とりあえず、本がいるから大丈夫!
子の入学式である。
着慣れない制服に身をつつみ、緊張した面持ちでとなりを歩いている。
「自己紹介で使いなよ」
と、架空の出鱈目プロフィールを作ってみたが、反応が薄い。
自分が学生の頃、新しい環境でどうやって友だちを作ったか思い浮かべてみる。
うーん……
良きアドバイス的なものは何もない。
それで気づく…
この問いに答えられないいちばんの理由は、わたしが一人でいることをあまり怖がらないタイプだからだ。
学生時代にあった仲間はずれも、
「誰もいなくても、図書室の本読んでたらなんとかなるか〜」
と、意に介さずにいた。
むしろ、ここぞとばかりに古いミイラの本(たかしよいちのシリーズ)を読み漁っていた。
そうなると周りのほうが気になるようで、別の子が声をかけてくれて、なんだかいつの間にかまた遊んでいた。
(今も過去も、周りの人に恵まれているのだと思う。)
だからといって
「動かざること山の如し。
本の山の前に陣取れ!
仲間が集まるぞっ!」
なんてアドバイスが役立つわけがない。
式が終わり、解散となる。
まだ親しくなるほど話す時間はなかった様子。
「まぁ、明日からだよ」
と、記念写真待ちの長い列に並ぶ。
手持ちぶさた……
まわりも親と話すしかないといった感じ。
そんな中、子が動き出した。
おもむろに、胸ポケットから生徒手帳を取り出すと、、、
熟読しはじめたのだ。
それで
「コレ、どういうこと?」
とか、
「この言葉、どんな意味?」
とか質問してくる。
さらに、その様子を見ていた周りも、なぜか生徒手帳を取り出し、話題にしはじめる。
生徒手帳、熟読仲間が……
コ、コレは……!?
動かざること本の山の如しじゃないかっ!!
そんなわけで、とりあえず、本とか、生徒手帳とか読んでたら、なんとかなりそうな気がした。