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『ファミレスを享受せよ』やったぞ~なぜか『和解堂』の話もするぞ~

Steamのページを張りつけたら英語になってしまった。何ならサムネも英語版。どうして・・・。


ともあれ昨日クリアしました。

時が止まったようなファミレス『ムーンパレス』。外へ出ることはできない。停滞した時間と、とうに状況に倦んで定位置に留まるばかりの人々。
そんな中、新参の主人公が動き回ることで事態が動く。

停滞と倦み疲れた空気が良い

雰囲気と言うか、やっぱり世界観第一だなあと思うゲーム。
登場人物はみんな虚ろな目をしているし(王様は糸目だけど)、ファミレスの中は異次元どころか(絵のタッチのおかげで)物理的にも歪んで見えるし、外には出られない。
それぞれのイラストは深夜の照明と陰を思わせる黄色と青で統一され、のっぺりした印象。
危険でも不穏でもない状況なので、主人公は躊躇なく動き回れる。だが異常ではあるので、やはり変な展開になる。
主人公も常識はありそうだがこの状況でパニックになることはなく、他の人たちとの会話も緩いので、ここに来る人間はみんなどこかしら鈍いんじゃないか?その辺が入店資格なのか?・・・などと考えたりもした。

(・・・さっき「不穏でもない」と書いたが、もしかしてそうじゃないのかもしれない。このゲーム不穏だなあと思う人もいるんじゃなかろうか。意味不明な状況だし。)

話を人物の方へ戻すとして・・・。
この会話の感じ、リアクションの感じは、個人的にはだいぶ好きな方。というか大袈裟なリアクションが苦手。たぶんそういうキャラを見ると、うるせえちょっと大人しくしろよ、ぐらいのことは思うプレイヤーである。

『ファミレスを享受せよ』の魅力について考えてみる

このゲームで良かった点はなんだろう?と考えてみたのだが、深夜のファミレスが永遠化してそこから出られない、という舞台設定はやはり最高だと思う。深夜のファミレスってドライな停滞した空気がありそう。いやファミレス滅多に行かないし深夜に行ったことないから想像ですが。
あとなんだかんだ言って冒頭のように、勉強していて「そうだファミレス行こう」って歩いて行ける環境はうらやましい。

それから、キャラクターについて。その表情と佇まい(座ってるけど)は固定されて動かない。しかし淡々と行われるやり取りの中に、相手の人となりが見える。

主人公と同じく激しいリアクションはしない(そういう世界)、ただ困惑したり驚いたりしているのが字面から伝わってくる。
というかこの台詞、フォントや表示位置も含め、すごく見た目重視だな・・・。単なる伝達の『会話』というより『活字の会話文』として読まれることを意識して作られているように思う。

最終的にSF的な話になっていくが、このくらいのふわっとした、設定を語りすぎないのも良い。説明が詰まりすぎるとちょっと把握するのがしんどい。ED後のギャラリー(Steam版)ではいろいろと設定公開してくれていたけど、ちょうど良い塩梅だったな・・・。
処刑人や同胞たちの性格、というか種族的な傾向はちょっとユートピア的だったか。

ちょっと気になったのはED2への分岐ルート。
「ある人物の前でアイテムを使う」→「他の各人物の前でアイテムを使う」→「最初の人物のところへ戻る」という行動で、一気に事態が解決する展開になる。
ここもう少しボリューム欲しかった。アイテムでデウスエクスマキナ目覚めさせちゃった感じ。そういえばあの世界では、処刑人というのは神のような立場でもあるなあ。

そういえば音楽は自作されてるそうですね。すごい。なんだろうそれ、なんでそんなことできるの?ぐらいの気持ちを持ってますよ私は。
音楽のおかげでこの停滞した世界にどっぷり漬かれますね・・・ファミレスの人たちがみんなうらやましくてならないんですが、そういえば自分は昔から入院とか留年とかの願望があって、今は休職願望があるけれど、要するに停滞した環境で休みたいんでしょうね。

で、なんで『和解堂』が出てくるの?

という感じで『ファミレスを享受せよ』はとてもおすすめできるのですが、これをSteamでプレイする最中、どうしても頭から離れないゲームがあった。
『和解堂真の事件簿』である。
実はちょっと前に、同じくSteamの4作品セットになっている奴を買ってクリアしていたのだが、こちらは何か惜しいというか、いまいちだった。

『和解堂真の事件簿』と『ファミレスを享受せよ』の共通点

こちらのゲームは主人公が刑事、舞台は日本。殺人事件の捜査をするため、いろんな人物の話を聞いたり、画面上のもの(事件現場とか、部屋の家具とか)を調べたりする。

このゲームの仕組みが『ファミレス』と似ている。会話の中から『話題』をゲットし、それを持っていると、人物から新しい話を引き出すことができる。
ということで、ゲームプレイ中の操作とか、キャラとの会話からヒントを得るという点が似ているのに、なぜ和解堂は面白くなかったんだろう?という疑問が、『ファミレス』プレイ中に頭の隅にちらついておりました。
ドット絵に音楽がマッチしていたし、雰囲気作りは上手くいっていたと思うけど、自分は何が不満だったんだろうか。

『和解堂』への不満

確実に一つ言えるのは、話題システムが手間だったことだ。
『ファミレス』と違って「入手した話題をワンクリックで尋ねる」ができず、「入手した話題をいったんアイテム欄にセットし、再び話しかけてその話題を選ぶ」という部分はものすごく手間だった。
この「新しい話題を入手して尋ねる」がゲームの肝なので、何度も繰り返す必要があるのだが、この「話題のセットし直し」の手間が無限に増えていくのはきつかった。『ファミレス』と違ってキャラが複数の場所に点在していて、移動しなきゃならないのも大変だったなあ。

他にシステムに関して言うことがあるとすれば、章の終わりにある情報整理のシーンか。
謎の石碑が並ぶ空間に飛ばされ、その石碑が事件について問いかけてくる。それに対して、プレイヤーは集めた証言や証拠から一つ選んで答える。

ああこれ推理もののゲームでよくあるアレだよなあ・・となったのだが、この「よくあるアレ」は、推理ものではやむを得ず導入されるのだろうが、ゲームでは悪手じゃなかろうかと自分は思っている。

もしこれが、映画や小説など「プレイヤーの操作なしに話が進行するもの」なら、鑑賞者が推理を間違っていようが何だろうが問題ない。
でもゲームでは、制作側はプレイヤーに「正解」を答えてもらわないとならない。そうしないとゲームを進められないからだ。
この「正解」を答える作業が、個人的にはかなり苦痛だ。結局のところ総当たりだし。
そもそも、問題文の表現によっては、こちらが答えを一つに絞り切れないと感じる場合もある。だいたい「正解」以外駄目なんだから推理も何もないよな・・・。

ともあれこの推理パートの「正解を答えないと駄目」システム、もうゲームというものの根幹を殺しに来ていると思うので、自分は非常に嫌い。本来、推理ゲームなんて推理の部分にゲーム性あるんじゃないの?ノベルゲーだって選択肢ぐらいあるよ?みたいな気持ち(この辺のことは常に『シグマハーモニクス』を思い出してしまうわけだが・・・)。

という感じで「話題セットの手間」と「情報整理シーンの『これ推理じゃなかった』虚無感」は、和解堂シリーズのマイナスポイントとしてかなり大きいと思う。

登場人物たちとの関わりの有無はでかい

あと『ファミレス』にあって『和解堂』にないものとしては、個別のキャラの掘り下げがないということ。
これは刑事という立場上、仕方のないことだけど、事件の関係者と親しくなることはまずない。あるキャラだけは、一度事件で関わった縁で他作品に出てくるような関係性にはなるが、同行することはない。

ゲームを進める。みんなから必要な証言だけ集めて、なんとなく事件の概要が見えてくる。会話から得られるのは事件に関することだけ。『ファミレス』のように、人となりを知ることはない。

何なら和解堂自身がどういう人物なのかも見えてこない。

一応、4作品プレイすれば一部の過去は知ることができるし、ゲームの内容からして真面目に仕事をするタイプだとは思う。あとたぶん独身。
だけど、好きな食べ物は?休日はどう過ごすの?出身はどこ?・・などなど、結局こいつどんな奴なんだ?というのは最後までわからなかった。

せめて相棒がいれば良かったのかもしれない、と思う。和解堂とそれなりに付き合いがあり、一緒に捜査してくれるような人が。ワトソンほど優秀でなくていい、ヘイスティングスでいいんだ。あとヤスみたいな部下がいても良かったなあ。いやヤスは犯人だから駄目か。

とにかく、そういう風に和解堂の仲間がいたら、無味乾燥な「情報整理シーン」も、石碑ではなく相棒とのやり取りになっただろう。考えてみればあれは和解堂の脳内空間みたいなもので、自問自答しているだけだ。
彼は証言と証拠を拾い集めるが、他のキャラと意見のやり取りはしない。つまりゲーム内で、プレイヤーが見て楽しめるようなコミュニケーションはほぼ発生しないわけだ。残念。

事件そのものについて

では、事件はどうだろう。面白かったか?

よくわからない。惹かれる話ではなかった、みたいなことしか言えない。殺された人がいて、犯人は不明。手がかりを探す中で、被害者と加害者の抱える事情は見えてくるものの、淡白というか・・・そう感じるのは、ドット絵ゆえのあっさりした描写のせいかもしれない。
でも、事件そのものが面白いケースって新本格とかトリックが凄いやつだろうし、そうなってくるとゲームで扱うのは無理だろうなあ。

描写については、犯人を追い詰めるシーンもちょっと謎だったな。
事件のクライマックスで盛り上げようとしているのはわかったが、自分としては盛り上がらなかったし・・・というか石碑、なんであなたそこにいるの・・・?脳内の存在だよね?あ、脳内の存在だから、和解堂にしか見えてないのか。だったらいてもいいか。

比較のまとめ

まとめてみると、『和解堂』が個人的に駄目だったのは、

  • 手間のかかる仕組み(話題のセットし直し)

  • ストーリーで「無駄口」「雑談」が発生しないような作りになっていること(相棒、親しい人物が出てこない)

  • 盛り上がりに欠けるストーリー展開

こういうところだと思う。
そういえば、ドット絵の画面で雰囲気が出てるなあと最初は思ったものの、わりと早い段階で「単調だなあ」と感じた。良い部分もあったけど、マイナスポイントがどんどん積み重なって埋もれてしまったのかもしれない。

一方『ファミレス』は、行ったり来たりしてキャラに話しかけるだけだったものの、

  • 会話の手間が少ない(新しい話題のセットし直しがない)

  • そもそも雑談がメイン。キャラ同士のかけあいを楽しむゲームになっている

  • 淡々とした中で劇的なことが起きて、主人公があんなことやこんなことになる

ということで『和解堂』とは反対。
こちらも異常事態=事件を調べているようなものだけど、会話の中で主人公のリアクションがちょくちょく見えて、プレイヤーは自分の操作キャラのことも知れるので、この違いは大きかったのでは?



記事の半分以上が『和解堂』になってしまった・・・。
でも『ファミレス』はすでにいろんな人がプレイしているし、なんならSNSのハッシュタグで探すと実況プレイの宣伝ばっかり出てきて辟易したレベルなので、今更自分が何か言う必要はないか。うん。


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