XXV① -幼い記憶と束縛
ふと思い出した幼少期の記憶。当時5歳ほど。
お昼時の白い光がレースのカーテンから零れた照明。
幼児用ブロックの正方形と長方形で作ったマイク。
ウエディングドレスよりも綺麗なシーツのドレス。
観客は溢れるばかりの愛情の目をした母と祖母。
動く度、声を出す度、甘い歓声が聴こえる。
.......愛されていた。記憶。
いわゆる一般的な家庭に生まれ、不自由もなく
祖父母にも支えられ生きてきた幼少期。
教育の方針か、幼稚園には通わなかった。
閉ざされた世界で目一杯の愛情を受け育った。
嫌われることの無い世界だった。
義務教育が始まり、世界は大きく拡がった。
自分は世界一可愛くないし、天才でもない。
ひとやものに嫌われれば生きていけないし、
受け入れなければ孤独になると本能で気づいた。
そんな私は友人の「褒め言葉」を
拾い集めて自分に落とし込み上手く形成することで
その場に形を保っていった。
閉ざされた世界から解放は同時に
好奇心という欲望を創った。
行動的な好奇心、他人への好奇心、
ものへの好奇心、そして自分への好奇心。
新たな好奇心を進める度に驚き感動した。
私にも欲しいと思った。全て取り込みたいと思った。
他人への好奇心に対してもそうだった。
そのうち、自分が何者かが分からなくなった。
コミュニティや人ごとに「最善」を
提供するようになった。
生きやすかったし、今も生きやすい。
でも、ふと我に返るたびに
とてつもない消失感と黒いなにかに襲われる。
「本当のあなたはどこにもいない」
「あなたは孤独」
友人や恋人が居ても、全ての人格を見せる相手は
もちろんいない。
私の100%は私にもわからない。
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