
「意図的に蚊帳の外に居るんです」と主張する歪さ
夜になると百鬼夜行が街をゆく。軒並みシャッターの閉まった連なる土産屋通りの前を平然とゆき過ぎる。そんな異形達を尻目に、年齢不詳の若い集団がスプレー缶でシャッターにアメコミライクなモンスターを描いて、その様子をSNSで発信する。異形達を映すでもなく、淡々と吹き付けられていく蛍光色の塗料がただただ配信され続ける。そうゆう歪さがある。
TVを付けると異国の地で紛争が起きている。安価な棒状のチョコ菓子を頬張りながら、大して疲れてもいない体に栄養ドリンクを流し込んで、「私達に出来ることはないだろうか」「一人一人の意識からまず変えなきゃ」等と考えてみる。考えてみるけれど、実感が伴うことはない。心は微動するものの体は動くことが無い。行動力に蓋をしている。
SNSをダラダラ流し見していると、よく分からない陰謀論的な文章が沢山流れてきて、もはやそれが本当か嘘かということよりも、文字の塊に対してこの物体は一体何なんだろうと思ってしまう。毎年毎年、「来年には何かが起こるんだ」「むしろ今まさに起こっているのだけれどその事にみんなは気づいていないし気付こうともしていない」みたいな結論に、賛成派反対派関係なく帰結していく様相。何の闘いなの。
ミュージシャンが他者の名義に肖って、作品も借りる形で、平和を訴え続けている。プレートを首から下げて、強い言葉で訴えかけてくる。それを見て「借り物ファッションだ」と思わず呟いてしまった。別に構わない。会ったことも無いんだから好きにすればいい。その人の思想はその人の勝手なんだから、と自分に言い聞かせるも、腑に落ちることはなく、なあなあで作品を追い続けている。
マーモットAとマーモットBの喧嘩に、マーモットCが割り込んできて、仲裁しようとするものの、いつの間にかマーモットBとマーモットCの喧嘩になってしまい、そもそも何を理由に揉めていたのか、お互いの立場はここですと示すばみりからどんどんズレて行って、異なる種の縄張りにうっかり侵入し、そこでまた別の揉め事が発生する。まぁ私はマーモットじゃないので、どうでも良いんですけど。
蚊帳の外に放り出されると不安になるけれど、集団がみっちみちに詰まった蚊帳の中にずっと留まっていると息が詰まるので、他者に放り出される前に、自ら出て行くことにする。選択された孤独を選ぶのか選択した孤独を選ぶのか、みたいなことを考え続けて、そのうちどうでも良くなって、くだらない夢想を始める。チョコ菓子のお徳用パックを不器用に開け始める。如何にも「どこからでも開きまっせ!」と言いたげな見た目をした袋なのにどこからも開かず、ハサミを探し始める。ハサミが見当たらない。
そうゆう歪さ。人の歪さは何処か容認出来ていないのに自身は許す歪さ。誰かと同じように物事を考えている素振りだけを見せて、こうして文章に書き起こして満足している歪さ。
「意図的に蚊帳の外に居るんです」と主張する歪さ。
それだけがある。
いいなと思ったら応援しよう!
