【法学部生向け】 異質にして基本 心裡留保(しんりりゅうほ) 水曜の夜会
こんばんは。lotterです。
記事をのぞいていただきありがとうございます。
このシリーズでは主に法学部の方に向けて法律知識を解説しています。
今は法律行為。過去の記事はコチラから。
今回からいよいよ具体的な民法の条文を使っての解説です!
試験に出るのはここからー・・・
今まではなんだったんだ!!と思ったアナタ!!
申し訳ないです。でも、ここまでの理解がここからじわじわくるはずなので許してください。
1.条文
(心裡留保)
第九十三条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。
条文の確認は法学にとって必須!なのでできるだけ確認していきましょう。
といっても、紙の六法をひく必要はないかなー・・・ネットで見れるもので構わないです。試験のときに戸惑うかもしれないけど・・・
全く条文に触れないうちに93条までくるというオチ。こんなこともあるので、確認しながらいきましょう!
2.キモチ
条文の内容を理解するためには、いきなり細かい部分にいくよりも、ざっくりとイメージをつかむことが重要です。
ということで民法93条のキモチ。
わい:このパソコン10万で買ってくれへん?
Aさん:(10万!?高くない!?あ、冗談か。こっちも冗談で返さなあかんやつやな)ええよー。カード使える?ww
わい:やった!ありがとう!ええやつやな!
Aさん:・・・本気だったンゴ!?こっちは冗談ゴ!!
はい、こんな感じ。
わいからの申し出をAさんは独特のノリと捉え、本心(真意)ではなくノリで返しています。
本心とは違う表示を「わざと」行った
わけですね。こういうときどうやって解決しようかな。
これが心裡留保のキモチ。
2.何が問題か?
前回話した意思表示の構造からすると、本心というのは効果意思に該当します。
効果意思がないのに、
表示だけ出てきてしまったわけです。
効果意思は、法律効果を欲する意思であり、意思表示の核となる部分です。そのため、
効果意思がない意思表示は無効になる
という一般的な考え方があります。
でも、意思表示が無効になっちゃうと、それに基づいて成立している法律行為も無効になっちゃいます。そうすると、
相手(わい)としては困ってしまう。
これをどうやって調整するかが問題なのですな。
3.心裡留保の解決
心裡留保は、まず、93条1項本文が
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。
と書いています。
心裡留保の場合、
表示に対応する効果意思がない
(本心と違う表示になっている)けど、
意思表示としては有効
ということです。これが基本形。
そして、ここ(心裡留保)では、
条文中の「真意」を「効果意思」と解釈している
ことに注意です!
なぜ本心と違う表示が有効なのか?意思表示をした側(Aさん)からすると、冗談だったのに・・・ってなりますよね?
それは、この2つが理由です。
①表示を受けた相手方(わい)の保護
②本心でない表示をわざとした方(Aさん)が悪い
相手からすると「冗談とか知らんし」ということですね。まさに口は災いの元。
でも、いつもそうなるわけではなく、例外があります。
93条1項ただし書が、
ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
と、意思表示が無効となる場合を書いていて、こっちが例外。
さっきの①と②は、相手方(わい)が、
なされた表示がAさんの本心ではないと知っている
場合にまで貫徹する必要はない
ということです。
わいがAさんの本心を知っている場合、わいを保護する必要はないですよね。なぜかって?
Aさんの表示を信頼していないから
です。表示が本心と繋がっていないことを知っているだから、その表示を信頼しちゃダメですよね。
4.まとめ
ということで、ここまでをまとめると、心裡留保によって意思表示が無効となるための要件は、
①外形上意思表示が存在すること(前提)
②表意者が外形上の表示に対応する効果意思を有しなかったこと
③表意者が外形上の意思と効果意思との不一致を認識していること
④相手方が②を知っていたこと、または知ることができたこと
です。ここまでの説明がなぜこの要件になるのかは、ぜひ考えてみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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