東京都同情塔を読んで
面白かった。
バベルの塔の話がモチーフになっているが、単純にそれに寄せて読み解くのが勿体無いぐらい色々な視点が盛り込まれいて面白かった。
AIではなく、血肉の通った人間が描いた文章だ。
この作者の本や考え方をもっと知りたいと思った。また、所々に意味ありげな言葉(韻)が散りばめられおり、それらを自分勝手に解析するのも楽しみとして残った。
どこを切り取っても想像が膨らむ文章で単に「これはこういう本だ。これがテーマだ」と意味付けるのはもったいないが、やはり作者が伝えたかったことを自分なりに解釈するとすれば、「人間の傲慢さが、いずれは人間同士の言葉のやりとりを成立させなくするよ」という警鐘かなと感じた。
その象徴的な場面が、幸福論者が殺されるシーンだ。ただ、幸福論者が犯罪者に同情の必要性を説くエピソードは、説得力があり、自分の中にも小さな幸福論者的なものがあるという事を自覚させられ、その傲慢さは他人事とは思えない。
あと、Twitterのくだりも考えさせられる。確かに、Twitterが出来た当初は、「〜なう」のような誰かに伝える意図をもたない「つぶやき」を発信するツールだったが、今では、誰かに自分の考えを「主張」し、時には押しつけるツールになっている。これも、傲慢さの一つの現れではないか。傲慢さを精巧に隠すためのAI技術という視点でみるとさらに色々考えさせられる。
自分の貧相な読解力では、新国立競技場のエピソードがこの物語にどう絡まっているのか分からなかった。これは、他の読者の感想コメントを読ませてもらいながら謎解きしたいと思う。
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