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~サイジョウタカヤの1人旅(散歩)~Vol.2 松戸編(前編:High Time in 農道)


描いていただいたタイトル画像です
(頑張ったんですがヘッダーにどうしても入らなかったのでここに全体画像を載せます)

(タイトル画像:©️河原野アパラ@PSK twitter:@aparak)

二度寝から目覚めたのが昼過ぎでね。
しばらくベッドでボンヤリしてたんですよ。

俺くらいの年齢になると、結婚する奴とか会社でも役職なり付き始めて忙しくなるらしいんですよね。
あとお子さんいらっしゃったりとかね。
要は人生の過渡期って訳ですよ。

俺はどうなんだって?

うるせえな、マジで泣かすぞ。


だから、暇な休日が生まれたといって「おい、今日遊ぼうぜ」なんて言っても、まず「ごめん、ちょっと今日厳しいわ」って返されるのが関の山って奴で。

そんなアンニュイな日曜日をどう凌ぐか?

酒も飲まない俺には、もう散歩するぐらいしかマジで救いがないんですよね。


ちなみに散歩旅のレギュレーションとしては

・Googleマップは(基本的に)見ない
・駅や現在地等を人に
(基本的に)聞かない
・来た道をそのまま
(基本的に)引き返さない

ですね。

「基本的に」を付けてるのは、マジでどうしようもない時があるので逃げ道を残してるからですね。

バンドマンってのは狡猾な生き物なんですよね。



17:10 (小岩)総武線 下車

とりあえず電車に飛び乗って、適当な距離を移動して適当な所で降りる。

ここで重要なのは、家から近すぎも遠すぎもしない所がポイントです。

近すぎると割と早い段階で「あ、ここ知ってるわ」となりますし、遠すぎると土地勘が無さすぎるが故に大通りしか歩かないなど安全策を取ってしまうんですよね。

大通りにはロマンが無いんですよ。

街と街を結ぶアスファルトをなぞって星座でも作るつもりかよ。


って訳で、適度に土地勘があって、ヤバそうな道でも突っ込んでいけるくらいの場所をスタートにすべきなんですよね。


17:45 新柴又

とりあえず、マジで適当に進んでたら着きました。
これはまあ序章というか、想定の範囲内だったんですよね。

こっちの方角に進んだならまあこの辺りに着くだろうなと。
江戸川区から葛飾区ってたいした距離でもないですからね。

そもそも、葛飾区なんて俺の庭みたいな物なんだよな。

郵便ポストから新聞取ってくるのと大差無いんですよ。


駅もあったけど当然のスルーです。
帰るにはちょっと早いし、北総線って俺にとっては使い勝手が悪いんですよね。


17:59 柴又

新柴又があるってことは柴又があっても不思議じゃ無いんですよね。
というか、柴又があるってことくらい俺は知ってますよ。

庭に生えてる花の名前くらい知ってても不思議じゃないだろ?


この頃はまだ元気でしたね。

何てったって、柴又と言えば「男はつらいよ」の寅さんですよね。

まあ、これからつらいのは俺なんですけどね。


ある意味で俺は寅さんみたいなとこありますからね。
すぐ旅に出ちゃう所とかね。
ただ、俺は妹もいなければ別に人情に篤いって訳でもないので、ただただ普通にダメ人間ですね。

なあ、その黒光りする鉄の塊から撃ち出した鉛弾で俺の頭をぶち抜いちゃくれねえか????


寅さん(フーテンの寅)で思い出したんですけど、今日YAPOOLとフーテン族が2マンライブしてますよね。

それに引き換え俺はホントに何やってんだ????

やっぱり頭ぶち抜いて貰えませんか??????

なあ????

なあ!!!!!



とりあえず良い感じの河川敷があったので、しばらく芝生の上でゴロゴロしてたんですよ。

俺の心みたいな空ですね。
なんでだろう、涙が溢れてくる。

野球やってる少年に「いいかあ~。大人になんて絶対になるんじゃねえぞ~」と心の中でエールを送りながらね。

いや、大人になってもいいんだけど俺みたいにはなるなよ。

ホントにマジで。


えもいわれぬ自己嫌悪感に吐き気を催しながら辺りを見回すと、向こうの方になんか良い感じの橋がかかってるじゃないですか。


ただね、直感で分かるんですよ。

あの橋は絶対に渡っちゃいけないってね。


でも、橋って何のためにあるか知ってます?

渡るためにあるんですよね。

じゃあ渡るしかねえだろうが。
このルビコン川をよ。


18:40 千葉県 松戸市

やっぱり渡っちゃいけなかったんですよね。
知ってました。

恥も外聞も捨てて引き返せばよかったのにね。

千葉県 松戸市ってどうすんだこれ。


「お母さんもう知らないからね」と母の顔が脳裏を過った気がするんですよ。
なんでだろう、母の日だからかな?

正直ね、アラサーにもなって、バンドマンだったり孫の顔どころか結婚もしてないのは「そんくらい許せよ」って思ってますけどね。

この歳になって「母の日ありがとう、今俺は松戸市で遭難してる」って言うのは流石に申し訳ねえなって。


とはいえ、吐いた唾は飲み込めないんで諦めて進むしかないんですよね。

自分が撒いた種なんだから収穫するまで責任取るのが筋ってもんだろ???


そういえば、国道だからかわかんないんですけど、さっきから車が凄い勢いでビュンビュンなんですよ。

松戸市はモータリゼーションの寵児か?


とりあえず、このままこの道を行っても埒が開かないので、側道から下へ降りてみます。



18:47 松戸市 農道

降りたは良いんですけど、マジもんの農道なんですよね。

ね?

何だろう、地平線がね、見えるんですよ。

はっきり、くっきり、確実にね。

別に見たくもねえのにな。


High Time in 農道
©️河原野アパラ@PSK (敬称略)
twitter:@aparak

で、俺しか居ないんですよね。

これ、アパラさんが描いてくださったイラストなんですけどね。
まさにこんな感じなんですよ。
ここでHigh Timeのパロディーのアー写とか撮れるんじゃねえかって。

まあ、こんな夜は二度と来ないんですけどね。
だってここまでの道筋覚えてないし最寄りの駅なんてねえんだもん。


あ、とか言ってたら耕運機が横切りましたね。

今のが、この農道で出会った最初で最後の「人」です。


地平線のかなたに鉄橋があるので何らかの電車が通ってるはずです。
ひとまずそこを目指すことにします。

基本的にこういうところに出てしまったら、電車か車通りのある道まで突き進むのがベターです。

下手にぐちゃぐちゃ動くと取り返し付きませんからね。

特にここだと街灯もないので、日没を迎えたが最後、用水路に落ちて大惨事になる可能性さえありますからね。


だから、この農道編はマジで時間との闘いです。

ちなみにもう日は沈みかけています。



19:32 農道脱出

記述が少ないのは極シンプルな理由で

1時間弱ひたすら直進してただけですからね。


正直、ループしてんじゃねえのかって疑ったんですが、学校の横を1度通りすぎたので多分ループはしてなかったと思います。

というかね、この1時間弱の記憶があんまり無いんだよ。あるわけねえだろ。



そんなこんなで、なんとか農道から脱出できたので、最悪の事態は免れました。


カメラのせいか、割と明るいと思うかもしれませんが実際はもっと暗いです。


まあ、最悪の事態を免れただけで好転しちゃいないんですけどね。

マイナスからのスタートでマイナスに着地しただけなんだよ。

振り出しにすら戻れてないというか、なんなら振り出しに戻りたいくらいなんだよ。


文明の息吹を感じる。

鉄橋まで辿り着いたんですけど、正直角度的に電車を視認できなかったんですよ。

ぶっちゃけ、北総線だろうが常磐線だろうがもはやどっちでも良いんですけどね。

俺をここから救いだしてくれるならね。


とりあえず、困ったときは川沿いを歩けば大体どうにかなるので、しばらく川沿いを歩いていきます。

なぜ川沿いを歩けば良いかというと、川があることによって視認性が上がるのと、水辺から文明は生まれたので人の営みがあるんですよね。

ちなみにこれは何の情報も得られなかったパターンです。

これもやけに明るいんですが、実際は真っ暗です。
時系列的に農道脱出の後ですからね。
カメラの性能すげえな。

とりあえず、農道は脱出したんですけど、未だに人家を見てないんですよね。

だから、実質 High Time in 農道 シーズン2!でしかないんですよ。


人家に辿り着きさえすれば全てがきっとうまく行く。
そんなものが甘ったれた世迷い事でしかないと思いしらされるのはもう少し後のお話なんですよね。

(後編へ続く)


追記

今回イラストを書いてくださった
河原野アパラ@PSKさんには大感謝です。
ほんとありがとうございます。
何枚も描いてくださったので、後編でも使わせていただきます。
正直メチャクチャ嬉しいです。
Twitterアカウントは@aparakですので、読んでくださった皆さんも是非訪問してください。





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