#3 糸を紡ごう
2022年、盛岡市中央公園BeBA TERRACEにオープン予定の〈手紡ぎ・手織りの学校 Looms(ルームス)〉。開校前のプレ・イベント『ホームスパンで自分だけのマフラーをつくる講座』の一部をレポートしています。
▼これまでの工程についてはこちら
#1 ホームスパンとは?
#2 体験! 紡ぎの準備
今日はいよいよ、今回の講座で習うメインの工程のひとつ「紡ぎ」です。
紡ぎとは?
「紡ぎ」とは、羊毛や植物の繊維に撚りをかけて糸にすること。岩手の「ホームスパン」は、羊毛を手で紡いだ糸のみを使った織物作品のことを称しています。
ふわふわの羊毛からひとつかみの羊毛を引き出すと、繊維が出てきます。このまま引き出しただけでは切れてしまいますが、引き出した繊維に撚りをかけていくとどんどん繋がり、長く引き延ばせるようになります。
これが「紡ぐ」と言う工程で、撚りがかかると、糸は簡単には切れなくなります。
単糸(たんし)と双糸(そうし)
繊維に撚りをかけたものは「単糸」と呼ばれ、ホームスパンでは「単糸」を使用することが多いそう。さらに「単糸」と「単糸」を撚り合わせたものが「双糸」で、いわゆる毛糸のことです。編み物や丈夫な糸にしたいときは「双糸」を使用します。
今回の講座では「単糸」を紡いでいきます。
紡ぐときには角度が大切だそうで、15度〜20度が普通撚り。柔らかくしたいときは、より小さい角度を目指して紡ぐのだそう。角度を意識するのはとても難しいので、講座では「羊毛」を「糸」にすることに集中します。
紡毛機の仕組み
講座では、「紡毛機(ぼうもうき)」(いわゆる糸車)を使用して紡ぎの体験を行います。ひとり1台、専用の紡毛機でたっぷり練習ができる贅沢な時間です!
紡毛機には、電動のものもありますが、講座で使用したのは足踏み式。
ペダルを踏むと、「はずみ車」と呼ばれるホイールが回ります。
この回転が伝わり、羊毛の繊維を絡ませた「フライヤー」と呼ばれる部分が回転することで、糸に撚りがかかって、ボビンに糸が溜まっていきます。
私たちがすることは、①ペダルを踏んでホイールを回すこと、②羊毛から繊維を引き出して、③フライヤーに手で送り込んであげることの3つなのですが、この足と手のスピードのバランスがとっても難しい。体の感覚で身につけるもののため、鍛錬が必要です。
でもこの糸紡ぎ、難しいけれども、糸ができていく様がとても楽しく、あっという間に時が過ぎてしまう、至福の時間でした。
マフラーを織るだけの糸を時間内に紡げるのかなと不安もありましたが、練習から本番まで講座3回分の時間をかけて、受講生全員が自分の糸を紡ぐことができました。具体的な方法を紹介します。
紡ぎの工程
① 「導き糸」に羊毛を挟みこむ
フライヤーには「導き糸」がついています。羊毛を「導き糸」に挟み、ホイールを回して繊維を引き出しながら撚りをかけていきます。ホイールが逆回転になると、撚りが解けてしまうので、ペダルを踏む際は注意。最初ホイールは手で回して、撚りが安定したら足踏みを始めます。ペダルは、紡いでいる間、ずっと踏み続けます。
②繊維を引き出す
右手でフライヤーの撚りを調整しながら、左手で繊維を引き出します。
繊維を引き出す方法は、右手で引き出すショートドローと、左手で引き出すロングドローのふたつの方法を教わりました。
③ 引き出した繊維に撚りをかける
右手を放すと、フライヤーの回転が伝わって、撚りがかかります。
④撚りがかかった糸をフライヤーに送り込む
右手を使ってフライヤーに糸を送り込みます。足を踏むスピードや糸の太さによって撚りのかかり加減も変わるので、体で加減を覚えていきます。
この練習を、講座では、ペダルを踏む→糸を引き込む→練習用の羊毛で紡ぐと3ステップに分けて行い、本番の糸紡ぎに取り掛かりました。
撚り止め・計測
紡いだ糸は「大枠」という道具に巻き取り、蒸して撚り止めをします。そうすることで簡単に解けない糸ができます。
講座では、第1回〜3回に分けて少しずつ紡ぎを練習。終了後に毎回講師が撚り止めをし、「綛(かせ)あげ」と 呼ばれる道具で長さを測った糸を持ってきてくれました。
1周が1.45mの「綛あげ」に何回巻きつけたかで長さが測られています。通常は、この後、「小枠」と呼ばれる道具に移し、「整経」の工程に移ります。
約3回分の講座の時間を経て、練習から実際にマフラーを織るための糸紡ぎを終えました。
次回はいよいよ、この手紡ぎ糸で、マフラーを織っていきます。
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