とりあえず、禁断のコーンアイス
お祭りの紅く艶やかなリンゴ飴、そら色のソーダフロート、モコモコしたクリームがかわいいバターケーキのプードル……
子どもの頃、食べないようにしていたものたち。
見た目が華やかな食べ物は往々にして甘ったるく、子どもでは食べきれない。
「どうせ食べきれないでしょ」
残すと母が嫌な顔をする……それがいやで、欲しがらないようにしていた。
コーンにダブルで重ねたアイスも、そういうものの1つだった。
(きっと……食べきれない。
ダラダラ溶けて嫌な顔をされる……)
そう、思い込んでいた。
この思い込みは大人になってからもなんとなく残っていて、どこでアイスを頼む時も、シングル×カップでしか頼めずにいた。
だが……
前を通るたび、ずっと心惹かれていたお店。
雨の中、予定をこなした安心感で、つい手を出してしまった……
“禁断のアイスに手を出してやったぜ感”に浮き足立ちながら外に出ると、
わぁっ! チョコアイス色のハトだぁ〜!!
これ、一緒に撮ったら、可愛んじゃね?!
アイス片手に追いかける。
チョコアイスちゃん(ハト)を静かに追いまわす、ハトストーカー。
そんなアホなことに時間を費やしてしまった罪は重かった……
ペタリ…… ポタリ…… ベトベトベト……
すごい早さで溶け出したアイスは、濁流の様にわたしの左手を飲み込み、銀座を歩いては行けない“禁断の手”を完成させたのだった……。
とりあえず、そんな状況でもアイスは濃厚で素晴らしい美味しさだった。カカオとヘーゼルナッツの香りが、数時間たった今でもありありと思い出せる。
が、
次にまた楽しむのなら、カップでオーダーしようと思っている。
子どものように気を散らせてしまう私には、コーンアイスはやはり、禁断の品なのだ。