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【それが好きだと叫びたい】身近で目にするものの美しさを、徹底的に見逃したくない!

ここのところ、けっこう仕事で気を張っている。転職後、約2ヵ月。役職が上の人、他部署の人と話す機会が増えてきている。

同じ部署の人となら、実作業をする中でだいたいわかり合える。一緒にいることが多い分、取り繕っても仕方がないので、なるべく素のままで話す。
しかし、普段、実作業を共有していない人たちと話すとなると話が変わる。新入りはどうしても「この人、ちゃんとわかっている? 信頼できる?」という“話を聞いてもらいづらい”状態からスタートしなければいけない。
伝える内容を簡潔に整然とは大前提で、まごつかず、はっきり、明るく、そして相手のリアクションに動じずに応答する……めっちゃ簡単にいうと“ビビらず話ーす!”という気合いがいる。
どーせ仕事をするなら、できる限りいいものを仕上げたい。そのために、対等に意見を聞いてもらいたい(マウントしたいわけではない。必要なら頭はいくらでも下げる! ペコりは得意)。対等に……となると“ビビらず”のスイッチを入れないといけないので、それがちょっと疲れる。

と、前振りで御託を並べてみたが、そんな状況の今、心に飛び込んできたものを見に出かけてきた。

東京ステーションギャラリー
【宮脇綾子の芸術】

頭が仕事寄りに向いていると、夢中になる心地よさはあるけれど、生活の中に隠れている“ちょっとした素敵”を見落としてしまいがちになる。
その“ちょっとした”の感度が弱まらないように何かないかな? と探していたら、「紫キャベツ(はりえ日記第13巻)」の断面が目に止まった。
【生誕120年 宮脇綾子の芸術 見た、切った、貼った】の作者・宮脇綾子はどうやら断面が好きで、キッチンにある野菜や魚を観察して「自然のものにはどれひとつ同じものがない。美しい」と作品にしていたらしい。身近なものの断面や干物の色や質感の変化を嬉々として見つめるなんて、なんだか気が合いそうだ。

思い立ったら即行動! オンラインチケットを入り口で提示すると、引き換えに紙のチケットをもらえる。

おや? このチケット……

わたしが受け取ったチケットは「さしみを取ったあとのかれい」という作品だったが、これ……ほかの作品のチケットもあるんじゃなかろうか? 
くっ……。バリエーションを知りたい!! 
一瞬止まり、めちゃくちゃハッとした顔をしてしまう。入り口のスタッフさんを警戒させてしまった。
うぅ……見比べられないけれど、いいのだ。だって、ミイラ好きに、刺身後の骨はぴったりの作品だもの。

ちなみに、フライヤーも3種類ある。

表面
裏面

素敵なのは、裏面もすべてちがう作品を使っていて、レイアウトも変えているところだ!
宮川綾子は気に入ったモチーフを様々な角度で観察し、そのちがいの美しさを見せるために並べて作品にしている。フライヤーからも、じっくり観察して見比べてごらん的な精神を感じる。

さて、展示室に入って驚いた。綾子さん(急に距離感近っ)って、アプリケ作家だったのね! SNSで見かけて絵だと思い込んでいたのだ。
フィーリング重視ではあるが、鑑賞するならきちんと解りたい。各チャプターの解説を読み込んでいく。

創作をはじめたのは40代。生活の中にあるモチーフを徹底的に観察し、これまた生活の中の素材(布、紙、コーヒーフィルターなど)を使って表現する。モチーフ個々が持つ色、質感の微細なちがいを表現するために、膨大な量の布を収集し、レースや古裂、網などの素材の特性を生かし作品を生み出す。さらに、刺繍で線を入れることで、透明なガラス器なども表現するようになると、さらに創作の幅が広がる。

来館のきっかけとなった野菜の断面たちも、微妙に色や質感がちがう布、時にはビーズなども使い少しずつ重ねることで、アプリケとは思えない写実的な美しさだった。館内は写真撮影できないが、かなり近づいて見ることができる。WEBや印刷物でフラットになってしまうと見つけにくいものがふんだんにあり「綾子さん、実物の観察はやっぱり必要ですね!」と、いないのに話しかけたくなる。

個人的に好きだった作品は、「干しがれい」の屏風だ。横一列に並んだかれいたちは、皆似ているようで、皆ちがう。うぅ、地味かわいい。デスクに飾りたいっ! 帰りにミュージアムショップでハガキサイズで販売されていないか探してしまうくらい気に入った。干からびシリーズ(勝手に命名)でいくと、「フィルターのするめ」、「骨・美味なり」も好きだった。

また、実物ではあり得ない“柄”入りの布を見立てた作品「どくだみ(chapter6に展示されているもの)」なども、面白かった。子どものころ、薄暗い空き地で見たどくだみを思い出し「実物にはないけれど、確かにあの濃い緑を払ったら、こんな柄がかくれていそうだ」と、妙に納得してしまった。
対照的に、刺繍の線も用いた「ガラス瓶の中のつる草」は窓辺で光を受けているようで素敵!
毒も光も表現できる……本当に、徹底的な観察の賜物なんだろうな(さらに、観察し、削ぎ落とすデザイン的な表現もできる。すごい)。

徹底的であることに感心しながら、終盤の展示室へ。そして……

布・紋様集×無数……
(これはフライヤーの瓢箪柄なので別物だが、とにかく徹底して並べ見比べられる)

無数に展示される「縞魚型紋様集」「木綿縞干柿型集」……。収集した布を切り抜き、徹底的に見本集にしたようだ……。

(こっわっ……(小声))

いや、畏敬の念である。リスペクトだよっ!
綾子さん……その徹底ぶり、まじ驚愕っす!!

わたしも機能美のある道具を並べて眺めるのは
好きだけれど、綾子さんの収集&並べる力は
ハンパない。

思い立って出かけたのに、とても面白かった。日常のちょっとした美しさを見つけるパワーをもらえた。
徹底して、徹底して、徹底(×無数)して観察することを忘れずに、また面白いものを見つけて行こう。

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