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【パロディ】神曲_まえがき
(約1,000文字)
この『まえがき』は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした会話を、日本語に訳したものです。
会話文のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りします。
L「『われ何によりてかしこに入りしや、善く説きがたし、眞の路を棄てし時、睡りはわが身にみちみちたりき*』... あ゛ぁもう我慢できない! 僕、今から『神曲』のパロディ書くわ」
(*『青空文庫』より抜粋。原文の難解さが見事に再現された名訳だ)
A「...ローリス、一日に二人で3行ずつ、六年かけて『神曲』(ダンテ)を音読するって昨日決めたばかりだろ。前に君が『カンツォニエーレ』(ペトラルカ)を途中で投げ出したから今回は思いっきりハードルを下げたのに、またこれか。まだ12行目だぞ」
L「投げ出すとは言ってねぇじゃん。『神曲』の朗読もやるけどパロディも書くの」
A「...じゃぁラテン語を投げ出すのか」
L「だから投げ出さないって。お前こそ投げ出さずに、週刊のムック本、ちゃんと毎週買っておけよ。今度イタリアに行ったらまとめて読むんだから」
A「...ローリス、あの週刊本、全30巻、総額いくらだか分かってるな?」
L「分かってるって。朗読もラテン語の勉強も今日の分は終わってるんだし文句言うな」
A「...他の全てを投げ出したとしても三か月で『神曲』のパロディを書くのは無理だと思うけど」
L「ばーか、ガチの『神曲』をパクるわけねぇだろ。散文で書かれた子供用『神曲』のパロディを書くんだから、他の全てをやりながらでも三か月あれば十分だよ。というわけで、まず配役を...ダンテは当然僕で、ウェルギリウスはお前。ベアトリーチェは... 誰にしよう? 元カノ...?」
A「敦子ちゃんがベアトリーチェ...w それならサルヴァトーレがカロンで、ノワールがケルベロスで...」
L「いや、モブはそのままでいくよ。全部入れ替えたら何が何だか分からなくなっちゃうだろ」
A「モブ...?」
L「...そうだ、あと、ウェルギリウスの身長調べないと。ダンテよりも低いといいなぁ... あ、電話かかってきた! 今日バイトの面接を受けた会社からかも。ちょっと出るから待ってろ」
A「...さて、君は一体、今回は何を途中で投げ出すだろうね...」
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