秋の雨の夜の香り
急に気温がぐっと下がって冷たい雨が降りました。
秋を押しのけて冬がやってきたような寒さです。
念のために持ってきていたインナーダウンが役立ちました。
仕事終わりの家に向かう私の頬は一気に温かさを失っていきます。
岡崎体育さんの歌うフラワーカンパニーズのカバー、深夜高速を聴きながら、傘を少しだけ前に角度をつけて速足で帰路を進みます。
雨足が強いせいで、どんどん足元は濡れていきます。
これだったら長靴を履いてくればよかったと後悔の中、ぐしょぐしょになったスニーカーで、しっかりと傘の柄を握り、口元はきつく固く結びながら余計なことは一切考えずに家を目指します。
「生きててよかった、生きててよかった、そんな夜を探してる」
この歌詞は今の私をまさに応援してくれている、そんな風に思い、私は今、この冷たい雨を受けていることを感じている、それは私が生きているから感じられることなのだ、生きていてよかった、とそれだけを思うのでした。
そんな風に思っていないとやっていられない寒さなのでした。笑
今日履いたスニーカーは当分の間乾かないだろうし。泣
鼻の先端がとても冷たく感じられました。
「いこうぜ いこうぜ 全開の胸で
いこうぜ いこうぜ 震わせていこうぜ」
仕事終わりの疲れた体に、ガツンと喝を入れてくれます。
向かい風になんか負けないし、車のタイヤが飛ばす水しぶきにだって負けないよ、こっちはそんなのお構いなしだよ、私には味方となってくれる歌があるんだから。
こんな心細い夜の道で聞く「深夜高速」はなんと心強い応援歌なのでしょう。
この曲に出会えていてよかった、そんなふうに思わずにはいられない夜でした。
過去の自分、よくやったと言いたくなります。
ふと耳にしたその時、とても気に入って、また今、こんなに自分に寄り添ってくれて更に好きになって、きっとまたいつかとてもいいタイミングで聴いた時もっともっと好きになるのでしょう。
これは予感ではなく、確信です。
きっと私はまたこの曲をもっともっと今以上に好きになる時がくるでしょう。
きっとこの曲は私をまたどこかで励ましてくれると思います。
震わせてくれると思います。
アラジンと魔法のランプのジーニーのように、私がこの曲が必要になった時にきっとすっと現れてくれるでしょう。
自分の背中を押してくれて、一緒に育っていってくれる曲というのがあるような気がしています。
何年経っても好きな曲、何回聴いても好きな曲、聞くたびに深みを感じるのはその歌のもともと持っていた多重な層と下のレイヤーまで感じられるようになった自分の感受性の成長がうまい具合に呼応しあっているのかもしれません。
それが生きることの旨味でもあります。
この世の解像度が少しだけ高くなったかもという実感。
「生きててよかった 生きててよかった
生きててよかった そんな夜を探してる
生きててよかった 生きててよかった
生きててよかった そんな夜はどこだ」
少なくとも一日、今日、ここにあった。