見出し画像

価値を持って戦えるか

社会的成功と良い心のどちらを選択しますか?シャンティデーヴァは自著「入菩薩行論」で何度も私達に問いかけてきます。これは世間的価値観と哲学的価値観の戦いかも知れません。

良心に従って生活する事と、社会的価値観(煩悩)に従って生活する事。

シャンティデーヴァのみならず、仏教の論書では、良い心と煩悩による勝ちなら、良い心を選ぶ事を勧めています。

良い心を選択しての心境の変化、深まりを諸派の師は説きましたが、それらの中で普通の人の心境から菩薩の修行までもっとも平易にまとめたものが「道次第」と言われる教えです。

これらの要点は仏教修行で起こる心境の変化をまとめてありますので、これに価値を置けるかどうかや、自身の名誉や得、賞賛、楽を他人に譲ってまで、煩悩と戦う意味を見出せるかどうかの判断材料になるのではないでしょうか。

道次第の要点

🔴普通の人が良い人を目指す段階

⭕悪感情に流されない良い心を目指す
【発心・一念発起】

⭕そのためにも自由でなおかつ経済的・時間的に余裕ある状態を作る
【十八有暇具足】

⭕「もしも今日までの生命だったら」と思う事で良い心・優しい心を優先する
【死が無常】

⭕怒り・渇望・支配欲・服従欲より悪行を止められない心境からの脱却
【地獄・餓鬼・畜生の三悪趣】

⭕良い心に価値を置き、それを護るために良い心を大事にしている方々にサポートを依頼する
【三宝に帰依】

⭕良い心を育てるサポートをする先達、経験ある先生を探し学ぶ
【師に親しみ仕える】

⭕良い心で良い行い 十善行
生命を守る・支援する・同意のない性行為をしない・正しく話す・仲を取り持つ・穏やかに話す・他を讃える・少欲知足・親切・因果応報を確信する
【十善業】

🔴良い人が二度と自分自身の煩悩に振り回されない状態を目指す段階

⭕人と世界の実体化・固定化から有情は輪廻するので、いつの日か訪れる不幸に備え固定化から離れる
【人天いわゆる善趣の苦】

⭕煩悩からの脱却(四聖諦を知りいわゆる解脱)を目指す
【出離】

⭕涅槃・実体化なき良い心(十二縁起による苦の滅・悟り)の確信
【解脱・涅槃】

⭕煩悩から脱却する方法の7つの段階

①四念処 有為法の在り方・無我の考察

②四正断 そこからの善悪の取捨

③四神足 そこより生まれる精神集中

④五根  強い信、精進、念、禅定、知恵

⑤五力  五根が更に強まった段階

⑥七覚支 聖者に備わる心的特徴の7つ

⑦八正道 そこからの聖者の八善行
【三十七菩提分法】

🔴解脱・涅槃を確信した方が修行の視点を変える段階

⭕一切有情を始まりの知れない輪廻での有縁の方と知る
【一切有情を母と知る】

⭕限りない転生で皆かつての恩人と知る
【恩を知る】

※三千大千世界よりも大きいかつてのご恩に感謝

⭕一切有情皆それぞれを恩人として恩返しを考える
【お返し・報恩を考える】

⭕恩人を喜ばせたい気持ちが自然に起こる
【自然の大慈】

⭕恩人が苦から離れて欲しいという気持ち
【大悲】

⭕全恩人が問題を解決するサポートを「誰かがやるだろう」と見過ごさず「自分がやる」と決心する
【殊勝な心】

※その一方で、良い行いだからと自分の行動の結果に執着して、全恩人を思い通りに変えようとしない
輪廻が尽きるまでゆっくりサポートしようと誓い、恩人の自由意志を尊重する

⭕全恩人が成仏するまでのサポートを私がする、そのため自身の煩悩をなくす事を目指し、また利他をなす事への無知や妨げをなくした仏陀を目指す
【発菩提心】

⭕感謝・報恩として全ての恩人をサポートするため、親切に自他の不安不満を解消する(もしくはするのをサポート)
【布施】

⭕感謝・報恩として全ての恩人をサポートするため、悪意ない、敵でない安心感を与える
【持戒】

⭕感謝・報恩として全ての恩人をサポートとはいえ、自らは誰かしら利害関係ある人からは敵なので、悪意も加害も妥当と胆力を養う(その対処は入菩薩行論に詳しくあります)
【忍耐】

⭕感謝・報恩として全ての恩人をサポートするのが楽しいので良い事を継続して行う
【精進】

⭕感謝・報恩として全ての恩人をサポートするため、精神集中で注意散漫を離れる
【禅定】

⭕感謝・報恩として全ての恩人をサポートするため、人やあらゆる存在を分析する事でその実体化を無効化する(もしくはするのをサポート)
【知恵波羅蜜】

ここまで「道次第」の要点を書き出しましたが、これら要点を達成した目安として、ゲルク派の祖ツォンカパ大師は自著「菩提道次第広論」の中で、「その心に習熟し慣れたら、自然にその心が芽生えるようになります。その時がその段階を達成出来た目安です。」とあり、「(破戒など堕落して)その心が自然に起こらなくなる時までその段階は存在する」とあります。

この定義は密教でも同じように適用されると考えて良いでしょう。

いいなと思ったら応援しよう!

阿闍梨(ロプン)
インドからチベットに伝わった文化である「仏教」を仏教用語を使わず現代の言葉にする事が出来たら、日本でチベットの教えをすぐに学べるのに、と思っていた方。または仏教用語でもいいからチベットの経典、論書を日本語で学びたい方。可能なら皆様方のご支援でそのような機会を賜りたく思います。