白、一色、色々。
転職してしばらくの間、わたしの仕事の予定表は白じろしていた。
さっぱりとして、新入り感が出ているなぁと眺めていたのだが、入社して1ヶ月、すでになんだか、アレやコレやと色付いている。
みんなの忙しい合間に教えを乞いつつ、手を出せそうなものを見つけて「こんな感じだよねー」と対応していたら、「アレできる?」「コッチやって〜」と予定が埋まってきた。というか、思いのほか早めに忙しくなりつつある。
スケジュールが色付くのは馴染めているということ。いい傾向だと思っている。
が、ランチの“公園観察”のチャンスは減っている。
久しぶりに昼、公園に行く。
凧はハグレたまま、北風に吹かれていた。
冬だというのに時期ハズレに一輪咲いていた白い花はどうなっただろうか。
枯れるのではなく、綺麗にふちだけ変色している。これはこれで金のふちどりが付いたみたいでなんだか特別感がある。
公園には鳥たちもいる。
最初に来た時、鳩の群れのすみっこに1羽、白い羽のコが申し訳なさそうにいた。気になっていたが、いつの間にか真ん中の方でデンと過ごすようになっている。馴染めたようだ。
それにしても、相変わらず人が多い。お正月太りを気にしているのか、これまではいなかったトレーニングまがいの動きをしている人々もチラホラ……。ゴザなしで座れる場所はほぼほぼ埋まっている。キリンの近くにある小さな山形のアスレチックも、各面に人が座っていた。
そこに1人の男性が颯爽とあらわれた。
こなれた感じの細身のジャケットとパンツ。なんだか“スマートに仕事してます感”を漂わせている。
スマホを片手に座る場所を探している様子。遊具も含め、この近くには座れそうな場所はなさそうだけれど……と、観察していたら、
マジかっ!?
アスレチックを見つけると迷うことなく頂上に登った。まわりの人を気にすることなく、頭を越えて。
すごっ。
まわりの人がみんな同じ顔でポカンとしていて、思わずふへっと笑ってしまった。
アスレチックに座っていた人たちは、ひとり、ふたり、しずかに離れて行く。
尖ったビジネスシューズがペカペカして、そこだけいつもの公園ではない空間に見えた。
どこでも一瞬で自分の空間にしてしまえるのは純粋にすごいことだなと驚きつつ、会社に戻る。
きっと、あの人の予定表は、自分ベースの予定一色で埋まっているのだろうな……
「あ、おかえりなさい。明後日、△△が……」
「それと、××遅れるっぽいよ」
ぼんやりトンガリ靴のことを思い浮かべていたら、声をかけられた。
「……あ、はい、明後日、と。
遅れる? そしたら、
すぐ動けるよう準備しましょうか?」
予定表を出す。
いろんな人との、いろんな予定をさらに追加する。
わたしの予定表を自分色に染めることはむずかしそうだ。
それでも、誰かの影響を受けて予想外のことが起きたり、協力しながら完成に向けて動くのは、ひとりでよりも、ちょっとテンションがあがる。
白よりも、一色よりも、色々ごちゃ混ぜが性に合っているのだろう。
そんなことを思いながら、午後もみんなでわちゃわちゃしながら働くのであった。