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全国のお菓子メーカーをつないだ「#おかしつなぎ」 チロルチョコ社長インタビュー

新型コロナウイルスで変貌するソーシャルメディア

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ソーシャルメディア上では「#StayHome」や「#うちで過ごそう」 など外出を控えるハッシュタグが目立つようになりました。

これらのハッシュタグを用いた投稿は、単に外出を控えることを伝えるだけでなく、お互いに励ましあうメッセージも目立つようになりました。

星野源さんの「#うちで踊ろう」、高嶋ちさ子さんや新日本フィルハーモニー交響楽団の「#テレワーク演奏会」、プロサッカー選手のトレーニング動画など、有名人がリードして様々な人が自宅で楽しめるコンテンツを発信しています。芸能人を中心に様々な方が、次の人を紹介してゆく「#ギャグつなぎ」や「#うたつなぎ」なども話題となりました。

これらは、不要不急の外出を控え、生活を営んでいる人々にとっては、励みになったり、楽しく時間を過ごすきっかけになったりしています。

そんな中、企業発でTwitterで話題となった企画が生まれました。

「#おかしつなぎ」です。

企業の垣根を越えて広がった! #おかしつなぎ

この企画は、ハッシュタグ「#おかしつなぎ」を使い、自社のお菓子をTwitterのフォロワーにプレゼントするキャンペーン企画です。チロルチョコのTwitterアカウントから発せられたこのツイートから始まりました。

この企画には、かっぱえびせんカンロうまい棒ブラックサンダーなど、誰もが知るお菓子がTwitter公式アカウントを通じて参加しています。

さらには、坂角総本舖【公式】博多通りもんの明月堂【公式】【萩の月】菓匠三全オフィシャル一六タルトなど、それぞれの地域を代表するような銘菓も参加しています。

日本中に認知されているお菓子だけではありません。地方の和菓子屋さんや駄菓子屋さんなども、続々と参加しています。規模によらず、誰もが対等に参加できるのもソーシャルメディアの醍醐味です。

現在、確認できるだけで70社を超えるお菓子メーカーが参加しています。
おいしそうなお菓子が並ぶタイムラインを眺めるだけで、なんだか幸せな気分になります。

実際、

#おかしつなぎ
このタグに企業さんたちの優しさが詰まってる🥺❤️
きっとすごく大変な状況でしょうに…😭
https://twitter.com/donguri_ATARI/status/1251308409581780992
#おかしつなぎ
素敵な企画だなぁ✨
外出自粛で、家にこもっている子ども達と親達に お菓子でニコニコできる時間があると気持ちもホッコリするね(^^)
我が家も毎日 おやつ時間作っています。
お菓子メーカーさんの 優しい気持ちに 感謝✨
https://twitter.com/niha210/status/1250393158631866369
#おかしつなぎ  ここ見てるだけで元気出る!https://twitter.com/niyaneko_/status/1253321166367805441

といった企画を称賛・感謝するツイートを数多く見ることができます。
しかも、単に生活者が喜ぶということでなく、日ごろあまり知られていないお菓子メーカーの認知を高めることにも一役買っています。

色々知らないお菓子がたくさん 食べてみたい 是非是非ご縁がありますように #おかしつなぎ #コロナに負けるな
https://twitter.com/SAKURA42432/status/1252718894784983040
#おかしつなぎ  をみるのが最近の楽しみです☺️❤️
お菓子好きなのに
全国にはまだたくさん知らないお菓子があって✨
こんな時だからこそ
お家でこうやってワクワクできるので🌟
企業様方には本当に感謝ですね☺️🌸
わもち?がすごく気になります😊👍
ぜひ応募させてください(*´ー`*)
https://twitter.com/REMYandME/status/1255167863091937280

さらには、参加された企業にたいするイメージも向上するような効果も生み出しているようです。

#おかしつなぎ  に参加してる企業さんは、意思決定もスムーズで働きやすそう!羨ましい😂
https://twitter.com/rvluv_joyful93/status/1252927196655542272

チロルチョコ松尾社長インタビュー

こんな素敵な企画を考えた、チロルチョコの松尾社長にお話を伺いました。その内容をご紹介いたします。

「#おかしつなぎ 凄い反響ですね。思いついた経緯をおしえてください」
松尾社長:新型コロナウイスの話題でテレビもネットも、他者を批判するような発言や記事がやたら目につき、息苦しさや嫌な気分を感じていました。

長期的には相当な影響が出ることは覚悟していますが、今のところ、当社をはじめとしたお菓子メーカーは、旅行会社や旅館などに比べればダメージは少ないこともあり、何かこの雰囲気を変えるような活動ができないかと考えました。

そして実際に「#おかしつなぎ」を思いついたのは、Twitterアカウントに投稿した4月15日の直前の週末(4月11日-12日)のことでした。

この企画を同業の菓子メーカーなどに話したところ、ネガティブな反応は皆無でしたので、実行することにしました。また、会話の中で、せっかくなので共通の「#おかしつなぎ」のロゴも作ろうということになりました。「いろいろなお菓子が輪になっている感じもいいね~」などと、社内のデザイナーと雑談したあと、ロゴを作ってもらったところ、最初に出てきた案がこれです。

ロゴ_おかしつなぎ

#おかしつなぎ のロゴ(サッポロポテト公式アカウントより引用)

「ここまでの反響があると想像されていましたか?」
松尾社長:妄想では思っていましたが(笑)。実際こんなに広がったのは正直予想外です。はじめは、普段から懇意にしているお菓子メーカーさん6社に声をかけて始めましたが、実際ここまで広がるとはうれしい限りです。

特に、スナック菓子系のメーカーさんは在庫がひっ迫している話も伺っていましたので、正直、参加いただけるとは思っていませんでした。

また、「#おかしつなぎ」に関係するツイートも適時チェックしていますが、ほとんど好意的な内容であることが分かり、勇気づけられました。やってよかったと思いました。

現在、チロルチョコのTwitterアカウントのフォロワーは約19万人ですが、「#おかしつなぎ」を始めて、5万人程度増えたと思います。ちなみにTwitter広告は一切利用していません。

「企画を進めるにあたり、特に注意したことはありますか?」
松尾社長:今回は収益の事はさておき、もっぱら生活者の皆さんを励まし、優しい気持ちになってもらえるように思っていることが伝わることを意識しました。昨今、いろいろな方から新しい企画の提案を頂戴しますが、この点だけは強く意識しています。
 
「最近、丁寧に利用者の投稿にリアクションされていますが、アカウントの運用はどのようにされていますか?」
松尾社長:今年4月から体制を変えました。今年、中途入社した社員がTwitter、Facebook、Instagramのアカウント運用を担当しています。4月15日の最初の投稿は、私も文言を一緒に考えましたが、以降は基本的に運用担当者に任せています。

今は、投稿の企画から返答含め、運用担当者に自由にやってもらっています。運用状況は適時チェックしていますが、特に心配はありません。なるべく、若い人の感覚を尊重してやっていくのがよいと思います。また、当社でもテレワークを進めていますが、このような形態であるため、今のところ支障をきたすこともなく運用できています。

「新型コロナウイルスの感染拡大はソーシャルメディアにどのような影響を及ぼしていると考えていますか?」
松尾社長:現状、ネガティブな影響を与えていることが目立っているように思います。この企画を思いつくきっかけとなった通り、他者を批判するようなメッセージを増幅しているように見受けられます。とても残念な気持ちになります。

一方で、「#おかしつなぎ」で投稿されたツイートにあふれる、人々を思いやるコメントや、参加したメーカーに向けられた感謝のメッセージを目にすると、少しですがネガティブな部分を打ち消すことにもつながり、うれしくなります。やってよかったと思っています。

「今後、どのような活動の広がりを期待しますか?」
松尾社長:
お菓子だけでなく他の食材、例えば主食になるような食材でも、同じように様々なメーカーが協力できるようになればよいと思います。

すでに、そのような動きも始まっています。例えば、「#パンつなぎ」、「#さなかつなぎ」などのハッシュタグも徐々に広がっています。

多くの方が予測されているように、今回の新型コロナウイス問題は、リーマンショック以上に経済にインパクトを与えると懸念されています。そんな市場環境の中、生活者も同業者も励ましあいながら業界を盛り上げていければ素敵だなと思います。

zoomキャプチャ

Zoomでインタビュー中の松尾社長


今回、時節柄、ビデオ会議サービス Zoomを利用してのインタビューでした。今回のコロナ禍をきっかけに、人々の価値観が大きく変わろうとしています。

企業の垣根を越えてすべての生活者が喜び、楽しめる「#おかしつなぎ」の取り組みは、ウィズコロナ、ポストコロナ時代における企業同志の関わり方、生活者との向き合い方を考える上で、大いに参考になるのではないでしょうか。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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【書いた人】
福田 浩至
株式会社ループス・コミュニケーションズ副社長、博士(情報管理)

多数の企業にて、ソーシャルメディアの効果的かつ安全な運営を支援しています。 特に、企業のソーシャルメディア活用におけるルール「ソーシャルメディア・ポリシー」策定や啓蒙教育など積極的な守りの仕組みづくりが専門領域です。

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