極小ネオジオ基板『MV-1C』のUniBios化&電池ソケット化
業務用ネオジオ『MVS』のマザーボード基板の中でも、かなり後半に登場した極小モデル『MV-1C』を入手しました。
基板サイズはMVSカートリッジとほぼ同サイズです。
本来は基板の外側にプラスチックケースがついていてもう少し大きいのですが、入手したものはプラケース無しのむき出し基板状態でした。
MVSの1枚挿しマザーボードはMV-1C以外どれも2枚の基板を組み合わせた立体的な構成になっていて、ゲームカートリッジをマザーボードと水平に挿し込む仕様になっています。
MV-1Cは1枚挿しマザーの中でも唯一ゲームカートリッジをファミコンや家庭用のようにマザーボードに対して垂直に挿し込むタイプでマザーボード自体も1枚で構成されています。
起動確認
入手したのは10年近く動作確認していないジャンク扱いのMV-1Cだったので、まずはコントロールボックスに接続して動作確認を行いました。
無事起動してゲームも遊ぶ事ができましたが、いくつか不具合がありました。
カレンダー、ゲーム設定を保存する電池が切れている
コインオペレートするわけではない家庭内での使用なので、ゲーム内カレンダーが無くてもそこまで不具合や必要性は感じないものの、ゲームの難易度なども本体の電池を使って保存されているので毎回起動するたびに難易度が「LEVEL4」に戻ったり各種設定がデフォルトに戻るのはちょっと残念な状態です。リージョンがアジア版なのでゲームは英語版が起動して日本語版のゲームが遊べない
MVSのカートリッジは本体のリージョンにあわせて言語設定を自動で切り替えます。
一部タイトルはリージョン問わず手動設定で日本語を選べますが、多くのタイトルはリージョン紐づけの言語設定になるので日本語で遊べないタイトルがほとんどでした。
ゲーム内のメッセージだけでなく『餓狼伝説』が『Fatal Fury』のようにタイトルも変わってしまうので、馴染みのゲームが見慣れないタイトルになる違和感は……これもちょっと残念な状態です。
これらの不具合を解消するために修理・改造の方針をたてました。
バックアップ用電池の交換と、今後交換しやすい電池ホルダータイプに変更
BIOSをUNIVERSE BIOS (通称UniBios)に交換
バックアップ用電池の交換
基板に取り付けられているバックアップ用電池は交換前提になっていないハンダで固定されているタイプの電池でした。
同じ電池を用意して交換しても良いのですが、何年かに一度同じ作業をするのは面倒なので電池ホルダータイプに交換して、次回以降は簡単に電池交換できるようにします。
タカチ電機工業製「縦型 コイン電池ホルダー CH74-2032」を使用しました。
基板の電池部分と穴の位置が合わなかったので、電池ホルダーのピンをそのまま挿すことができませんでした。
幸いにも基板の半田部分が大きかったのでピンを左右に曲げて取り付けることができました。
これで次回電池が切れても簡単に電池交換できるようになりました!
基板とピンサイズがぴったりの電池ホルダーがあれば今からでも交換したい所ですが、見つかるまではこのままで運用しようと思います。
UNIVERSE BIOS (通称UniBios)に交換
UniBiosはアンオフィシャルな拡張BIOSです。
各国リージョンの変更やサウンドテストなど、本来MVSのBIOSに無い機能が追加されています。
MVS各マザーボードのBIOSはICチップを抜いて挿し替えるだけで簡単に交換ができますが、小型マザーのMV-1Bと今回のMV-1CはBIOSが表面実装された小型のIC(SOP(Small Outline Package)と言うタイプ)で簡単に取り外しができません。
小型BIOSタイプのMV-1BやMV-1CにもUNIBIOSを取り付ける為のオプションパーツ「NeoBiosMasta」が海外で販売されています。
残念ながら随分前からチェックしているのですが、全く再販される気配がない所にAliExpressで互換品を発見しました。
本家の最新版はメモリカード機能なども内包したマルチなパーツですが、互換品はUNIBIOSに載せ替えだけの初期型と機能的には変わらないので、とりあえずこちらを調達して取り付けることにしました。
既存BIOSの機能停止or撤去
まずは今取り付けられているBIOSを取り外すか、動かなくする必要があります。
方法は2案あり、どちらでも結果は同じです。
プランA「BIOSチップを残したまま機能停止させる」
ピンの10番と12番を基板から浮かせる
先の細いピンセットを足の下に入れ、はんだごてで熱してハンダが溶けてキラキラしてきたタイミングでピンセットを上に軽く持ち上げると基板から足を外すことができました。
あまり力を入れすぎると基板側にダメージを与えてしまうので注意が必要です。
側面から見ると2本の足が浮いているのがわかります。
10番はこの後の工程で「浮かせたピン」「基板側」それぞれに配線を行います。
浮かせた10番ピンと21番ピンをショート(配線接続)させる
先程浮かせた10番と、BIOSチップ右上の21番を繋ぎます。
これでBIOSチップを取り付けたままBIOS自体は機能しなくなります。
が!!ここで失敗してしまい10番ピンの足を折ってしまいました!!!!!
このままではBIOSの機能停止ができないので、プランBに急遽変更しました。
プランB「BIOSチップそのものを取り外す」
足が折れてしまい、これから取り外すBIOSに未練が無かったので足を切り落とし取り外しました。
薄刃ニッパーの刃をチップに対して垂直にあてて、基板に足が残るように切り落とし、BIOSを取り外した後に一本づつはんだごてをあててピンセットで足を除去しました。
配線取り付け
BIOSの10番からNeoBiosMASTAの「CE」、12番からNeoBiosMASTAの「OE」に配線を接続します。
NeoBiosMasta取り付け
NeoBiosMastaにUniBIOSを取り付ける
取り付け用ソケットとUniBiosのチップそれぞれに凹みがあるので、向きを合わせて取り付けます。
ピンの足が多く、細くて取り付けづらい場合もありますが、全ての足がちゃんと刺さらないと機能しないので注意しながら全ての足を挿します。
足の左右を一度に挿すのではなく、片面を全部挿してから反対側を少し内側によせて挿すのが僕の必勝パターンです。(もっと良い方法あるかも)NeoBiosMastaをMV-1Cに取り付ける
NeoBiosMastaに書かれている「TOP OF 68000」とMV-1Cの68000の向きをあわせて上から差し込みます。
ザっと刺さる感触があるので奥まで差し込みます。
奥まで刺さった感触の後、さらにもう一息奥まで挿し込むことで正しい接続になります。
一番奥まで刺さるとカチっという感触があります。
要注意!!!!
NeoBiosMastaは確実にガッチリ差し込みましょう。
NeoBiosMastaの差し込みが甘いとうまく動作しません。必ず奥まで差し込みましょう。
基板にソケットがくっつく位まで差し込めばOKです。
(差し込んで最初の"ザっと刺さる感触"の時に同じ角度から見るとけっこう浮いています)
実際、差し込みが甘かった事を教えてもらい修正するまでUNIBIOSが反応せずに、起動してみるとピクセルアートのような画像が表示されるだけになっていました。
動作確認
NeoBiosMastaをガッチリ奥まで差し込んで起動させたら、無事に「CROSS HATCH TEST」が起動しました。
カートリッジを差し込み、UniBiosでリージョンを日本のアーケード版に設定することで日本語版が無事起動しました!!
参考にしたサイト
自由日記J -ジャンカーへの道-「NeoBiosMastaで後期MVSのBIOSを簡単に変更する」
オトタマのぼやき部屋「アーケードゲーム基板MV-1CにUNIVERSE BIOS(UNIBIOS)を取り付けてみた。」
ナカムーオンライン「迫撃!トリプル・MVS(ドム) NeoBiosMasta編」
参考:他のMVSマザーボード
大きい代わりに家庭用ネオジオコントローラが接続できるコネクタやステレオサウンド、オーディオボリュームなど沢山の機能が搭載されている初期のマザーボード。
左が小型マザー[MV-1FZ]で右が超小型マザー[MV-1B]
1FZはカセットとほぼ同サイズで1Bはゲームカートリッジよりも小さいのでゲームをセットするとハミ出ます。
横から見ると1Bの方が背が高いので基板全体のサイズは変わらず、L字に折り曲げる位置をズラして小型化したように見せているのがわかります。