とりあえず、ロシアンルーレットな思い出。
このオリンピックがはじまってからずっと違和感があった。
体操を見ていて、改めて気付く。
ロシアの選手がいない。
何が正しいのか……という問題はあるけれど、強いライバルの不在は、純粋にさみしい。
と、ロシアのことを考えていたら、ロシアンルーレットな記憶を思い出した。
そう、ロシアンルーレットとは、戯れなのだ……
大学2年の春、サークルで新歓バーベキューを開催することになった。
当日の早朝、ケータイが鳴る。
「今日、来るよね?
でさ、米、持ってきてくれない?
うっかり用意しそびれちゃってさ。
頼むっ!」
「はぁ……」
先輩……
ぜったいに確信犯だろう。
寝起きで反応しきれない東北人の、米の仕送りを狙うとは……
とはいえ、断りそびれたのだ。
用意しないわけにはいかない。
早炊きで3合を2回炊き、おにぎりをつくる。
シャケを入れたり、ふりかけをかけたり、シーチキンを入れたり……
1人で黙々とにぎるうちに、
ふと、思いたってしまったのだ……
新しい仲間が増えるというのに、ありきたりなおにぎりだけで良いのかと。
新歓にはサプライズが必要なんじゃないだろうか……。
「おー、おつかれ。ありがとね。
お、なんか色々あるじゃん!」
大量のおにぎりを見て、先輩もご満悦だ。
バーベキューはつつがなく進んでいく。
一年生たちも楽しそうだ。
お肉もいい感じに焼けてきた頃、おにぎりを配る。
「おつかれさまです。
先輩もどーぞ……」
「ありがと。じゃ、これで。
いただきまーす
(パクっ)
ん?…… んん?!」
先輩の前に、3つのおにぎりを出して、自分で選んでもらった。
そして、先輩は見事に当たったのだ……
アーモンドチョコ入り
おにぎりに。
「うわっ! 本当にロシアンおにぎり
やったのー?」
「一発で当たるって、引き強いな!」
先輩以外にはロシアンおにぎりが含まれていることを伝えていたので、大爆笑。
にぎやかに会は進んで行った。
さて、ロシアンおにぎりがうまく発動して満足した私は、少しくらいは新入生ともコミュニケーションを取らないと……と、一年生がかたまるあたりに顔をだした。
すると、
(サササッ)
近づくと、心なしか距離を置くメガネの一年生がいる。
「ちゃんとお肉食べられてる?」
「……大丈夫です。
おにぎりは、いらないです」
(ススススッ)
さらに少し距離を置かれる。
ん?? なんか、怯えられている?
このメガネくんとは、ここから3ヶ月くらいほぼ触れ合わずに過ごすことになる……。
「冗談じゃなく、
本当にアーモンドチョコおにぎりを
食べさせるような人、こわい。
関わるのためらうでしょ」
と、
のちに夫となったメガネは語る。
とりあえず、夫の私に対する初対面の印象は、ロシアンルーレットの人(ヤベー奴)だったらしい。
ここからどう転がって今に至るのかは……また別のお話で。