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タコス警察#6 タコスバトル@B TOKYO

2020年12月某日夜、タコス警察は日本橋に降り立った。師走の風に運ばれし、争いの匂いを嗅ぎつけて……。

日本橋兜町。コレド日本橋などの近年の再開発が印象的ないわゆる「日本橋」とは、首都高速によって区切られたエリアだ。長年金融街という意味では〈日本の中心〉として機能してきたが、それ以上の印象はない街であった。しかし最近になって、コレド日本橋などが印象的なように、再開発によってシャレオツな店が増えているらしい。

現場は、旧第一銀行別館をリノベーションしたマイクロ商業施設、K5。1923年竣工でただならぬ雰囲気を纏っているが、自らをチランゴ(メキシコ市民、メキシコシティ人)と自称するタコス警察からすれば、何のことはない。べジャス・アルテスは1904年、チャプルテペック城は1785年、パラシオ・ナシオナルに至っては1522年だ。なめてもらっては困る。

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このK5の地下1階に、Bはあった(Bは匿名のイニシャルではなく、本名)。ブルックリン・ブルワリーの世界初のフラグシップ店で、キリンが運営しているらしい。この店では普段からタコスを提供しているのだが、この日に至っては、 “Taco Battle”と銘打ったイベントを開催しているとのことだ。

現場ではBと渋谷のLa Cabina(ラ・カビナ)が、どちらのタコスの方がうまいかで揉めていた。タコスで喧嘩とは何たることや、市民の平和のために止めなければ。特別メニューの、BとLa Cabinaそれぞれのタコス2種類ずつ——シーフードとミート——が勢揃いしたMeat and Fish Comboを味わって、勝ち負けを決めるか両成敗するしかあるまい。

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(以下、タコス警察による騒動報告書、もといマッチレポート)

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今晩のマッチはホームのBが、タコス激戦区・渋谷からLa Cabinaを迎え撃つ格好となった。実力者同士の注目の一戦である。集まった客からは期待と高揚感が伝わってくる。

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両者ともにオーセンティックなスタイルで、試合は開始からがっぷり四つのミラーゲームとなった。まず前半戦はシーフード・タコス対決である。ホームのBが送り出したのはサーモンムニエルのタコス。特製マヨネーズサルサが、こんがり焼かれたサーモンの香ばしさと合わさり絶妙に調和している。今晩のゲームのレベルの高さに、我々も襟を正した。

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対するは、Cabinaのバハカリフォルニア風白身魚のタコス。一口頬張ると白身魚の旨味、紫玉ねぎの辛味、ライムの酸味、特製サルサの甘味の完璧なストラクチャーが口内を支配し、パクチーと青とうもろこしトルティージャの香りが鼻腔を刺激する。お互いの骨格を殴り合う展開に我々も汗と涙。なんて幸せなんだろう。

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後半戦は、ミート・タコス対決である。先攻はCabinaのチョリソのタコス。トッピングは玉ねぎとパクチーというシンプルな出立ちだが、香辛料で引き立てられた肉の味わいは実に奥深い。最後は、Bの牛タンのタコス。厚切りの柔らかなタンが嫌いな人がいようか?素材の旨味が引き出された完全にうまいタコスだ。食べ終わるのがもったいないと思う前に皿の上からタコスが消えていた。

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見事な試合に立ち合い、我々は任務のことを忘れて熱中していた。この試合に敗者がいるとしたらそれは我々である。敗者が勝者たちを責められようか。タコスの味に郷愁が掻き立てられ、幸福な記憶の旅に連れ出されていた。そのとき、確かに東京の真ん中にメヒコのタケリアはあった。

嵐が去った。タコスは救われた。
タコス警察は、日本のタコスの平和を守るため、今日も街を駆け回る。


(以下、寸評)

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○バハカリフォルニア風白身魚のタコス 8.0
K:8.0 メキシコ含め、大衆向けtaco de mariscosとして最上位。
T:8.0 完璧を超える酸味旨味甘味のストラクチャーと噛み締めた時のテクスチャーの幸福感。120%。
M:8.0 具とトルティージャのバランスがやばい、タコスとして一つの作品、完成度が高すぎる。今ここ感とノスタルジーのダブル暴力。

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○タンのタコス 7.0
K:7.5 一つのタコスで世界が完結した。この方向性のタコスを極めた形として敬意を表したい。
T:6.0 素材が完全にうまい、うまいに決まっている。レモン以外の柑橘合わせてみたい。
M:7.5 ノスタルジー、食った場所にトリップした、つまり合法薬物。トルティージャの薄さ最強。

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○サーモンムニエルのタコス 6.5
K:7.0 最初の一口としては最高。冷めてから・他のタコスを食べてからの印象で押し負けるところがある。
T:6.5 チリマヨネーズの膨らみとカリカリにグリルした皮の香りが素晴らしい。最初に食べたことからこの試合を支配した。
M:6.5 サーモンの旨さ、サルサとの調和。具がでかいのでまとまらないのが唯一の減点。

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○チョリソのタコス 5.5
K:5.0 スパイシーで美味しいが、食感を求めたい。挽き肉をもう少し粗挽きにできないものか。
T:6.5 香辛料を口一杯に感じるにはひき肉を噛まなければいけない。サルサとあわせて溢れる感動。
M:5.5 肉が旨い、サルサで完成する。ちょっとオシャレすぎるのでワインとかと食べたかった。

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今日のタコス屋
B TOKYO
https://www.facebook.com/B.K5.TOKYO/
日本橋兜町3-5 K5 B1F 

La Cabina 
https://www.facebook.com/lacabinatokyo/
渋谷区宇田川町37−10 麻仁ビル


おすすめのメニュー
今日食べたものが店で出てくるかはわからない。一期一会。

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