孫子の兵法に学ぶPVPの心得 その2

 お待たせいたしました。
 アルビオンオンラインをプレイしていて感じる素朴な疑問に対し、孫子の教えを当てはめて答えを出していこうかという試みの第二回となります。
 こういう趣味で書いた記事はアクセスがかなり少ないのですが、代わりにいいねをつけてくれる人が多くいるため失敗としてカウントしていいものかどうか悩みます。
 少なくとも面白がって読んでくれている方がいることは確かなので、ある程度用意してあった第二回は予定通りに書き上げました。
 面白がっていただけると幸いです。
 一応続き物ですので前回の記事を読んでいない方はそちらから読んだ方が分かりやすいと思いますので下にリンクを張っておきます。


疑問4:巷の人々はワンコン系武器の評価が低くないか?

 収穫者頭で眠らせたところにサイレンスからE撃ってくるボルトキャスターみたいな、全スキルを総動員してワンコンボで削り切ってくる装備構成って結構厄介ですよね。
 めちゃくちゃ強力で対処も難しいのに、しかしなぜか多くの人が該当武器をそれほど高く評価していません。
 絶対的な評価としては強いと認められてはいても、ティアリストみたいなものを作るとこれ系の武器は高くてもAティアくらいにしかならない。
 何故なのでしょうか、これにバッチリ適用できそうな孫子の教えは以下のようなものがあります。

『兵の形するものの極は無形に至る』
『兵の形は水に象る』
『兵に常勢なく、水に常形なし』

 詳しく解説するまでも無いですね、こういうものを理解するのにはバトル漫画を読むのが手っ取り早いと思います。
 柔軟に状況に適応する様を水に例えたり、あるいは武芸を極めた人が無の型がどうのこうのと言い出すのは古今東西のあるあるネタです。
 形を持てばいずれ破られる、そしてその方法を心得ている人であればどれほど強力な形であってもそれは最上位に置くべきではないと考えるのです。
 最も優れたものは一つの形に依存しない対応力に優れたものである、という理屈です。
 このような思想によってワンコン系武器は最上位に置かれることが無いのです。

 ここで重要なのはワンコン系の評価に思想というバイアスがかかっている可能性があるということです。
 やることが決まり切っているワンコン系の強みは「拙速」のなしやすさ、あらゆる判断の簡易化が可能でスピード感に優れているところ。
 この強みが低く見積もられがちじゃないかなぁと私は思います。
 孫子が「極は無形」としたのはそれ以前のところで

『奇正の変はあげてきわめるべからず(色んな状況があるから極めきるのは無理的な意味)』

 としていることから無形はあくまでも理想論であり、完成系を無形に置くけどもそこに至るまでは言うなれば多形でしかないので単一形に対する優位を語るものではありません。
 無に至った者だけがワンコン系を侮る資格を持ちます。
 つまり我々にとってはワンコン系武器を熟達者の考えよりちょっと高く見積もった評価をするのがベターだと思います。

疑問5:弓使ってるだけで何故非難されるのか

 最強と目される武器の中に案外遠距離武器が少なくて、その中の一つが弓であとはチルハウルくらいでしょうか。
 どちらも安全にやろうと思ったら殆ど相手に触れさせずに勝つポテンシャルがあり、そこが嫌われる要因でもあります。
 強すぎるからではありません、遠距離武器はその勝ち方に問題があり、それは精神的なダメージを与えすぎることです。
 野火とか呪いなんかもそういう雰囲気を感じさせるところがあります。

『囲師には必ず闕き、窮寇には迫るなかれ』

 世に轟く『風林火山』の一文を含む軍争篇にあるこの一文がこの命題と向き合うためのヒントになるのではないかと思います。
 敵を包囲したなら必ず逃げ道を空けておき、窮地に陥ったところへ追撃してはならないという意味です。
 これはちょっと解釈が難しくて、普通に考えると逃げ道を空けておけば敵の進行方向が限定されるので、追撃すれば容易に壊滅させられるのではないかと考えられますよね。
 ですがこれは世界史を見てみるとその妥当性を感じることができるんです、例として太平洋戦争末期の話をしましょう。

 まずはアメリカ視点、ほぼほぼ趨勢が決まって後はどう決着をつけるかというフェーズになった時、アメリカ軍ではダウンフォール作戦というものが立案されました。
 これは本土決戦を想定したもので上陸作戦の後に化学兵器を散布しながら東京の総司令部に侵攻するというものでした。
 軍の想定死者数は50万人超であったと言われています。

 次に日本軍視点、ダウンフォール作戦を事前に察知した日本軍は玉砕作戦というとんでもないものを立案しました。
 15歳~60歳までの国民を兵として動員することでアメリカの本土侵攻に抗し得るとしました。
 想定死者数は3000万人超、逃げ場がなく窮地に陥ってなお追撃を与えようとするとこういう状況を招くわけです。

 ではこれをアルビオンで起こり得る状況に置き換えましょう。
あなたは弓を使っていて相手はブリンクの無いベタ足近接武器、IPは同程度だったとします。
 先に攻撃できるのはあなたです、Eで強化した通常攻撃、近寄ってくるところにQ、足スキルを切ったらWでブリンクして更に足スキルで距離を保つ。
 料理バフの違いがあるのでクールダウンにおいて勝るのはあなた、だから何か大きなミスをしなければ安全に引き撃ちを続けることができ、逃げられても追いつける。
 相手に何かしらの手を打つ余地は全くありません。
 所謂詰みの状況です。
(状況判断が悲観的過ぎるという点には一先ず目を瞑ってください)

 圧倒的に高いIPで敵を倒すのも似たようなもんだろうと思うでしょうが、それは間違いです。
 同IPに完膚なきまでに倒されるとIP差を言い訳にできないので、その精神的ダメージは大きな差があるということを理解してください。
 悪いのはあなたではありませんが、そうして勝つことであなたに理不尽な恨みが向けられるのは道理なんです。
 武器を恨み使い手を恨みあまつさえ人目につくところで非難するような馬鹿げた行動を敵がとったのは、あなたが精神的に追い詰め過ぎたからです。
 追及されるべき責任は無いが因果関係があります。

 もう一度太平洋戦争の話に戻ります。
 日本のクレイジーな反応を見たアメリカはダウンフォール作戦を決行せず、原爆を落としました。
 アメリカ軍の数に対して日本軍は国民を動員したので一応数の上では勝っていることになりますから、もし地上作戦を行っていたとしたら文字通り玉砕するまで決着を見ることは無かったでしょう。
 しかしそれが最新鋭の兵器による性能差をまざまざと見せつけることによって日本の降伏という形で決着しました。
 こんなものには対抗できないという降伏のための理由付け、言い訳の余地が生まれたのです、それは敵に作られた唯一の逃げ道でした。
 ちなみにダウンフォール作戦に対し玉砕作戦で対抗された場合、米軍の想定死者数は50万の10倍くらいになる見方もあったそうです。
 もはや孫子の言い分に異を唱えるようなことが出来ません、確かにそうするべきなんだなとしか思えません。

 はい、というわけで低いIPでも高いIPの敵をまともに倒せてしまうような武器を使ってジャイアントキリングをすると禍根が残るんだということを分かっていただけたと思います。
 とはいえシステム上許されていて咎められることはありませんからこれを行使するのもあなたの権利です。
 おそらくは自分が倒す方の立場である貴方は正当な方法であるならば武器に対して卑怯などということは無いでしょうが、そのような理不尽な事を言われる立場で相手に対して憤りを感じた経験があることでしょう。
 しかし当記事をお読みになられたのであれば、この理不尽に対しても今後は心を乱されることなく対応できるようになるはずだと思います。

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