【BeBA TERRACE STORY】
vol.6 その先に、10年後を見据えて、樹木を植えるしごと。
盛岡駅の南側、岩手県立美術館をはじめ、
数々の文化施設が集約する盛岡市中央公園。
その一帯に整備されつつあるBeBA TERRACE (ビバテラス)は、
ゆたかな感性を持つ子ども、答えを自ら見つける子どもを育み、
「社会とつながる機会創出」を願う、
3つの民間事業者が主体となってつくる場所。
都市公園の価値向上をめざし、市民の皆さんと育てていく空間です。
さらに、その理念に賛同した事業者たちも徐々に加わって
「あそびとまなびをつなぐ場」づくりに邁進中。
ここでは、BeBA TERRACEに関わる事業者
それぞれの思いを、順次紹介していきます。
およそ800本の木々に囲まれた、芝生広場。
「ドングリ(コナラ)を中心に、サクラ、コブシ、カエデなど、四季を感じられるよう、10種800本近い木を植えてあります。何年か経てば、花見もできるんじゃないかなあ」。
芝生広場を眺めながら、子どもの成長を見守るように目を細める(株)仙北造園の佐藤康之さん。BeBA TERRACEには、小さな芝生(約800㎡)と大きな芝生(約4,000㎡)が整備され、それぞれ「まなびの広場」と「あそびの広場」と名付けられています。2022年6月には「まなびの広場」にてマルシェが開かれ、多くの人で賑わいました。
遊歩道の脇に目を向けると、風にゆらりとなびく草花。公園として整備されつつも、森や山野の佇まいが点在する風景はどこか懐かしく、これからの変化も楽しみです。
2021年度、2つの芝生広場をふくむ一帯の「BeBA TERRACEビバテラス・まなびの森庭プロジェクト 」は、緑の環境プラン大賞シンボル・ガーデン部門で、最高の国土交通大臣賞(※)を受賞しました。ランドスケープデザインを(株)キタバランドスケープが、建造物設計をatelier meieが担当、そして現地整備を担当したのが(株)仙北造園です。
そこに在る、樹木や石をどう生かすか。
個人住宅の庭づくりと共に、公共施設の屋外整備も手がける同社。など、年々公園整備の仕事が増えてくるなか、佐藤さんはこんなことを考えます。
「庭は、個人の要望に合わせて造りあげていきます。一方、公園は不特定多数の人が利用するので、個性や美しさだけを優先できませんし、長く利用される普遍性を重視すれば特徴ある造形物になりにくい。ただ、個人住宅や民間の仕事も経験するなか、どうすれば庭に近いものができるのか、常に考えています。この公園に関しては、大きな石が大量に掘り起こされたので、逆にそれを生かせば、この場所らしい公園にできると考えました」。
日本庭園の石組みを知る造園業者にとっては、公園内から掘り起こされた石も、自然ならではのパーツ。違和感なく存在し、ベンチがわりに座ったり、子どもたちも自由に登って目線の変化を感じるきっかけになる、と。キタバランドスケープの斎藤氏やatelier meieの木村氏も、“デザインの手を入れすぎない”ことを大事にし、意図的に“そこに在るものを生かす”考え方でした。石だけでなく、公園の端にある大きなヤナギやニセアカシアの木をシンボルとして残したことにも、その思想が現れています。
使う地域の人々が、公園を育てていく。
「遊具がなくても、緩やかな傾斜があれば冬にはソリもできます。芝生にシートを敷いて休んだり、低年齢の子どもたちも、安心して楽しめるように、設計チームと話しながら整備を進めてきました」。
実は、芝生広場の一部に、あえて野草を伸ばしてあるエリアもあります。小さな野花がほころぶ様を見れば人も足を踏み入れず、自然の境界になっているのです。
「市民の皆さんは、雑草ばかりで管理していないなと思うのかもしれませんが、これも実験的試みの一つと考えています。きっと、あのヤナギの木も数年後に効いてくるはず、人が歩けば道もできて、いい景観になる」と佐藤さんは話します
造園や公園整備においては、今だけでなく、10年20年先を見据えながら樹木を植え、管理するのだとか。雑木林が連なり、芝生広場の先にある川まで一体となる風景が育つのは、まだまだ先。盛岡のセントラルパークともいえる中央公園は始まったばかりです。
「使うことでできあがっていくBeBA TERRACEが楽しみです。来年の今頃は、岩手山を見ながらビアフェスなどできたらいいですね」と、佐藤さんはにこやかに笑います。
株式会社仙北造園 代表取締役 佐藤康之さん
盛岡市生まれ。東京農業大学農学部造園学科卒業後、造園、植物の基礎を学び、数百件の住宅外構や住宅庭園を手がけてきた。2006年、盛岡に帰省して(株)仙北造園を設立し、個人庭園や住宅外構設計施工、公園整備事業(大船渡埠頭公園、宮古臨海公園
宮古臨海公園、石神の丘美術館、平泉ガイダンス施設など)に取り組む。
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