とりあえず、扉の先に……
転職活動中の交通費は、なかなかに負担である。
どうせ出て歩かなければいけないのなら楽しいこともしたい! と、同じ駅にある美術館に寄る。
昭和2年につくられた建物は、元は銀行だったそうで、市民センター→美術館とその役割を変えてきた。
ライオンの取っ手を“テチテチ”したい衝動を抑え、中へ。
1階のエントランスを入ってすぐのところに、何やら素敵なムードのホールが。何か準備をしている風だけど、まだ扉は閉め切られている。
気になりつつ、常設展を開催している5階へ。
10月6日までの「千葉市美術館コレクション選」は、鏑木清方の『高尾ざんげ』を中心に、所蔵する美人画、深沢幸雄の初期版画、辰野登恵子特集だ。
鏑木清方の作品は、楚々として涼やか。どれも素敵なんだけれど……個人的には近寄りがたい。
将棋の駒の柄の着物をたくし上げる姿があだっぽい『瀧のしら糸(甲斐庄楠音)』や、力強い線と鮮やかな朱×碧のコントラストがヘルシーな『印度更紗(平塚運一)』の方が惹かれる。
そして、いつでも大好き! 月岡芳年!
続いて抽象画が並ぶ辰野登恵子特集。
抽象画を見ると、まだ文字が読めなかった頃に本の絵を見て勝手に物語をつけていたことを思い出す。
今回も勝手に絵の中に入って遊んできた。
確実に間違えている。が、遊びとしてご放念いただきたい。
満足して扉を出る。4階へ。
奥には、
静かすぎて中に入るのをためらったが、思い切って入ってよかった。
同じ4階には、また別の扉が。
手触りのイメージを参加者がカタチにして、展示するワークショップ。
こういうモノには参加せずにいられないタチなのだ。
職員さんのお話を伺い、手当たり次第さわる。
そして、もちろん自分も作る!
みんなの作品をざっと見て、まだ作られていない触感を思い浮かべてみる。
カクカクして硬そうなイメージは少ないな……
それならっ!
なんだか奇抜なものを作ってしまった?
なじまない?
などと心配したが、
最近の諸々の尖った心情風景も、みんなの勢いに飲み込まれていく。
愉快だ。
お話を伺ったところ、今回のワークショップは大人の来館者の参加率も高いそうだ。
なんだ、愉快に吸い込まれちゃうヤツは、わたしだけじゃないじゃないか!
はぁ、楽しかった!
1階に降りると……
さや堂ホールの扉が開放されている!
職員の方にどうぞ中へと誘われて足を踏み入れると、
紙には蓮の葉の香りが練り込まれているそうで、部屋に足を踏み入れると、若い落ち葉の香りに包まれる。
扉を出て、そばにいた職員さんに「誰の作品? タイトルはあるのか?」と聞いてみたところ、
「今夜のレセプションで発表になるかもしれない。職員もまだ詳細は聞かされていない」とのことだった(情報が入り次第追記予定)。
「でも、なんだかわからないけれど、
いいですよね!」
と、職員の方と話し、ウキウキと千葉市美術館を後にした。
とりあえず、千葉市美術館がこんなに遊べる美術館だとは思っていなかった。相当愉快だった。
と、そんな気分も束の間、お祈りメールが届きはじめている……。が、大丈夫。
きっと、止まらずに動けば、面白い扉を見つけられるはずだ。