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ショートフードエッセイ『ほくほくと優しく』

焼き芋の季節が来る。嬉しい。

石焼き芋屋さんをあまり見かけなくなった。昔はこの時期になると『い〜しや〜きいも〜〜』とのんびりと売りに来ていた。
今は焼き芋専門店なるものがあるらしい。立派なスイーツの仲間入りか。
確かに、最近主流のねっとりと甘みの強い焼き芋はスイーツのようだ。

私はほくほく派である。
焼き芋を両手で半分に割った時の、ぽくっと甘い湯気が上がる、あの感じ。
大きく一口かじると、口中の水分を全部持っていかれるような、あのほくほく。
慌てて飲み込むと、食道でゴロゴロと詰まりそうな、あのほくほく。

想像だけで、幸せである。

そういえば、高校生の時にレクリエーションで焼き芋をやった。学校の裏山の落ち葉を集めて焚き火(今はできないと思うが)を焚いて、アルミホイルに包んださつまいもをどんどん放り込んで。
みんなで軍手のまま、ほくほくと楽しんだ。

私がほくほく派なのは、やっぱり思い出補正がかけられているからか。

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