてる嫁たちを不幸な順にランキングしたもの。自分以外にも苦しんでいる嫁がいるってことで、萌は「この川東を変えちゃるぞ!」て感じで嫁助けに走ります。

不二子のおこんじょうを段々いなせるようになった萌。嫁助けも堂に入ってきており、まるで不二子のような人身掌握能力で嫁を救います。その過程で彼女と友情を築く番付の嫁たちとその姑。萌はいつの間にか川東のパワーバランスを左右する存在に。そして川東の「嫁姑問題」の大元ともいえる巨悪・「ご新造様」が現れ、萌にその魔の手を伸ばす。これを断固拒絶する萌。しかしご新造様は川東を裏から支配する怪物、萌はあっという間に孤独に追い込まれる。そんな彼女に手を貸したのは、なんとあの姑の不二子だった──。大体そんな話。

姑の嫌がらせとそれをいなす「嫁姑戦争系」のテンプレ?を抑えつつ、萌の嫁としての成長。不二子の隠された真意。萌と早菜男の変化する関係。個性あふれる番付の嫁たちとその姑、そして彼女らの問題がどう解決に向かうのか。遥か過去から根付いている川東の闇とそれに立ち向かう極太なストーリー。怖いもの見たさで読み始めたが、想像以上の満足感が得られた。

萌がいいキャラだった。主人公の好感ってやっぱ重要だよね。萌は他人のことを本気で想える強い人なので、彼女を慕って多くの嫁や姑が味方をするようになる。敵対していた人物でもそうだ。特に「山背のまむし」が味方になったときの心強さよ。まむしはダイ大のクロコダインですからね。あと普通にパワーが強い。女相手なら難なく拘束できるし、男も背後から後頭部をフランスパンで一振り。不二子のおこんじょうスキルをラーニングしてからの無双感といったらたまんねぇよ。

その反面、弱さも抱えている。素直な彼女は試練に直面したとき、思いっきり泣いたり怒ったり心を閉ざしてしまう。それがむしろ愛おしい。そんな弱さがあるからこそ、本気で他人を想うことができるし、不二子譲りの人身掌握術を使っても、そのことに気を病んだり、人の心を繊細に扱えるのだろう。萌の嫁としての成長物語は、本作最大の目玉です。

そしてその姑、渋沢不二子。この人もいいキャラ。とにかく誰よりも何枚も上手な人なので、萌への手の込んだおこんじょうには感心すらしてしまう。彼女を虐めるのも気に食わないから、といった幼稚な理由ではなく、ある目的を持って虐めてることが察せられるので、不思議とそこまで不快なキャラには感じなかった。萌の仕返しで虫食いだらけになった着物を身につけ、満面の笑みで歩いてるとこ好き過ぎる。

萌の夫、渋沢早菜男。本作のヒロイン。とにかく純粋な男。透き通る水晶。そんで真面目。嫁に対して真摯すぎて逆に誤解を招くぐらいクソ真面目。お前あの川東で生まれたわけないだろ。というか渋沢家に生まれたこと自体おかしい。姉どもが子宮に置いてった善性を吸い上げて生まれてきたのか。あるいは、最強の嫁を作るために不二子が用意した最強のカレくんなのか。癒しキャラすぎてどこぞの嫁に寝取られないか心配だった。

本作を題材としたギャルゲーを作ってほしいぐらい、嫁姑番付の嫁たちは個性的。2位と3位はダブルでメインヒロイン枠。どちらも強靭なメンタルと献身的な性格を持つので、王道のルートを楽しめる。4位の萌は飛ばして5位は毒舌系隠キャ。巨大な闇を抱えてるので鬱ルートを楽しみたい変人が好む。最後の最後に大変貌を遂げ、ミーハーは喜び、昔からのファンは憤る。6位は不思議ちゃん、のフリをしてラスボスの懐刀、かと思ったら本当に不思議ちゃん。キャラソンが電波に見せかけて深い歌詞だったりする。7位はツンデレヤンキー。あざとすぎて人気投票は間違いなく1位。8位は暴力。終盤で加入するタイプの強キャラ。10位は地味だがそこそこ人気がある。エロ同人の数だけで言えばトップクラス。
以上、番付嫁たちの解説でした。半分嘘です。1位と9位? 自分の目で確かめよう!

ご新造様。マジのバケモン。
この漫画自体ジャンル間違ってるだろって感じだが、コイツはマジでこの世界に生まれるべきじゃなかった。ネウロで豹変犯人枠として出るのが相応しい。実際、キレると額に切り傷のような筋が走るので豹変犯人枠。恐るべき邪悪だが、不二子とのやりとりは大怪獣バトルなので読んでて面白すぎる。かんかん橋でのバトルと、ラストの会話が特に良い。

そんな感じで楽しい仲間が勢揃い!って感じだが、そもそも土地が悪い気がする。川東の土地は呪われてる。ダンジョン仕様の住宅街とか、岸辺露伴のマナー村みたいな邸宅とか、原住民が住み着く原っぱとか。山背の人間も大概人間の強度じゃねぇしな。この町には川南にしかまともな人間はいない。

特に呪われてるというか、逆に聖地とも言えるのが「かんかん橋」。題名にもあるステージだが、本作の重要なシーンは大抵かんかん橋で起こっている。萌にとっては、故郷である川南に帰るための道であり、この橋を渡るかどうかが彼女の心模様を表現している。また、川東と川南を繋ぐ唯一の道というのも、二つの地区が極めて遠い存在であることを強調している。橋というのは違う場所と違う場所をつなげる、いわば境界なわけだが、物語の転換点がこの橋に集まりがちなのは、そういった意味合いも兼ねてのことだと思った。

以上、本作の感想でした。
あんま好き嫌いせずに色々読んでみるべきかもな〜と思った。
──けれどお前の勝利は大きい。
お前の勝利は、お前を信じて共に戦ってきた仲間の数だけある。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?