お師匠さまたち。
先日、柴山の待合室で、常連のご婦人方がしみじみと語り合っておられたこと。
ご婦人A「私、このコロナ騒動からが人生の総じまいやなと思うねん」。
2月からの処方箋診療ももはや5か月目に突入したが、緊急事態宣言の解除を受けて、外来には診察待ちの人影もチラホラと増え始めた。それでも、コロナ襲来前とは静けさの度合いが違う待合室に、2人の遣り取りが、これまた静かにつづいていく。
どういうこと?とお相手のご婦人B。アル綿でアチコチ拭きつつ、つづきを聞かせて!と、耳がイカ耳猫状態の私(➡やや仕事放棄)。
A「もうほれ、90年近くも生きてきてやで?そろそろシマイやなと、思うやろ?せやから、いろいろ、片づけたりもあるやんか」うんうん。
A「せやけどな、なんやゆーても、あ、これもうちょっと置いとこ、とか、いや、こんなもんまだあったわーて、まあ、すすまへんわな」
B「せやん、ひっくり返してるうちに日ぃ暮れる」そーよねー、わかる。
A「せやけどな、わたし、このぎゃらしい(嫌な)騒動で、あ、こらもうアカンてなったのがな・・・お付き合い」え?
B「ご近所か?」
A「うん、それもあるけどな・・・なにもかも」何もかも!衝撃的!
B「・・・へぇーーー・・・」わかるわ、私もいまそう呟いてる。
A「この騒動のぎゃらしさ(いやらしさ)はな、そら、怖いっちゅうのはあるわな。死なはった人らは、ほんま、気の毒や。ケンちゃんもな(もうほぼ身内の扱いよね)。せやけどな、怖いっちゅうたら、人のなんちゅうの、ほんまのとこ丸出しになりよったやろ。ほしたら今度は大雨やんか。あんたもう、ほんま、どないもしたられへん、このババではな。ほんであんた、これまたコロナのせいで人いかれへんてな。もう胸つまるわな」
B「せやんかぁ・・・もう何ともはやな・・・わたし、拝んでる。もう雨やめたげてやわ」
A「何もかんも失うてな、それでもけなげにしたはぁる。それ向けてあんた、何もゆえることないでな?せやけど、なんや高見の見物で、丸出しにいらんこと言いよる人ておるんやん」
B「あーーーーんーーーー、丸出しやな、たしかにな、丸出しの人おるわ」
A「せやろ?わたしな、それはそれで、もうその人やさかいな、もう、それがどうとか、言うてません(しばし宙をみて沈黙)」言うてません!すてき!
B「・・・(しばらく待ったのち)ほんで?」すごいなあ、絶妙だね・・・
A「うん、ほんで思ったん。それがどうとかやない、そやけど、もうえーわて思ったんよ。もう、私の残りの人生に、そういうとこから入る、なんちゅうかな・・・・もや」!!!!もや!!
B「もや・・・くーろい、もややな」お見事!!
A「しや(せや!)。その人が悪者とかやなくてな、もういりませんねん、もやみたいなんは、もういらんねん。せやからな、もう、聞かない」!!
A「近所はほれ、しゃあないから、元気に挨拶はする。必要なことはしゃべる。☎もかかったら出るし、しゃべるよ、せやけど、もう、どうにもゆかん気持ち、こっちがそんなんになるほどには、しゃべらへん。それでどない思われても、わたしかまへんて、もう決めてん。もやはいらん、もやはほんま、こっちの気ぃもっていきよる。私、そんなんで死ぬるの、いややねん。もういらんもん、増やしとる場合ちゃうのんよ!」
B「しやなぁ・・・何事もな、やっぱりあれやな、ほどほどにしとかな。みんなくわい(怖い)し、みんなおとろし思いしてるからな。しやけど、もう、なんせな、もやはくわい」
A「せや!せやけど、もや作っとるのは、その人らそのものやさかいな。まあ、そんなもやばっかり出してんと、あんたらもあんじょう生きや~て心で思いながらな、もう、こうな(手をバイバイしながら)、さいなら~」
B「お別れでんな」
A「そうです」
B「せやけどあんた、えらいわな」
A「なにがやな?」
B「やめてんか!て怒るでなし、せめるでなし、あんじょうしぃやて、えらいがな」
A「なんもえらないがな(笑)しやけど、こんなんな、あんたやからゆえるわ」
B「ほうか?」
A「いん(うん)。これ、ゆえる人おるから、私もはりあいあるよ」
B「そらよかったわ。まあ、あんたゆうてること、ごもっとも」
A「おおきに(笑)せや、あんたこないだのタクアンよ、あれな、フジイさんとこ間違えてはったんやん、やっぱりあれ、間違いやったんて!」
B「そうかいな!せやろ、せやおもてん、あんなぎょーさんなあ!しやけど、よかったわ、間違いやてわかったら、ギョートクさんもスッキリしはるわ」えっ、沢庵!!??突如、もやの向こうからタクアンきましたけど!
ちょっと~鋭角Uターンきたけど~( ´艸`)!!!と、思わず二人を振り返ってみた私に、Aさんはニコニコ「おたくらも大変やなあ。気ぃ滅入らんようにしてくださいや、ほんまな、開けてくれたはるけどな、あんたらも怖いやろうに、なぁ」。Bさん、水のみ人形のように首を振り、同意。
ありがとうございます!お言葉しみますわ~!とか笑い返しながら。
私の中に多少は「もや」いたかもだけどね、でも、いまのお二人から吹いた心地よい風で、それがすっかり、そいつを吹き消してくれちゃったよ。それもさ、突然フジイさんの漬物話にスルっと姿かえちゃってさ、すごいよね、もう私はそこに、あなた方の生きてきたすべてを見せてもらったような、そんな錯覚すらしたよね!傾聴とかスピケアとか色々ごたく並べてやってきたけどさ、どれにも違和感しかなくて、もういいや、私はわたしの信じることで行くからさ!って腹を括ってきたつもりだけど、どこか不安でさ。だけど、御覧なさいな!こんなところにも、私の師匠達(一方的に決定)発見☆
人間だもの。すべて受け止めるなんて無理。だけど、すべてがそれぞれに生きていて、ちがって生きていて、それでも、命は尊いなら。まもりながら、自分のことも、まもりながら、そこをたくましく生きたらよい。ちゃんと泣いて怒って理不尽を嘆いて、うつむいたりウジウジしても、その先で立ち上がるから、大丈夫。やいのやいの、せっつくことない時にもせっつき、想像してないよりマシだろ?と言わんばかりに「他者」を想定して攻撃してしたり顔してる何かに、うんざりしても、それでも、光がないなんて、おもわない。
とか、グルグル巡らせながら、私はしみじみ、今日きいたすべての言葉を、胸の戸棚にしまった。いつか二人とお別れしても、この戸棚の中で、芳しい発酵種みたいに、今日の日はかわる。いのちはこうして、たとえ「他者」同士であっても、あらゆるものの中へ引き継がれてゆくのだな。ありがとう。
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