停滞気味のJホラーに颯爽と現れた優等生『ミンナのウタ』を劇場で観て欲しい
※ATTENTION!試写会での鑑賞のため核心には触れませんが一部にネタバレが含まれます!
中目黒のオタクとホラー映画のオタクをさせていただいているフライドチキン・うらおくんです。先日試写会で一足先に観た『ミンナのウタ』(8月11日公開)があまりにも“俺たちの求めていた待望のJホラー”だったため、歓喜のあまり随筆をしたためました。
ここでは『ミンナのウタ』が待望の“ちゃんと怖い邦画ホラー映画”であることを主張したいので、安易に「ホラーが苦手な人も見られる!」とは言いたくはないのですが、それはそうとして、GENERATIONSのメンバーが好きな人、そして何らかの中目黒のオタクにはぜひ観て欲しい作品にも仕上がっています。
怖いのが苦手な方でも、恐怖ポイントが予想しやすい(来るぞというタイミングでほぼ来る)ので、嫌な予感がしたら目をつぶる、耳を塞ぐで対応可能かと思います。あと恐怖演出に振り切った展開ではなく、怪異の正体に迫る探索パートも長めなので、登場人物が喋っているときは基本的に安全です。ただ、中盤に大きな山場があって私も怖すぎて泣いちゃいそうになったので、それだけ1番下にネタバレありでタイミングを書いておきました。怖いことは何も書いてないので、よければ参考にしてみてください。
メンバーそれぞれの見せ方や探索パートも丁寧なので、怪異を目撃しなくても十分楽しめるクオリティだと思います!あと白濱亜嵐くんのリーダーとしての自負がヘキな人は絶対に観てください。
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ホラー映画は好きですか?私は国内でビデオスルーされた作品を現地までに観に行くくらい好きです。
主にゾンビが専門ですが、ミーハーなので最近は『PEARL』『ミーガン』『テリファー 終わらない惨劇』『忌怪島』を鑑賞しました。好きなJホラーはビデオ版の『呪怨』と『女優霊』です。
LDHは好きですか?私は今EXILE TRIBEと名の付くグループすべてのツアーを追うくらい好きです。
最近はいつか覇権になる巨大コンテンツ『BATTLE OF TOKYO』に命を燃やしています。好きなメンバーはEXILE TAKAHIROさんとBALLISTIK BOYZの日髙竜太くんです。
そんな感じで2018年頃からホラー映画と中目黒を反復横跳びしながら生きてきた私ですが、昨年はTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEの川村壱馬くんが2022年の傑作ホラー映画『貞子DX』に出演。そして今年はGENERATIONS from EXILE TRIBEが主演を務める清水崇監督の『ミンナのウタ』の公開が決定し、絶対に交わらないジャンルの上を反復横跳びをしていたはずが、中目黒とホラーはいつの間にかツーステップくらいの距離感になっていたのです。
8月11日から公開予定の『ミンナノウタ』は、ラジオ局の倉庫の中で“ミンナのウタ”と書かれた30年前のカセットテープを見つけてしまったことをきっかけに、メンバーの小森隼くんが失踪。ライブまでの3日間のタイムリミットの中、 早見あかり演じるマネージャーと、マキタスポーツ演じる元刑事の探偵とGENERATIONSのメンバーが捜索に奮闘する、ハートフルヒューマンストーリーです。
近年、邦画ホラー映画は最大公約数の人間が楽しめるようにという作品作りが主流になっているのか、大がかりなロケや役者の豪華さが楽しめる反面、ホラー要素が物足りないな、と思うことが多くなっていました。全てのホラー映画は減点方式でなく加点方式で観るのが正解だと思っているのですが、最近のJホラーはアイディアの真新しさや出演者の演技の良さは光るものの、エンドロールが終わった後に「怖かったねー!」と友人と盛り上がれるような作品が減った印象です。これは怖すぎる映画を作ると広告が出しづらくなる難しさや、出演者のファンへの配慮でもあるのだとすると、この夏公開される『ミンナのウタ』はそうした最近の邦画ホラーの対極にある作品に仕上がっています。
今作でメガホンを取った清水崇監督の『呪怨』シリーズと恐怖演出のレパートリーを一部共有し、近年はアメリカンホラーでもマイルドになってきた“ビックリさせる演出”をしっかりと取り入れ、さらにJホラーらしいジットリとした空気感の中、音の演出が観客の恐怖に拍車をかけます。他の試写会で鑑賞した人たちが“きちんと怖い”と口々に言っていた意味がわかりました。恐怖演出の打数も多すぎず少なすぎず、Jホラーの優等生と言えるほど、『ミンナのウタ』はホラーのツボをしっかりと押さえているのです。清水監督が原点回帰、あるいは得意なもの惜しげもなく全部乗せをしたのが今作と言えるのではないでしょうか。
スマホやSNS、YouTubeといった現代的なものが主題になり、そうした現代ツールのワンアイディアで勝負することが多くなってきた現代のJホラーの中で、ラジオとカセットテープという装置を用いて、この2023年に30年前からの刺客を送り付ける手腕には脱帽しました。キーアイテムがカセットテープである理由もかなり怖くて説得力があるのですが、ネタバレになってしまうのでぜひ劇場で慄いていただきたいです。
また、私はビデオ版と劇場版1作目の『呪怨』が好きで繰り返し見ては眠れぬ夜を過ごしているので、『ミンナのウタ』では『呪怨』にあった“まだ外が明るく、安全なはずの家で起きる怪異”が描かれていて大興奮しました。電気をつけても、布団の中でも逃げられません。
そうした容赦のないホラー描写の中でも、GENERATIONSのメンバーやグループが好きな人への配慮も感じられる作りになっています。比較対象が『呪怨』にはなりますが、あそこまでのお化け屋敷感や畳み掛けるような恐怖演出はなく、怪異の正体を追うミステリーパートもしっかりとあるので、“ホラーはちょっと…”という方も考察しながら楽しめる作品です。また、“怪異に憑りつかれたメンバーがメンバーを襲う”シーンや、メンバーを対象としたゴアシーンもないので、そうした面もファンが安心して観られる作品に仕上がっていると思います。
そして、今作はGENERATIONSのメンバーたちが登場するだけでなく、ライブシーン(本物)もあれば、お馴染みのLDH社屋もガンガン作中で使用されています。スクリーンいっぱいにあの社ロゴが映るシーン、アウェイな試写会の会場で私だけが声を上げて喜んでいました。
いつものジムやFANTASTICSのメンバーの写真もガッツリ映り込んだりするほか、作中で大活躍するおじさん探偵が見慣れた可愛いカップでAMAZING COFFEEを飲んで「これ美味いな…」と言うシーンなんかもあります。これらはもちろんGENERATIONSのファンに対するサービス的な意味もあると思いますが、中目黒のオタクであればあるほど、作中の出来事がリアルに感じられる仕掛けになっています。
そして作中ではGENERATIONSの音楽が頻繁に使われますが、意味のない使われ方はせず、特にイヤホンを使った演出は国内ではあまり観たことがないような印象的なシーンに仕上がっています。彼らがいわゆるアイドルではないことを重々承知の上で、ダンス&ボーカルグループのメンバーが本人役で出演する作品を表現する適切な言葉が浮かばず、ホラー映画の分類的にもあえて“アイドル映画”と呼びますが、『ミンナのウタ』はそんなアイドル映画とホラーの見事な融合作でした。ホラー、そして中目黒のどちらにもリスペクトがあるのです。あまりにも丁寧に作ってくれたので、おそらくどちらかにしか興味がない人にも大いに楽しめる作品となっていると思います。
そんな今作のさらなる見どころは、GENERATIONSのメンバーのホラーヒロイン力(ぢから)と、Jホラー界のニューヒロイン“高谷さな”のWヒロイン力(ぢから)です。GENERATIONSのメンバーたちの演技がホラーの世界観とちゃんとマッチしていて、特に序盤の小森君の恐怖の演技は、まだ怪異の全容が掴めない中で観客に「これはただごとではないのでは…?」と思わせる力がありました。ラジオのシーンも普段からやっているだけあってリアルです。あと、中務裕太くんの演技が異常に自然で驚きました。自然すぎてドキュメンタリーっぽさすらあります。
前記していますが、今回監督を務めているのは、ここまで何度も名前を出している代表作の『呪怨』がホラー映画の名作として語り継がれている清水監督です。その魅力はやはり何を食って生きてきたら思いつくのかわからない怪異の不気味さであり、今でこそキャラクター化されてしまい、その恐怖の権威が薄れつつある伽耶子と俊雄という怪異も、後のホラー界に大いに影響を与えた傑作です。
このままでは一生『ミンナのウタ』の話をしてしまいそうなので、そんな監督が今回新たに作りだした怪異“高谷さな”について最後に語って一旦終わりにしたいと思います。メンバーとの恋愛要素は一切ないので安心してください。接触は少しあります。
あえて“さなちゃん”と呼んでおきますが、さなちゃんを突き動かすのは伽耶子のような情念や怨念はなく、どんな方法でも自分の夢を叶えようとするポジティブさです。その一方で、彼女はビデオを観せるより簡単に人を呪う悪質さも兼ね備えている、昭和生まれ平成育ちで令和に世に放たれた、ハイブリットJホラーヒロインなのです。
米国のアート・ザ・クラウン、日本の高谷さなでホラーの新たな時代の幕開けを感じます。2大へっちゃら怪異。茶化しているのはさなちゃん怖いからです。清水監督、本当に何を食ったらあんなバケモノを生み出せるでしょうか。しばらくは自販機を見かける度にビクっとしてしまいそうですし、無意味とわかっていても家中の電気をつけて眠てしまいそうです。明るくても無駄だよ。
アイドル映画×ホラーの最高のアンサーを見せてくれた『ミンナのウタ』は8月11日に公開です。後々意味がわかって震えるので、オープニングは絶対に目に焼き付けておいてください。
清水監督は村でも島でもなく、家なんだわ。
ついでに公式サイトもイカれていて良いので、ぜひ隅々までご覧ください。
『ミンナのウタ』公式サイト
【https://movies.shochiku.co.jp/minnanouta/】
※ここから先は【ネタバレ】しています!怖いのを避けたいひと以外は読まない方がいいかなと!
若干のネタバレ込みで【ホラーが苦手ならここで気を引き締めよう!】という情報を載せます。ここがヤバイ!というポイントを書いておくので、目をつぶる、耳を塞ぐ、などの対応をすれば最後まで頑張れるかなと思います。
【中務裕太くんが高谷さなの家を訪れるシーンでは、3回同じ会話がループした段階で】目と耳を塞いでください。ここが1番の恐怖ポイントだと思います。