ひらがなのてざわり【Filling/月ノ宮よる】
答案用紙は解らなくても埋めて出します。ナガイです。
今回は月ノ宮よるさんの『Filling』について。
音楽、歌、動画を月ノ宮さん、動画中の家具などのオブジェクトは全部3Dでこちらはステラベリーさん制作だそうです。
「よ、良すぎる……」
曲も詩も動画も流れる空気も全部良すぎますね。無機質だけど怖くないの凄いですね。色使いはもちろんなんですけど、例えば
あたまのなかみを ゆらしてとりだす
こぼれたかけらを すくって はこにつめる
漢字のない世界で不思議と歌詞がスッと入ってきて、「あ、過去の思い出のことを指してるんだな……」ってなりますよね。試しに漢字にしてみましょうか。
頭の中身を 揺らして取り出す 溢れた欠片を掬って箱に詰める
急に猟奇的になりますね。漢字を使わないこと含め、どういった印象を与えるかにすごく気を使っている気がしますね。
手書きアニメとか漫画とかって製作者が意図してそこに描き出さないと何も存在し得ないんですよね。何かしらの意図が会って初めて存在する。なので、製作者は歌詞にしろ、まず動画上に書くか書かないかという選択がありますし、その上でその歌詞は演出として出すのか、それとも読ませるために表示するのかとか色々考え得るところがあるわけですよね。この点で月ノ宮よるさんってスゲー……となりますね。
目に見えるもの以外でも、細かい音、フィルとしてのリール音だったり、タイプ音を入れてみたり音に対しても手触りとか温度感が揃っていてたまらないですね。「やわらかい」とか「やさしい」だけではなく、ベットの上にばかデカイシンセが置いてあって、とにかく、「手で触って心地よいもの」がたくさん詰まってる作品ですよね。
そう考えると歌詞そのものも「思い出」と一つのワードで表現するのではなく、「思い出」の輪郭をなぞるような歌詞になっていて、ほんとに全部に月ノ宮よるさんのていねいさが見られますね。すごい。
月ノ宮よるさんの作品のてざわりが気に入った方はぜひ他の曲も聴いてみてください。どれも、なんどもさわって確かめたくなるような素敵な作品ばかりですので。